因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

龍馬伝第29回『新天地、長崎』

2010-07-19 | テレビドラマ

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 「龍馬伝 第3部」がはじまった。ドラマ中の音楽も「新曲」続々で、タイトルバックも新しくなり、龍馬の髪型もすっきりと変わって気合い十分。オープニングは明治15年、東京・千住で灸治療を受けている岩崎弥太郎(香川照之)に、坂崎紫潤(濱田学)が引き続き龍馬の話を聞く場面にはじまる。治療を施している女性は千葉佐那(貫地谷しほり)。明治維新後は家伝である針灸を生業としたことは知っていたが、そこで弥太郎が治療を受けていたというのは史実だろうか?

 ドラマの舞台が異国情緒あふれる長崎にうつり、龍馬がいよいよ「あの龍馬」(岩崎弥太郎の台詞)に変貌していく第3部は、新しい登場人物続々でいっそう豪華に賑々しくなった。特に散切り頭の着流し姿で三味線をつまびく高杉晋作を演じる伊勢谷友介は、昨年の『白州次郎』の印象が鮮明で、彼がどんな晋作をみせてくれるのかとぞくぞくする。

 しかしながら今回の放送を前のめりで楽しみながらも「これは果たしてどこまで史実で、どこからが創作なのだろうか」という疑問がどうしてもわき起こる。大坂から薩摩へ航行中に長崎に立ち寄り(弥太郎の語りのひとことで説明されていたが、なぜ立ち寄ったかは語られない)、外国人たちの商談の様子をみて薩摩藩の世話にならず自活の道を探そうとグラバーに会いにいくこと、そこで「丸山で小舟でも探してくれば」と冷たくあしらわれて丸山の料亭・引田屋にゆき、最初は梅の間で息をひそめ、津和野藩士と偽って長崎に潜入していた高杉晋作長州藩士がいる竹の間へ「やあやあ」とばかり強引に押し掛けること(梅と竹は逆だったかもしれない)、今度は薩摩藩士らが踏み込んできて、あわや大乱闘になるところを龍馬の一喝で収まったこと・・・。書物をはじめとするさまざまな資料や証言から作り手が想像力を働かせてより躍動感のあるドラマが作られ、それをみることができるのはとても楽しいことだが、自分の不勉強もあって、いずれも「出来過ぎのエピソード」のように感じられてしまうのだった。

 龍馬は西郷吉之助(高橋克実)に、「幕府のもとから飛び出してはどうか?」と提案するが、藩が第一の西郷にとっては龍馬はただの脱藩浪士にすぎず、相手にされない。引田屋で出会った高杉晋作たち長州藩士らは最新式の武器を手に入れようとしている。それは幕府を倒すため。以前龍馬は長州藩の久坂玄瑞(やべりょうすけ)から、尊王攘夷を貫くためには脱藩という選択もあることを聞かされ衝撃を受けていたが、今度は脱藩どころか「倒幕」という実に具体的で過激なアクションを起こそうとしている者たちと出会ったことになる。

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