ぼくには、思いあたるふしがあった
ぼくたち兄弟は、うまれた時には、確かみんなで六頭いたはずだ
だけど、一頭また一頭と、母さん犬のいる実家から姿がみえなくなっていった
みんな、どこか別のお家へ、お引越しして行ったのかもしれない
お店には弟犬のソラ、そして近所には妹犬のマナもいるけれど、
それぞれ実家をでて、新しいお家は別々のところになったということなんだろう
ひょっとして、ぼくにも、その弟妹たちと同じことがおこったのかもしれないぞ
そうだ、きっとそうなんだ
だって、一日たち二日たち、三日四日と時間がすぎても、
実家のパパさんママさんや母さん犬が、ここにやって来る気配もない
ぼくは実家からひとり立ちして、ここで暮らしていくっていうことなんだ
実は、新しいお家に引っ越してくる前、
ぼくは実家では「ちょうなんぺ」って呼ばれていた
でも、お引越しをしてからは、
ぼくのことを「ちょうなんぺ」って呼ぶヒトは、だれもいない
ぼくは、もう「ちょうなんぺ」じゃないのかもしれない
そうだ、ぼくはもう「ちょうなんぺ」じゃないんだ
そうか ぼくは、「ラン」になるんだ
ぼくは、この新しいお家で、新しいパパママと一緒に「ラン」になるんだ
だから、新しいパパママは、
毎日毎日ぼくを「ラン ラン」と呼んでかわいがってくれるんだ
そういうことなんだ
ぼくは、「ラン」なんだ
ぼくは、ここ新しいパパママのお家で、いい子の「ラン」でいようと決めました
いい子にしていると、パパもママもぼくをほめてくれるからね
ぼくはほめられるのが大好き
しかられるのは大きらい
ぼくは、毎日ちゃんとご飯をもらえてお散歩して遊んでもらえることがわかると、
少し落ち着いてきました
だから、もう、お引越ししてきた日のように、ワンワンワンワンと吠えたりはしないよ
そんなある日、いつもの公園に行くと、お山のほうから楽しそうな声がきこえてきました
「リリー、カーラ、リリー、カーラ」
あっ、あれは、実家のママさんがぼくの母さん犬と妹犬をよんでいる声だ
お山でみんなで遊びながら、おやつをもらって食べている
まさか、夢じゃないよね お山に見えるみんなの姿は
まっ、まちがいない
ああ~ なんて、なんて、なんて、うれしい
あそこにいるのは、実家のママさん、そして、母さん犬と妹犬だ
ぼくを取りあげ育ててくれたあのママさんに、ここでこうして会えるなんて
もう、まるで夢みたいだ でも、これは夢なんかじゃないよ
目の前にいるんだ 母さん犬と妹犬、そして実家のママさんが
ぼくは、首輪がきつく食いこむのも構わずに、
グイグイとリードをひいてお山に登って行った
実家のママさんが、母さん犬と妹犬といっしょに、すぐ目のまえにいる
実家のママさ~ん、ママさ~ん、ぼくは思いきり飛びついて甘えた
ああ~ 会いたかった 会いたかった
ああ~ そうだ そうだ これが実家のママさんのなつかしいにおいだ
ああ~ そして、これが母さん犬と妹犬のにおい
会いたかった~ 会いたかった~
ぼくは、気が狂ったように、甘えまくり、はしゃぎまくった
「ちょうなんぺ」と呼ばれていたあの頃に戻ったみたいに
ところが
つづく
(写真と本文は関係ありません)
ぼくたち兄弟は、うまれた時には、確かみんなで六頭いたはずだ
だけど、一頭また一頭と、母さん犬のいる実家から姿がみえなくなっていった
みんな、どこか別のお家へ、お引越しして行ったのかもしれない
お店には弟犬のソラ、そして近所には妹犬のマナもいるけれど、
それぞれ実家をでて、新しいお家は別々のところになったということなんだろう
ひょっとして、ぼくにも、その弟妹たちと同じことがおこったのかもしれないぞ
そうだ、きっとそうなんだ
だって、一日たち二日たち、三日四日と時間がすぎても、
実家のパパさんママさんや母さん犬が、ここにやって来る気配もない
ぼくは実家からひとり立ちして、ここで暮らしていくっていうことなんだ
実は、新しいお家に引っ越してくる前、
ぼくは実家では「ちょうなんぺ」って呼ばれていた
でも、お引越しをしてからは、
ぼくのことを「ちょうなんぺ」って呼ぶヒトは、だれもいない
ぼくは、もう「ちょうなんぺ」じゃないのかもしれない
そうだ、ぼくはもう「ちょうなんぺ」じゃないんだ
そうか ぼくは、「ラン」になるんだ
ぼくは、この新しいお家で、新しいパパママと一緒に「ラン」になるんだ
だから、新しいパパママは、
毎日毎日ぼくを「ラン ラン」と呼んでかわいがってくれるんだ
そういうことなんだ
ぼくは、「ラン」なんだ
ぼくは、ここ新しいパパママのお家で、いい子の「ラン」でいようと決めました
いい子にしていると、パパもママもぼくをほめてくれるからね
ぼくはほめられるのが大好き
しかられるのは大きらい
ぼくは、毎日ちゃんとご飯をもらえてお散歩して遊んでもらえることがわかると、
少し落ち着いてきました
だから、もう、お引越ししてきた日のように、ワンワンワンワンと吠えたりはしないよ
そんなある日、いつもの公園に行くと、お山のほうから楽しそうな声がきこえてきました
「リリー、カーラ、リリー、カーラ」
あっ、あれは、実家のママさんがぼくの母さん犬と妹犬をよんでいる声だ
お山でみんなで遊びながら、おやつをもらって食べている
まさか、夢じゃないよね お山に見えるみんなの姿は
まっ、まちがいない
ああ~ なんて、なんて、なんて、うれしい
あそこにいるのは、実家のママさん、そして、母さん犬と妹犬だ
ぼくを取りあげ育ててくれたあのママさんに、ここでこうして会えるなんて
もう、まるで夢みたいだ でも、これは夢なんかじゃないよ
目の前にいるんだ 母さん犬と妹犬、そして実家のママさんが
ぼくは、首輪がきつく食いこむのも構わずに、
グイグイとリードをひいてお山に登って行った
実家のママさんが、母さん犬と妹犬といっしょに、すぐ目のまえにいる
実家のママさ~ん、ママさ~ん、ぼくは思いきり飛びついて甘えた
ああ~ 会いたかった 会いたかった
ああ~ そうだ そうだ これが実家のママさんのなつかしいにおいだ
ああ~ そして、これが母さん犬と妹犬のにおい
会いたかった~ 会いたかった~
ぼくは、気が狂ったように、甘えまくり、はしゃぎまくった
「ちょうなんぺ」と呼ばれていたあの頃に戻ったみたいに
ところが
つづく
(写真と本文は関係ありません)