完全禁煙状態に近づく日本のタクシー業界。そのことをまとめた『日経WagaMaga』の文章を引用しておきましょう。
**********
タクシーは禁煙の時代 東京・山梨・岐阜も (日経WagaMaga)
禁煙タクシーが一気に普及し始めた。静岡県で8月5日、全面禁煙が始まった。都道府県単位での取り組みは大分、長野、神奈川に続いて4例目。さらに東京都、山梨、岐阜県でも順次導入が決まっている。ただ、先行導入された地域では、必ずしも100%禁煙が守られているとも言い切れず、愛煙家も吸わない人も当分はまだら模様の対応に戸惑いそうだ。
そもそも、なぜタクシーでたばこを吸えなくするのか。理由はいくつかある。最も有力な理由の1つは、利用者から「禁煙タクシーを増やしてほしい」という要望のボルテージが一段と高まってきたことだ。前に乗った客やドライバー自身が車内でたばこを吸った場合、次に乗った人が二次喫煙を強いられてしまう恐れが強い。煙やにおいで不快な思いを強いられた人は珍しくないだろう。服ににおいが染み付くとか、会話がしにくい、子供の健康にマイナスなどの声もある。
運転手がたばこの煙を吸ってしまう受動喫煙を防ぐというのも大きな理由だ。タクシー内の受動喫煙をめぐって、タクシー運転手らが起こした損害賠償訴訟で、タクシー事業者が乗務員を受動喫煙から守る安全配慮義務を負うという判断が示されたのも、事業者側が車内禁煙を真剣に考えるきっかけになった。
山梨県タクシー協会は加盟するすべてのタクシーを10月から禁煙にする。94事業者の計1177台のタクシーすべてを全面的に禁煙にする。加盟していない1社を除き、山梨県内のタクシーはすべて禁煙に変わる見込みだ。
岐阜県タクシー協会は11月から、加盟する法人・個人タクシー約2800台を全車両禁煙にする。中部3県では既に名古屋市とその周辺で5月に導入済みだが、県全域での実施は中部で初めてとなる。
都内でも「禁煙タクシー」が本格導入される日が近い。その日は2008年1月7日。法人タクシーの約9割が加盟する東京乗用旅客自動車協会(東旅協)が導入に踏み切る。対象は東旅協加盟のすべての車だ。加盟社389社の保有車両は約3万4000台にのぼる。
「全面禁煙」決定に至る道は平坦ではなかった。一時は全車の2割を禁煙車にする方向で流れが決まりかけたが、先行3県の全面禁煙に象徴されるように、全国で禁煙化に踏み切る動きがはっきりしてきたことから、時代の流れに合わせる格好で全面禁煙にハンドルを切った。
ただし、都内のすべてのタクシーがこの日から禁煙になるかと言えば、実はそうではない。東旅協に加盟していない個人タクシーの業界団体は今回の全面禁煙に参加していないからだ。
都内を走る個人タクシーは約1万8000台あるとされる。その業界団体も東旅協とは別にある。東旅協は個人タクシーの業界団体にも働きかける姿勢を見せているが、1月7日の時点では足並みがそろわないかもしれない。お隣の神奈川県では神奈川県個人タクシー協会に属するタクシーも全面禁煙に踏み切っている。
9割の法人タクシーが加盟しているとは言え、非加盟のタクシー会社もある。こちらも現時点では全面禁煙に同調すると決めてはいない。うがった見方をすれば、愛煙家は非加盟のタクシーを探して乗るようになるかもしれない。何でもインターネットで情報が提供されるご時勢だから、「たばこが吸えるタクシーリスト」といったサイトが誕生する可能性だってありそうだ。
東京での全面禁煙が他県に遅れをとったのには理由がある。都内のタクシーは他県に比べて夜間の長距離客が多い。周辺県に住む人が自宅まで帰る、深夜の長距離客はドライバーにとって最も稼げる客となっている。こうした長距離客に長時間の禁煙を強いるのは、売り上げ減少につながりかねないという不安が反対論につながった。
