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“ブーム”はいかに作られるのか?
■地道な応援活動の結果、伊勢うどん大使に就任
「大人力」の元祖&本家として知られる石原壮一郎さんが、伊勢うどんの応援活動に尋常ならざるエネルギーを注いでいることは知っていたが、まさか伊勢うどんの本まで出版してしまうとは…。
その名も『伊勢うどん全国制覇への道』。この「世界初の伊勢うどん本」は、コシ至上主義が幅を利かせているうどん界にあって長らく日陰の存在だった伊勢うどんを、採算度外視(というか真っ赤っ赤)で世に広めていった石原さんの奮闘記だ。
石原さんは松阪市の出身で、隣の伊勢に行くたびに伊勢うどんを食べていた。それだけに愛着もひとしおだろう。ところがコシ信仰に毒された人々からは「茹ですぎ」「コシがない」「ツユもないけど、ヤル気もない」と、いわれのない非難を浴びせられる一方。「このままじゃいけない! あまりにも理不尽だ!」という義憤からその応援活動は始まった。
2012年の夏にフェイスブック上で「伊勢うどん友の会」を立ち上げて以来、フリーペーパー「伊勢うどん友の会通信」の発行、現地取材をもとにした短期連載、「伊勢うどんカフェ」や「伊勢うどんナイト」などのイベント開催と、伊勢うどんの応援活動を続けた結果、この8月に伊勢市の「伊勢うどん大使」に就任。三重の主要メディアを席巻したという。
無私の愛が生み出した伊勢うどんブームが、本当に全国を制覇するのかどうか。しばらく目が離せそうにない。
■「ズラしの手法」から地方発ブームに火がついた
昨今のブームとして外せないのは「くまモン」の快進撃だろう。『くまモンの秘密』をひもとくと、このブームの裏には、熊本県知事や県庁職員たちの公務員らしからぬ自由闊達な企画力や発想力があったことがよくわかる。
象徴的なのが、第一部で語られる関西戦略だろう。あえて熊本色は出さず、まずはくまモンを大阪の人気者にしてしまうという逆転の発想がすごい。
「うどん県」「佐世保バーガー」のPRを仕掛けたプロデューサーによる『売れないものを売るズラしの手法』では、くまモンのライバルである「ひこにゃん」の秘密が明かされている。ひこにゃんのケースでは、観光をリードする女性にアピールするため、彦根城を差し置いて、ひこにゃんを前面に立てる戦略を採ったという。つまりターゲットを「城好き」から「観光をリードする女性」にズラしたわけだ。
この「ズラしの手法」は、場所をズラしてブームとなった伊勢うどんやくまモンにも相通じている。最近、地方発ブームが目立つのも、ズラしやすさゆえかもしれない。