*坂手洋二作・演出 公式サイトはこちら 座・高円寺1の公演は2日終了 その後岡山市立市民文化ホール、AI・HALL(伊丹市)、愛知県芸術劇場(名古屋市)を巡演。(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12 そのほかえびす組劇場見聞録に1,2)
久しぶりの燐光群公演、渡辺美佐子の舞台である。1932年10月生まれであるから、御年86歳だ。前回の観劇から早や6年、全体の雰囲気やからだの動きはさすがにゆるやかになったが、声の張り、生き生きした表情は年齢を忘れさせる。太平洋戦争中、日本統治下にあったサイパン島には、沖縄を中心に、日本全国各地から多くの移民が暮らした。渡辺は、その地で戦中から戦後の苦難の日々を送った女性の少女時代から現代までを演じ継ぐ。
舞台には中央に四角い板が置かれ、そこが主な演技スペースとなる。ほかはドアや家具類が登場人物の手で都度設置され、時や場所は目まぐるしく変化する。登場人物がしばしば語り手になり、客席に向かって舞台の状況や進行を解説する。きびきびと緊張感漲る燐光群らしい舞台だ。当時のことを映画にしたいと監督が島を訪れ、渡辺演じる大城晴恵の話を聞く。最後は彼女自身を主役に、映画の撮影がはじまる場面に終わる。
ある人物を演じる俳優を演じるという劇中劇構造のために、わかりにくかった面は多少あり、休憩なしの2時間20分がしばしば長く感じられたのは、そのせいもあるだろう。終幕はいささかたっぷりというのか、情緒過多の印象も残る。しかしながら、過去の日本から現在の日本を見据え、躍動感溢れる舞台を構築する飽くなき姿勢や、渡辺美佐子という大変なベテランを迎えて違和感なく、劇団員、客演ともに自身の持ち場をしっかりと踏みしめながら、互いに刺激し合っていることに感銘を受けた。
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