因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

明治座五月花形歌舞伎 昼の部

2011-05-21 | 舞台

*公式サイトはこちら 27日まで
 友人に誘われ、はじめて浜町の明治座に行く。明治座で歌舞伎公演が行われるのは16年ぶりとのこと。
 演目は「義経千本桜」、「蝶の道行」、「封印切り」の3本だ。20代から30代の若手が大役を務めて奮闘し、中堅やベテランが手堅く支える。「蝶の道行」以外はこれまでにみたことがあるはずだが、誰が何のお役だったかは相当に曖昧だ。特に3本めの「封印切」は片岡愛之助、中村獅童、市川染五郎、市川男女蔵、市川亀治郎など、忠兵衛と八右衛門役が混乱し、片岡仁左衛門丈もみたことがあるようなないような、まさか坂田藤十郎丈までは?・・・とまことに心もとない。

 「封印切」は、中村勘太郎が忠兵衛、弟の七之助が梅川、市川染五郎が八右衛門の若い布陣。そこに御年90才の中村小山三が一瞬の出演、また上村吉弥が井筒屋おえん役でしっかりと引きしめた。友人は歌舞伎にたいそう詳しく、「何役は仁左衛門型、何役は鴈次郎型」と教えてくれたが、どちらがどうだったかもう忘れている。もっと勉強しましょう、因幡屋。
 「封印切」は、忠兵衛が梅川を愛しいと思うあまり、八右衛門の挑発にのって公金の封印を切ってしまい、悲恋へと追い込まれる話である。もとは百姓の出で、自由のきかない養子の身の上とはいえ、梅川と戯れる場面は上方のぼんぼんそのものにみえるし、おかしみや柔らかな色気とともに、封印切の大罪を犯して転落していくまでをみせるもので、難役である。若気の至り、運命のいたずらとも違うように思え、勘太郎の忠兵衛とと七之助の梅川からは、切羽つまった絶望や悲恋の風情はまだ伝わってこなかった。

 歌舞伎のおもしろさのひとつは、「待つ」ことを覚えられるところだ。これから若い役者はどんどん新しい役に挑戦すると同時に、今回の役をまた改めてつとめることができる。つぎはもっと違う味わいをみせてくれるだろう。それを辛抱強く、楽しみに待ちたい。
 日差しが強く蒸し暑いが、浜町から人形町への街並みは銀座界隈とは違う風情が楽しめる。
 まずは本日の明治座デヴュー、つつがなく幕となった。

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