因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

wonderlandクロスレヴュー挑戦編・ガラス玉遊戯『わたしのゆめ』

2011-05-16 | 舞台

*大橋秀和作・演出 公式サイトはこちら 5月11日~15日まで 下北沢「劇」小劇場
 劇評サイトwonderlandの「クロスレヴュー挑戦編」に参加いたしました。
 5月のお題は、ガラス玉遊戯vol.4『わたしのゆめ』です。
 このカンパニーの舞台を初めてみたのは昨秋『サマータイム、グッドバイ』でした。まだ3作めながら整ったストーリー展開と出演俳優の個性を活かす作りに達者なものを感じましたが、「この題材をなぜ演劇にするのか」という根本的な問いに対して、じゅうぶんに応えていない印象がありました。生身の俳優がその日その場で行うことを、同じく生身の観客がみつめる。演劇はいわば「ガチの勝負」です。計算し、練り込まれた台詞術や俳優の熱演があったとしても、クローズアップやカットバックなどのできない演劇を、なぜ敢えて表現手段として選ぶのか。「よくできたテレビドラマ」的な舞台は極めて平凡であり、多くの楽しみのなかからその舞台を選んで劇場に足を運んだ観客の期待に応えるものではありません。

 本作の舞台設定を知ったとき、関根信一の『にねんいちくみ保護者会』に酷似していると危惧しましたが、その点は杞憂でありました。同じ題材を、たとえば青木豪や土屋理敬ならば、もっと痛く、救いの見えにくい物語になったのではないかと思いますし、自分の好みから言えばこちらのほうに手ごたえを得るでしょう。自分は個々の人物の造形が過剰でないこと、台詞が前作から、より繊細になったことなどに、今回が4作めになる劇作家の確かな足取りを感じ取り、この星数にしました。評者の意見は割れており、もの足りなさを覚えた人が多いことがわかります。

 ガラス玉遊戯の次回公演は大橋秀和の処女作『卒業』だそうです。今回の『わたしのゆめ』をみて、「もう1本みてから再度評価の方向を考えよう」と思った人は多いはず。劇作家、みる側双方にとって、次回こそ勝負だと。そこに再演が来るとなると、正直なところ複雑で(笑)、どんどん新作をみせてほしいというのが本音です。処女作をもってくるのは、ある面で新作より高いハードルを劇作家が自らに課したとも想像され、大橋秀和氏がどう勝負しようとするのか、大いに楽しみにすることにいたします。

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