*野坂実作・演出 公式サイトはこちら 下北沢駅前劇場 公演は4日で終了
タイトルは「にんぷさんじょう」と読み、レイ・クーニーの『Run For Your Wife』に対する作者のオマージュだそう。クーニーの舞台は加藤健一事務所公演(ただしテレビ放送されたもの)と上川隆也主演の舞台をみた記憶がある。少々微妙な関係の夫婦が、実はお互いに浮気をしていて、ひとつの嘘のために次々に嘘を重ねていった挙げ句、周囲の人々を巻き込んだ大混乱に発展、しかし最後はどうにか収まるという話だったか。
今回は舞台に10個のドアがあり、登場人物がひっきりなしに出入りする。まず保育園で『桃太郎』を上演しようとしている着ぐるみ劇団の俳優たちがいる。借り受けた着ぐるみは『三匹のこぶた』用で使い物にならず、スタッフも足りない。園長からはプレッシャーをかけられ、うるさ型の父兄はいちいちクレームをつけにくる。物語の設定を変えたり、子供たちを無理矢理参加させたり、涙ぐましくも強引にどうにか最後までやり遂げようとする。この部分は一種のバックステージものでもある。同時に浮気相手のマンションなど、3つの空間が入れ替わり立ち替わり、しかしそれらが混同することなく、実に綿密に作られており、書き上げた作家もそれをこなす俳優もお見事。
だがこう次々に嘘の上塗りの連続になると、みる方は次第に疲れてしまうのである。観客はただ座って舞台をみているようで、自分でも気づかないエネルギーを発している。舞台の世界に引き込まれていることの証だろう。「自分が一生懸命みなければ、この作品の、あの人はどうなる?」という思い入れ(自意識過剰の勘違いかもしれないが)が強いときである。舞台を見守る、見届けるという一種の責任感すら覚える。しかしシチュエーションコメディの場合、登場人物があまりに必死になるのに反比例して次第に引いてしまうのである。それは舞台の完成度が高く、安心感があることでもあり、同時にここまでのてんやわんやの大騒動には現実味が感じられないことでもあろう。
自分は保育園の場面がもっともおもしろかった。『桃太郎』をやるはずがゴドー風の展開になったり、台詞や役柄の変更もはちゃめちゃとしか言いようがないのだが、予想外の思いつきの数々がおもしろく、ここだけでも独立した芝居になるのではないか。
仕事中だろうと浮気相手がいようと、月が満ちれば子供は生まれてくる。舞台には妊婦が3人、ひとりは舞台で産気づいたようである。あとの2人の子供がこの世に生まれでるとき、舞台の状況はどうなっているのだろうか?楽しみなような、怖いような。
タイトルは「にんぷさんじょう」と読み、レイ・クーニーの『Run For Your Wife』に対する作者のオマージュだそう。クーニーの舞台は加藤健一事務所公演(ただしテレビ放送されたもの)と上川隆也主演の舞台をみた記憶がある。少々微妙な関係の夫婦が、実はお互いに浮気をしていて、ひとつの嘘のために次々に嘘を重ねていった挙げ句、周囲の人々を巻き込んだ大混乱に発展、しかし最後はどうにか収まるという話だったか。
今回は舞台に10個のドアがあり、登場人物がひっきりなしに出入りする。まず保育園で『桃太郎』を上演しようとしている着ぐるみ劇団の俳優たちがいる。借り受けた着ぐるみは『三匹のこぶた』用で使い物にならず、スタッフも足りない。園長からはプレッシャーをかけられ、うるさ型の父兄はいちいちクレームをつけにくる。物語の設定を変えたり、子供たちを無理矢理参加させたり、涙ぐましくも強引にどうにか最後までやり遂げようとする。この部分は一種のバックステージものでもある。同時に浮気相手のマンションなど、3つの空間が入れ替わり立ち替わり、しかしそれらが混同することなく、実に綿密に作られており、書き上げた作家もそれをこなす俳優もお見事。
だがこう次々に嘘の上塗りの連続になると、みる方は次第に疲れてしまうのである。観客はただ座って舞台をみているようで、自分でも気づかないエネルギーを発している。舞台の世界に引き込まれていることの証だろう。「自分が一生懸命みなければ、この作品の、あの人はどうなる?」という思い入れ(自意識過剰の勘違いかもしれないが)が強いときである。舞台を見守る、見届けるという一種の責任感すら覚える。しかしシチュエーションコメディの場合、登場人物があまりに必死になるのに反比例して次第に引いてしまうのである。それは舞台の完成度が高く、安心感があることでもあり、同時にここまでのてんやわんやの大騒動には現実味が感じられないことでもあろう。
自分は保育園の場面がもっともおもしろかった。『桃太郎』をやるはずがゴドー風の展開になったり、台詞や役柄の変更もはちゃめちゃとしか言いようがないのだが、予想外の思いつきの数々がおもしろく、ここだけでも独立した芝居になるのではないか。
仕事中だろうと浮気相手がいようと、月が満ちれば子供は生まれてくる。舞台には妊婦が3人、ひとりは舞台で産気づいたようである。あとの2人の子供がこの世に生まれでるとき、舞台の状況はどうなっているのだろうか?楽しみなような、怖いような。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます