一歩先の経済展望

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米インフレ再燃リスクが焦点に、円安圧力増すなら日銀の政策判断にも影響

2024-11-28 14:58:09 | 経済

 米経済の好調さが持続する中で、インフレ懸念再燃の可能性が市場の中心テーマに浮上しようとしている。2025年中にどこまでフェデラルファンドレート(FF金利)が低下するのかという市場の予想値は4%付近(誘導レンジの上限)まで上昇しており、ドル/円をドル高・円安方向に押し上げる原動力になっている。その意味で12月6日発表の11月米雇用統計や12月11日の11月米消費者物価指数(CPI)の結果は、市場心理を大きく左右しそうだ。

 また、12月上中旬に円安が進展するようなら、18、19日に金融政策決定会合を開催する日銀の政策判断にも大きな影響を与えそうだ。

 

 <10月PCEで鮮明だったサービス価格の強さ>

 市場が注目していた10月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比プラス2.3%と前月の同2.1%から伸びが加速。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は同2.8%と前月の同2.7%から伸び率が小幅大きくなった。

 10月の伸び加速に寄与したのはサービス価格の上昇で、住宅とエネルギーを除くサービス価格は前月比プラス0.4%と、今年3月以来の大幅な伸びとなった。

 また、米アトランタ地区連銀が算出している「GDP NOW」は今年10-12月の国内総生産(GDP)伸び率がプラス2.7%と高い伸びとなっている。

 

 <足元のドル下落と米長期金利低下、利益確定の動きが影響>

 高い経済成長率と強めのサービス価格の推移が継続するなら、インフレ懸念が再燃して米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが鈍化し、米長期金利上昇とドル高が起きてもおかしくないが、27日のNY市場では米長期金利の低下とドル下落、米株下落で反応した。

 市場の一部では、12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測の高まりが影響したとの声も出ていたが、複数の市場関係者によると、11月28日の感謝祭の祝日を前に11月末の決算期末を控えたヘッジファンド勢などが利益確定のための米国債買い(金利低下)、米株売り、ドル売りの注文を出していた影響が大きかったという。

 

 <11月米雇用統計、前月の反動で強めか 注目されるCPI>

 したがって今後は、週明け12月2日からの取引で何が主要テーマになるのかが大きなポイントになる。筆者は米経済の好調持続とインフレ再燃リスクの可能性を測ることになると予想する。

 まずは、12月6日発表の11月米雇用統計が大きな材料になる。前月の10月は非農業部門雇用者数が前月比1万2000人増と市場予想の11万3000人増を大幅に下回った。大型ハリケーンの被害やボーイングのストが影響したが、11月はその反動が出るとみられている。非農業部門雇用者数の市場予想は同20万人増のようだが、仮にこれを上回る強い数字になれば、市場の注目度は跳ね上がるだろう。

 11月CPIも前月の前年比プラス2.6%を上回るようなら、市場のインフレ再燃懸念がますます強まることになる。

 

 <ドル/円に影響する市場の25年利下げ織り込み>

 12月FOMCに関する市場の利下げ織り込みは、17ベーシスポイント(bp)となっている。市場の利下げ織り込みは68%に達しているが、25bpの利下げを決めても来年の利下げペースが緩慢になると市場が判断すれば、ドル高・円安の圧力がかかりやすくなる。

 足元で市場は、12月FOMCで25bpの利下げを実施した上で、25年に2回の利下げを行ってFF金利が3.75-4.00%まで低下することを織り込んでいる。

 雇用統計やCPIの結果を受けて、この織り込みが上下にどれだけ振れるのかが年内の大きな焦点になる。

 筆者は、ドル/円が円高方向に振れる可能性は低く、150円から155円のレンジ内でしばらく底堅い展開になると予想している。インフレ再燃のリスクが相応に高まるとみているからだ。その背後には、トランプ次期米大統領の減税や高関税の実施、不法移民の強制送還などの政策によってインフレ心理が刺激されやすくなるという要因がある。

 

 <円安進展なら、日銀の利上げ判断に影響>

 このように見てくると、米経済におけるインフレ懸念再燃のリスクは、ドル高・円安と輸入物価上昇というルートを通じ、日本のCPIにもかなりの影響を及ぼす問題と言えるだろう。物価上昇の圧力が強まると日銀が判断すれば、利上げをめぐる日銀の「総合判断」にもかなりの影響を与えることになる。

 今年12月の日米金融政策イベントは、17-18日がFOMC、18-19日が日銀金融政策決定会合となっており、パウエルFRB議長の会見やドットチャートの変遷をみて、市場がドル高・円安に動けばその動向にも日銀が一定の目配りをする可能性があることも視野に入れておく必要がある。

 年末の日米金融政策イベントに向け、米インフレ懸念の動向を判断するための経済指標のチェックは重要性が一気に高まりそうだ。


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