(書評)
『あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン』(講談社現代新書)
著者 住吉雅美
「あぶない」って、この本のどこがどう「あぶない」の? 逆だろう。この程度の知識がないと、「あぶない」のだ。常識だろう。ところが、「常識に盾突く」というのだから、常識ではないらしい。空恐ろしい。
この本で紹介されている専門書のほとんどを、私は読んだことがない。しかし、大雑把になら、何となく知っている。事典に書いてあるからか。
この本は、法哲学を学ぶ学生のための入門書みたいだ。しかし、この本に書いてある程度のことも知らずに法律家を目指す人って、かなり「あぶない」よ。
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人類「何を言うんです! 我々は一人一人、かけがえのない個人であり、人権を持ってるんですよ! それをあなた、まるで野生ジカかなんかのように……」
異星人「人権? なんだそれは? 愚かなお前たちの間でだけ通用する互助精神か? そんなもの我々の知ったことではない。お前たちはシカを間引く時に一頭一頭のシカ権など考えたことがあったか?」
人類「我々はシカではありません! 霊長類最高の知性をもって文明を築き上げてきたのです」
異星人「ならその知性とやらを発揮して、無駄飯食らいだけの人間どもを世界中から選んで始末して、最小限のエネルギーで生き延びられる優秀な個体だけを選抜して計画的に繁殖させるとか、自分たちでさっさとやってみろ」
人類「なんてことを! それは酷い人権侵害ですよ!」
異星人「我らより知能の低い種の内輪の事情など知らん。我々にとって人類など、お前らが何の躊躇いもなく殺戮している蟻のようなものだ。話にならん。よしわかった。自分たちでできないなら、我々がお前たちを間引いてやろう」
(「第七章 人類がエゾシカのように駆逐される日――権利そして人権」)
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「異星人」のような人は実在する。彼らにとって「人権」など、呪文に等しい。呪文では彼らに勝てない。
要するに、この本は現代人の必読書。
(終)