農人ナベさんは、被災地・福島県相馬市で、有機農業をいとなんでいます。
お会いしたことは一度もないのですが、わたしの元同僚のお父さまで、なにかの折にご自分がつくったお米を送ってくださったことがありました。
それは、炊いてみてびっくり、ご飯のひとつひとつがピカピカに輝いています。
そして食べてみてびっくり、もち米かと思うほどの粘りとうま味で、さめるほどにおいしいという初めての体験でした。
これがナベさん作の「有機栽培米・ミルキークイーン」との出会いでした。
さっそく注文しようと電話しましたが、お米はすべて年間の予約制なので、新米がとれるまで注文はうけられないとのお返事でした。
聞けば、かつて都内某デパートで販売されて大ブレーク、予約なしには買えないという超ブランド米だったのです。
その年の秋、新米がとれようやく予約できるようになってから、わが家はずっとナベさん作のお米をおいしく大切に食べてきました。
それが、東日本大震災にあい、福島は甚大な被害をうけました。
ご自身一家はご無事だったものの、農水路の下流は散乱するガレキやご遺体にはばまれ、農業を再開するのも並大抵ではなかったそうです。
そして、震災後ようやく作ったお米でしたが、放射能汚染という風評被害で長年のお客さんもはなれていき、売り上げは激減しました。
ナベさんは、お米の安全性をアピールするために、放射能検査や除染作業を自費でおこなってきました。
放射能検査では、検出下限値を下まわる数値がでていますが、非難は続きます。
「ほかにお米はいくらでもある、わざわざ危ういお米を買う必要があるのかね」
「なぜ、まだ被災地で農業を続けるんだ、早くやめてしまったらどうかね」
原発事故を収束できそうもない東電と交渉をかさねても、その回答は・・・
「風評被害はみとめられない、検査や除染は自発的な営業活動なのだから、補償にはあたらない」のだそうです・・・
こんなことでは東北の一次産業はすたれてしまう・・・とナベさんが危惧するのはもっともなこと。
それでも、ナベさんは野菜や花苗をつくり続け、いまだ避難生活をおくる方々に無償でさしあげているのです。
わが家が、そんなナベさんを応援したくなるのはあたりまえなのですが・・・
今回とどいたお知らせには、「今年からお米作りをやめる」とありました・・・
つづく