*鶴屋南北原作 西沢栄治演出 公式サイトはこちら 赤坂レッドシアター 12日で終了
「演劇は役に立つ」。第6回公演『罪と罰』に寄せた西沢栄治のひとことは、以来ずっと自分が演劇に関わる上でのひとつの指針になっていると思う。自分が食べること、相手に勝つことが第一の社会にあって、演劇はどんな力を持ちうるのか。迷い悩む人を救えるのか?加えて信じがたい凶悪事件が続発する今、演劇が何を提示できるのだろうか?ぐじぐじと筆の進まない自分に、西沢は「この世の不条理に、この狂った世界に異議を申し立てたいと思う」とぶつかってくるのである(今回公演パンフレットより)。受けて立ちたい。
『東海道四谷怪談』は歌舞伎で何度かみているので、物語の筋などだいたいのことはわかる。しかし小さな劇場で繰り広げられる西沢版四谷怪談は躍動感に溢れている。中でも主演の2人、民谷伊右衛門の伊原農(ハイリンド)とお岩の斉藤範子(Theatre劇団子)に目が引きつけられる。伊原は色悪の魅力に満ち、あれならお岩や伊藤喜兵衛の孫娘がぞっこん惚れ込むのも無理はない。斉藤は硬質で聡明。時代劇でも翻訳劇でも演技の軸がずれない安定感がある。冒頭、群集の中に互いを認め、ひしを抱き合う伊右衛門とお岩の姿。そうだ、この2人は愛し合っていたのだ。なのに、どうしてこんなことに。
「四谷怪談」というと即「お岩さんのお話ね」とオカルトやホラー的な要素だけを考えてしまいがちであるが、八方塞がりの閉塞的な状況にあって必死にもがき苦しむ人々の姿は、抗いようもない運命に対して勝ち目のない戦いを挑んでいるかのようである。世の中が悪い、社会が悪いと言う。じゃあ世の中って、社会って何?政治が悪いのなら、政治家が代われば世の中が良くなるのか?一国の首相が2人続けて政権を投げ出し、金融危機が世界を脅かす。「誰でもよかった」と無差別殺人が続発するこの世にあって、「東海道四谷怪談」の投げかけるものは深く重い。 諦めるな、闘い続けよ。お岩や伊右衛門の壮絶な姿を通して、演劇というお金や権力とは無縁の、しかし最強にして最愛の武器をもって、西沢栄治は観客に檄を飛ばし、走り続けるのである。
「演劇は役に立つ」。第6回公演『罪と罰』に寄せた西沢栄治のひとことは、以来ずっと自分が演劇に関わる上でのひとつの指針になっていると思う。自分が食べること、相手に勝つことが第一の社会にあって、演劇はどんな力を持ちうるのか。迷い悩む人を救えるのか?加えて信じがたい凶悪事件が続発する今、演劇が何を提示できるのだろうか?ぐじぐじと筆の進まない自分に、西沢は「この世の不条理に、この狂った世界に異議を申し立てたいと思う」とぶつかってくるのである(今回公演パンフレットより)。受けて立ちたい。
『東海道四谷怪談』は歌舞伎で何度かみているので、物語の筋などだいたいのことはわかる。しかし小さな劇場で繰り広げられる西沢版四谷怪談は躍動感に溢れている。中でも主演の2人、民谷伊右衛門の伊原農(ハイリンド)とお岩の斉藤範子(Theatre劇団子)に目が引きつけられる。伊原は色悪の魅力に満ち、あれならお岩や伊藤喜兵衛の孫娘がぞっこん惚れ込むのも無理はない。斉藤は硬質で聡明。時代劇でも翻訳劇でも演技の軸がずれない安定感がある。冒頭、群集の中に互いを認め、ひしを抱き合う伊右衛門とお岩の姿。そうだ、この2人は愛し合っていたのだ。なのに、どうしてこんなことに。
「四谷怪談」というと即「お岩さんのお話ね」とオカルトやホラー的な要素だけを考えてしまいがちであるが、八方塞がりの閉塞的な状況にあって必死にもがき苦しむ人々の姿は、抗いようもない運命に対して勝ち目のない戦いを挑んでいるかのようである。世の中が悪い、社会が悪いと言う。じゃあ世の中って、社会って何?政治が悪いのなら、政治家が代われば世の中が良くなるのか?一国の首相が2人続けて政権を投げ出し、金融危機が世界を脅かす。「誰でもよかった」と無差別殺人が続発するこの世にあって、「東海道四谷怪談」の投げかけるものは深く重い。 諦めるな、闘い続けよ。お岩や伊右衛門の壮絶な姿を通して、演劇というお金や権力とは無縁の、しかし最強にして最愛の武器をもって、西沢栄治は観客に檄を飛ばし、走り続けるのである。
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