今月心に残った舞台に風琴工房の『Hgリーディング』を挙げます。この国を揺るがしている原発事故、放射能被害を予見するかのような作品を、リーディングという、より言葉が直接こちらに伝わってくる手法で提示したこと。一夜かぎりの公演は満席でした。この舞台がもつ祈りと願いが被災地に届きますように。
もうひとつは六月大歌舞伎における片岡仁左衛門、千之助共演の『連獅子』。観劇をぜひにと勧めてくれた友人に感謝です。役者が「演じたい」と願い、「演じてほしい」とこちらも願っていた舞台に出会える至福を体験しました。
【本】
*チェーホフ 『かもめ』 神西清、松下裕、小田島雄志(マイケル・フレインの英訳から)、沼野充義、そして堀江新二とさまざまな翻訳のものをひたすら。
*吉田修一 『悪人』 昨年の映画の印象は微塵もゆるがず、上下巻を一気読み。祐一とつかのま触れ合うファッションヘルス嬢は映画には出てこないが、演じるとしたら誰がいいかしら。
【映画】
*『ブラックスワン』 『プリンセス・トヨトミ』 『マイ・バック・ページ』
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最近ようやく美術展に行くゆとりが出てきました。無為の時間を自分に許せるようになったというところでしょうか。
NHK・Eテレの『日曜美術館』は毎週録画し、BSの『たけし☆アートビート』も欠かせません。どの画家もアーティストも評論家も知らない方々ばかりで、自分がこちら方面にいかに無知であったかがわかります。それだけに新鮮で、演劇をみるときのように「これにはどんな意図があるのか、何を暗示しているのか」などとがつがつ考えないで(あまりに無知だからやろうにもできない・・・)、無心になれるのです。
考えてみると自分には趣味がない。観劇を趣味というには入れ込みすぎですし、旅行がしたいとも何かを集めたいとも思いません。この程度で「絵画鑑賞が趣味です」とはとても言えませんが、少なくとも目の前の絵画に対して素直に向き合う時間、あれこれ考えず、ただみることが単純に嬉しいのです。
山種美術館の「百花繚乱」展、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの印象派絵画の数々、いずれにも目と心の滋養を与えられました。これを劇評に活かそう!などと考えず(とても無理)、いわば「別腹」的楽しみとして大切にしてゆきたいと思います。
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