▼映画「フォード vs フェラーリ」絶対に家で観てはいけないル・マン24時
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オスカー俳優のマット・デイモンとクリスチャン・ベイルをW主演に迎え、
アメリカを代表する自動車メーカーフォード社とフェラーリ社の闘いを描いたドラマ。
1960年代後半、ル・マン24時間レースに賭けた男達のプライドの行方は。
監督は「LOGAN/ローガン」「3時10分、決断のとき」のジェームズ・マンゴールド。
2020年はすごいぞ。
「パラサイト」で2019年に観た全ての映画を超える衝撃を受けたばかりなのに、
同日に公開された本作で2019年に観た全ての映画を超える興奮を体験してしまった。
NetflixやAmazonプライムを家や電車の中で楽しむスタイルが
すっかり定着した現代においても、本作だけは絶対に劇場に足を運んで欲しい。
家で観るのは2度目からにしてくれと懇願したくなる傑作が
この「フォード vs フェラーリ」だ。
絶対に家で観てはいけないタイプの映画である。
「ワイルドスピード」や「マッドマックス 怒りのデスロード」のように
アクション映画としてのレースものは数多く存在しているが、
実在する人物や会社をモデルにしたレースもので
これほどまでに血湧き肉躍る体験をしたのは人生で初かも知れない。
ミュージカルや舞台を映画化すると
大半の場合は本物の舞台だけが持つ生の迫力が削がれてしまう。
その分、様々な角度から眺めたり、言葉足らずな部分を台詞で補足したり、
肉眼では確認できない細やかな表情を楽しむこと等でデメリットを相殺している。
本作は生のレースの興奮を遜色なく映画の中で再現し、
さらに映画でしか体験できないドライバー視点での映像をふんだんに使用している。
劇中に登場するスポーツカーは全て本物を使用し、
一切のデジタル処理は行わずに撮影が敢行されたとのこと。
デメリットのほとんど無いところにメリットをどっさり上乗せしてあるので
映画であることを忘れ、観戦者と錯覚する瞬間が何度もあった。
スクリーンを見つめながら胸の前で両手を組み、
固唾を飲んでレースの行方を見守っている自分がいた。
売り上げは大きいもののレースでの実績に乏しいフォード社の二代目が
打倒フェラーリを掲げて仕掛ける一大プロジェクトの経緯は
「プロジェクトX」的でこちらも見応えがある。
一線を退きカー・デザイナーとして生計を立てているマット・デイモンと、
天才的なテクニックと豊富な知識を持ちながら
その偏屈な性格のせいで生活に困窮しているドライバーのクリスチャン・ベイルが
フォードの後ろ盾を得てやがてフェラーリを脅かすまでに至る胸熱な展開は
まんま「下町ロケット」のハリウッド版といったところ。
不器用にしか生きられないケン(クリスチャン・ベイル)を
支える妻役のカトリーナ・バルフや、父を尊敬する息子を演じたノア・ジュープなど
初代の功績を受け継いだ二世社長を演じたトレイシー・レッツなど
脇役も魅力的な人物で固められ、レース部分でもドラマ部分でも楽しめる。
唯一のネックを挙げるとすれば153分という尺の長さだろうが
観終えてみるとそんなにあったようには感じなかった。
1月にして今年一番の興奮を体験できる作品と断言してしまおう。
映画「フォードvsフェラーリ」は現在公開中。
▼併せて観たいレース映画/ドキュメンタリー
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なにはともあれ、スティーヴ・マックィーン関連はマストとして押さえておきたい。
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「ビューティフル・マインド」の名匠ロン・ハワードが
ふたりのレーサーをめぐる対立と友情を描いたのが「RUSH プライドと友情」。
宿命のライバルとしてF1ファンを熱狂させた伝説のレーサー、
ジェームズ・ハントとニキ・ラウダの半生をドラマ化したもので
ロン・ハワードらしい骨太な感動作に仕上がっている。
主演は「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースと
「みんなで一緒に暮らしたら」のダニエル・ブリュール。
甘いルックスに群がってくる女を片っ端から喰い散らかしつつも
極度の緊張から人目につかない場所でこっそりと嘔吐を繰り返している
ガラスのハートを持ったジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)と、
「走るコンピュータ」の異名をとるほど計算高く冷静な
ガリ勉タイプのレーサー、ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)の闘いは
少年漫画によく出てくる、180度異なる環境に置かれた天才二人。
二人のキャラクターを象徴するようなエピソードを描きつつ
事実を淡々と追ったドキュメンタリー的演出と
映画的な迫力に満ちたレースシーンを挟み込む
ロン・ハワードの演出はいつになく骨太でお見事。
常に死と隣り合わせの危険に晒されていながら
何故それでも彼らは1秒でも速く走ろうとするのか。
この映画には、多くの者が抱く疑問に対する答えが詰まっている。
「フォードvsフェラーリ」を観て
レースものを何かもう1本観たくなったなら、まずはこちらを。
発売中■Blu-ray:アイルトン・セナ~音速の彼方へ
配信中■Amazonビデオ:アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ 字幕版
音速の貴公子・アイルトン・セナの隠された真実に迫るドキュメンタリー映画。
世界中を熱狂された輝かしい歴史の裏には、アラン・プロストとの確執や、
FISA会長からの政治的圧力など、表沙汰にならない様々な苦悩があった。
監督はセナと同じく若くして亡くなったエイミー・ワインハウスの
ドキュメンタリー映画「AMY」も撮ったアシフ・カパディア。
殊更にドラマティックな脚色をすることなく、
残された素材を使って可能な限り素顔に迫ろうとする手法は2作に共通している。
発売中■Blu-ray:タッカー 4Kレストア版
配信中■Amazonビデオ:タッカー 字幕版
ジョージ・ルーカスが製作総指揮を務め
「ゴッドファーザー」のフランシス・フォード・コッポラが
メガホンを執ったプレストン・トマス・タッカーの伝記映画。
主演は「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジス。
1988年の作品。
昨年12月にはコッポラ監督が自ら監修した
4Kデジタルリマスター版でリバイバル上映もされたばかり。
1940年代のアメリカで巨大自動車産業界に挑んだタッカーの
奮闘を描いたもので、1970年代を舞台にした「フォードvsフェラーリ」の
もうひとつ前の世代を映画化したものとも言える。
こちらはレースものではなく、自動車開発に賭けたタッカーの奮闘劇であり、
ドラマの作りとしては池井戸潤テイストが強い。
わかっている結末への着地ですっきり爽快になれる王道の娯楽作品。
未見ならばオススメ。