因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ネットで歌舞伎☆三月大歌舞伎 通し狂言『新薄雪物語』〈花見〉

2020-04-23 | 舞台番外編

*公式サイトはこちら 本日4月23日(木)朝日新聞夕刊の「記者推し」欄でが今回の無料公開映像を取り上げ、「準備万端整いながら初日の幕を開けられないという前例のない逆境から生まれた壮挙」であり、「芝居の灯をともし続ける興行側の英断を称えたい」と絶賛している。特に昼の部の「新薄雪物語」は、大役が多く登場するため、役者が揃うこと必須の大作だ。ちなみに2015年の六月大歌舞伎では本作を昼夜で上演というめったにない形式の興行であった(当ブログ記事→)。

 最初は〈花見〉の段で、幸崎伊賀守の息女薄雪姫(片岡孝太郎)が、腰元籬(まがき/中村扇雀)たちとともに、新清水へ花見に訪れる。そこへ園部兵衛の子息左衛門(松本幸四郎)が来国行の打った太刀を奉納に現れる。深い仲である左衛門の奴妻平(中村芝翫)と籬は薄雪姫と左衛門を取り持とうと懸命だ。まだ若く初心な二人を何とかしようと、あの手この手で必死につとめる籬と妻平の様子がユーモラスに描かれる。年上の二人とて、手練れの恋愛指南ができるわけではなく、不器用なところが好ましい。こういうところに観客の笑いが湧いて芝居のリズムになるのだろうが、何とももどかしい。

 姫と若君の恋をめぐる明るい場から、左衛門親子を謀反の罪に陥れようとする秋月大膳(中村歌六)、段九郎(中村又五郎)の画策の様子が描かれて物語はにわかに不穏な空気になる。大膳役の中村歌六は、憎々しい悪役が老練の円熟の極み。それを阻止しようとする妻平と大膳側の大勢の奴たちとの大立ち回りも見応えがある。

 さて〈花見〉の段には、薄雪姫の父幸崎(中村吉右衛門)と左衛門の父園部(片岡仁左衛門)は登場しない。若い二人の恋模様と政治的陰謀、親子の情愛がこれからどう展開してゆくのか。

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