まさかの2連敗。里見香奈女流五冠にとって「いい経験」であることを願います。
**********
里見香奈女流名人、故郷で崖っぷち!「いい経験」逆転V8へ前向き
島根県出雲市の出雲文化伝承館で22日、第2局が行われ、後手の挑戦者・上田初美女流三段(28)が104手で里見香奈女流名人(24)=女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=に勝ち、2連勝で初の女流名人位奪取に王手をかけた。序盤から大乱戦に突入したが、積極果敢な攻めでねじ伏せた。過去、女流名人戦5番勝負での開幕連勝はV率100%。8連覇を狙う最強女流名人を徳俵に追いつめた。第3局は29日、千葉県野田市の関根名人記念館で行われる。
過去5勝1敗と相性がよく「一番うれしい対局場所」という故郷・出雲で崖っぷちに立たされた。大盤解説会場に家族も駆けつける中、通算30回目のタイトル戦で初の開幕連敗を喫した。女流名人戦では連敗自体が未経験。全タイトル戦でも2014年の「マイナビ女子オープン」(対加藤桃子女王)以来の黒星続きだが「終わったこと。しっかり反省し、地元の声援を励みに頑張る」と頭を切り替えた。
第1局に敗れ、「次はじっくり時間を使いたい」と、13手(▲7四歩)には52分もかけたが、結局は乱戦で見せ場なし。「もうちょっと受ける展開にした方がよかった」。95手目からは1分将棋となり、力尽きた。
いきなりの土俵際だが「こういうケースは初めてなので、いい経験になる」。第3局は“ニュー里見”で逆襲する。(筒井 政也)
島根県出雲市の出雲文化伝承館で22日、第2局が行われ、後手の挑戦者・上田初美女流三段(28)が104手で里見香奈女流名人(24)=女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=に勝ち、2連勝で初の女流名人位奪取に王手をかけた。序盤から大乱戦に突入したが、積極果敢な攻めでねじ伏せた。過去、女流名人戦5番勝負での開幕連勝はV率100%。8連覇を狙う最強女流名人を徳俵に追いつめた。第3局は29日、千葉県野田市の関根名人記念館で行われる。
終局後、疲労感を漂わせた上田が大乱戦を振り返る。「激しい戦いになってしまい、止まり方がよく分からなかった。間違えたらすぐひっくり返されると思っていました」。立ち上がると、本局のためにあつらえた藍色の和服の乱れを直し、気息を整えた。
開幕局に続いて、大激戦となった。序盤、里見が先手番のエースである石田流三間飛車を採用すると、上田は果敢な端攻めを断行。居玉のまま一心不乱に攻め立て、先手玉ににじり寄る。微差のリードを保つと、最後は逆転を狙う里見の終盤術をかわし、先手玉を寄せ切った。
里見の故郷に乗り込んだ完全アウェーの一局。前日の上田は笑顔で言った。「私、悪者になるのはキライじゃないんです。ワクワクします」。本棋戦での開幕連勝はV率100%。「2局とも自分が読んだ手をしっかり指せているのはいいかなと思います」。完全に「ゾーン」に入っている。
母親になっていなければ指せなかった将棋かもしれない。一昨年12月に長女を出産した上田は、研究時間を取れない現状を考慮し、ある決断を下した。「今までみたいに研究を深めて指すのは難しい。だから、ちょっと受け身だったのを主導権を握りにいく指し方に変えて、攻めに比重を置くようにしました」
象徴は2手目にある。以前は、オールラウンダーとして後手番の2手目に居飛車を明示する△8四歩も指していたが、復帰後は研究時間が取れないため完全に封印。本局では、研究を続けた△3四歩を迷わず選んだ。棋力向上より、持っている力を発揮することに主眼を置くスタイルが晴れ舞台で実を結んでいる。
出産後、家族と離れての外泊は今回の5番勝負が初めてだったが、不安は感じていない。子供の世話をしてくれている夫の及川拓馬六段(29)は出雲への出発前、自らの腕時計を妻に託した。決戦の盤上の目の前で時を刻んだ男物の時計が家族の支えの象徴だった。まな娘は第1局の箱根から帰京後、立ち上がる姿を初披露してママを励ました。
次局は女流名人位奪取をかけての一局になる。「特に意識することなく、緩まずに3局目を迎えたいです。自然体で自分の読みを信じて指したいと思います」。最強の挑戦者の口調に、わずかな自信が漂った。(北野 新太)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます