*林灰二 脚本 公式サイトはこちら 高円寺 明石スタジオ 11日まで
公演チラシには「出演者:非公表」とある。出演者、出演人数等を認識のない状態で観劇してほしいためとのこと。当日リーフレットもふたつ折りにされ、「観劇後にご覧ください」とテープ止めする念の入りようだ。上演前、劇場内は客席部分にわずかな明かりがあるくらいで、舞台エリアは真っ暗、ほんとうに何もみえない。みるがわの予備知識や思い込みや予想をできうる限り取りのぞき、まっさらな気持ちで舞台に臨んでほしいということだろう。
公演は11日まである。
今日みてきた舞台を、さてどのように、どこまで書けばよいものか、迷いながら筆をすすめるとしよう。これからご覧になる方はひとまずここまでで。
かつては賑わっていたが、いまは廃墟になってしまったホテル。窓からみえる湖が美しい。そこにやってくるさまざまな人々。訪れる目的はそれぞれ違い、個々の場面が必ずしも時系列に沿っているわけでもなく、いろいろに想像できる。舞台装置も小道具も最小限で、それでもガラスもない窓から月がみえるような気がするから不思議である。
自分は最初の場面に登場した菊地奈緒演じる霊能力者がたいへんおもしろかった。丁寧で柔らかな物腰のなかからインチキくささが徐々にこぼれでて、突如凶暴になったりする。台詞の言い方や他の人物との呼吸の合わせ方、と同時にずらし方が非常に緻密であり、さらにそれが技巧として前面にでず、自然にみえたのである。脚本にどの程度書かれてあるかはわからないが、演出家がこの場面に要求するレベルはそうとうに高いと思われる。自分がどんな場面にしたいかを俳優にどう伝えるか、演出家の意図を俳優が理解し、それを自分の演技にどう反映させるかも、非常にむずかしいと想像する。
リーディング的な要素もあり、映像や音響にもこだわりが感じられる。個々の場面や人物どうしがもう少し有機的につながっていけばなぁ・・・と思ったが、特殊な場所に訪れた関係のないものどうしが次第に不思議なつながりをもちはじめるという構造はいかにも予定調和のようであり、しかし個々の場面のやりとりはもう少し研ぎ澄まされたものであってほしいとも思うのである。
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