深夜営業が多いのも東京の特徴だ。酒を飲んで乗る深夜客に、下手に禁煙を求めると、思わぬトラブルになる恐れがある。「飲んだ後に一服」を好むスモーカーは多いだけに、客が怒り出しかねない。タクシーという密室で無防備な後頭部を見せているドライバーの不安は小さくない。こうした事情もあって、3月時点での禁煙車の割合は全車両の3%程度にとどまっていた。それが一気に90%にもアップするのだから、文字通り劇的な変化と言える。
タクシー全面禁煙を政令指定都市で最初に実施したのは、5月からスタートした名古屋市。予想に反して、喫煙者との大きなトラブルは報じられていない。
もっとも、先行実施した地域で、完全に禁煙が守られているとは言い切れない。「1本だけ」と言うや否や、勝手に吸い始めてしまう客に、「火を消してください」とまではなかなか切り出しにくい。ドライバー側がもめごとを避けながら上手に乗り切っているというのが実情かもしれない。
その流れで言えば、東京を含むこれから実施される地域でも、しばらくは厳密な禁煙を求めるドライバーと、黙認する運転手が混在する状況が続きそうだ。ただ、長期的には徹底されていく方向は揺るがない。いずれはお目こぼしにあずかれなくなると覚悟しておくべきだろう。この機会にそろそろまじめに禁煙を考えるのも悪くあるまい。
**********
この問題は、ひたすら経済効率性の問題だと考えます。経営の厳しいタクシー会社が生き残りをかけて禁煙化に踏み切ったと考えるからです。
そして、それは決して間違いではありません。タバコが本当に健康に悪いかどうかよりも、それが悪いと信じてタバコの煙が充満するタクシーに乗りたくない人が多くいるという現実を直視することが重要なのです。
というわけで、タクシーの禁煙化によってタクシー業界が息を吹き返すことを祈りたいものです。
**********
タクシーは禁煙の時代 東京・山梨・岐阜も (日経WagaMaga)
禁煙タクシーが一気に普及し始めた。静岡県で8月5日、全面禁煙が始まった。都道府県単位での取り組みは大分、長野、神奈川に続いて4例目。さらに東京都、山梨、岐阜県でも順次導入が決まっている。ただ、先行導入された地域では、必ずしも100%禁煙が守られているとも言い切れず、愛煙家も吸わない人も当分はまだら模様の対応に戸惑いそうだ。
そもそも、なぜタクシーでたばこを吸えなくするのか。理由はいくつかある。最も有力な理由の1つは、利用者から「禁煙タクシーを増やしてほしい」という要望のボルテージが一段と高まってきたことだ。前に乗った客やドライバー自身が車内でたばこを吸った場合、次に乗った人が二次喫煙を強いられてしまう恐れが強い。煙やにおいで不快な思いを強いられた人は珍しくないだろう。服ににおいが染み付くとか、会話がしにくい、子供の健康にマイナスなどの声もある。
運転手がたばこの煙を吸ってしまう受動喫煙を防ぐというのも大きな理由だ。タクシー内の受動喫煙をめぐって、タクシー運転手らが起こした損害賠償訴訟で、タクシー事業者が乗務員を受動喫煙から守る安全配慮義務を負うという判断が示されたのも、事業者側が車内禁煙を真剣に考えるきっかけになった。
山梨県タクシー協会は加盟するすべてのタクシーを10月から禁煙にする。94事業者の計1177台のタクシーすべてを全面的に禁煙にする。加盟していない1社を除き、山梨県内のタクシーはすべて禁煙に変わる見込みだ。
岐阜県タクシー協会は11月から、加盟する法人・個人タクシー約2800台を全車両禁煙にする。中部3県では既に名古屋市とその周辺で5月に導入済みだが、県全域での実施は中部で初めてとなる。
都内でも「禁煙タクシー」が本格導入される日が近い。その日は2008年1月7日。法人タクシーの約9割が加盟する東京乗用旅客自動車協会(東旅協)が導入に踏み切る。対象は東旅協加盟のすべての車だ。加盟社389社の保有車両は約3万4000台にのぼる。
「全面禁煙」決定に至る道は平坦ではなかった。一時は全車の2割を禁煙車にする方向で流れが決まりかけたが、先行3県の全面禁煙に象徴されるように、全国で禁煙化に踏み切る動きがはっきりしてきたことから、時代の流れに合わせる格好で全面禁煙にハンドルを切った。
ただし、都内のすべてのタクシーがこの日から禁煙になるかと言えば、実はそうではない。東旅協に加盟していない個人タクシーの業界団体は今回の全面禁煙に参加していないからだ。
都内を走る個人タクシーは約1万8000台あるとされる。その業界団体も東旅協とは別にある。東旅協は個人タクシーの業界団体にも働きかける姿勢を見せているが、1月7日の時点では足並みがそろわないかもしれない。お隣の神奈川県では神奈川県個人タクシー協会に属するタクシーも全面禁煙に踏み切っている。
9割の法人タクシーが加盟しているとは言え、非加盟のタクシー会社もある。こちらも現時点では全面禁煙に同調すると決めてはいない。うがった見方をすれば、愛煙家は非加盟のタクシーを探して乗るようになるかもしれない。何でもインターネットで情報が提供されるご時勢だから、「たばこが吸えるタクシーリスト」といったサイトが誕生する可能性だってありそうだ。
東京での全面禁煙が他県に遅れをとったのには理由がある。都内のタクシーは他県に比べて夜間の長距離客が多い。周辺県に住む人が自宅まで帰る、深夜の長距離客はドライバーにとって最も稼げる客となっている。こうした長距離客に長時間の禁煙を強いるのは、売り上げ減少につながりかねないという不安が反対論につながった。
深夜営業が多いのも東京の特徴だ。酒を飲んで乗る深夜客に、下手に禁煙を求めると、思わぬトラブルになる恐れがある。「飲んだ後に一服」を好むスモーカーは多いだけに、客が怒り出しかねない。タクシーという密室で無防備な後頭部を見せているドライバーの不安は小さくない。こうした事情もあって、3月時点での禁煙車の割合は全車両の3%程度にとどまっていた。それが一気に90%にもアップするのだから、文字通り劇的な変化と言える。
タクシー全面禁煙を政令指定都市で最初に実施したのは、5月からスタートした名古屋市。予想に反して、喫煙者との大きなトラブルは報じられていない。
もっとも、先行実施した地域で、完全に禁煙が守られているとは言い切れない。「1本だけ」と言うや否や、勝手に吸い始めてしまう客に、「火を消してください」とまではなかなか切り出しにくい。ドライバー側がもめごとを避けながら上手に乗り切っているというのが実情かもしれない。
その流れで言えば、東京を含むこれから実施される地域でも、しばらくは厳密な禁煙を求めるドライバーと、黙認する運転手が混在する状況が続きそうだ。ただ、長期的には徹底されていく方向は揺るがない。いずれはお目こぼしにあずかれなくなると覚悟しておくべきだろう。この機会にそろそろまじめに禁煙を考えるのも悪くあるまい。
**********
この問題は、ひたすら経済効率性の問題だと考えます。経営の厳しいタクシー会社が生き残りをかけて禁煙化に踏み切ったと考えるからです。
そして、それは決して間違いではありません。タバコが本当に健康に悪いかどうかよりも、それが悪いと信じてタバコの煙が充満するタクシーに乗りたくない人が多くいるという現実を直視することが重要なのです。
というわけで、タクシーの禁煙化によってタクシー業界が息を吹き返すことを祈りたいものです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます