ユニクロ売上高1兆円も課題山積
カジュアル衣料店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの売上高が、日本の衣料品企業として初めて1兆円を超えた。中国をはじめとするアジアでの積極出店が実った形で、次の大目標である「2020年に売上高5兆円」について、柳井正会長兼社長は「十分達成可能」と強気だ。
順風満帆にみえるが、不振の国内ユニクロの立て直しや、欧米市場の開拓といった課題も山積している。
上海には世界最大の旗艦店オープン
同社が2013年10月10日発表した13年8月期連結決算は、売上高は前期より23.1%多い1兆1430億円、本業のもうけを示す営業利益は同5.1%増の1329億円、最終利益は同26.1%増の903億円と、いずれも過去最高を記録した。売上高は、ZARAを展開するインディテックス(スペイン)、H&M(スウェーデン)、ギャップ(米国)に次ぐ業界4位のポジション。Lブランズ(米国)を抜き、前年から一つ順位を上げた。
好調の主因は、アジアへの積極出店だ。中国は80店増の225店、韓国は25店増の105店、台湾は20店増の37店に拡大。東南アジアでは6月にインドネシアに1号店を出したほか、来春にはオーストラリアに進出。9月30日には、中国・上海に日本の銀座店を上回る世界最大のグローバル旗艦店をオープンし、「大盛況」(同社)だという。海外ユニクロの売上高は前期より64.0%多い2511億円、営業利益は同66.8%多い183億円と、全体をけん引した。
国内では3期連続の減益
一方で、国内ユニクロは不振が続いている。保温性に優れた肌着「ヒートテック」や通気性の高い肌着「エアリズム」などの主力商品は売れ、客数は前期比12%増だったが、値引き商品やシーズン末期の在庫処分に売り上げが集中し、粗利益率が低下。売上高は前期より10.2%多い6833億円、営業利益は同5.4%少ない968億円で、3期連続の営業減益だった。フランチャイズを含めた店舗数は853店で、前期比8店の増加にとどまり、もはや飽和状態といえる。
同社が目指す「真のグローバルブランド」になるためには、屋台骨である国内ユニクロの再構築が待ったなしだ。まずは従来の価格訴求から、商品の素材の良さをアピールする方針に転換することで、利益の積み上げを図る。秋冬商戦では、カシミヤやシルクを使った比較的高価格の商品を前面に打ち出す。また東京都心に大型店を出店するなどして、「ユニクロは郊外店」というイメージを打破する考えだ。
世界ブランド番付ではベスト100圏外
海外では、アジアでの積極出店に加え、米国でも本格的なチェーン展開に挑む。8月末現在の海外446店舗のうち、米国や英国など欧米は22店舗に過ぎない。赤字が続く米国では今期、東海岸に9店舗、同西海岸に6店舗と、郊外のショッピングモールを中心に出店する計画。年20~30店舗の出店を継続し、数年以内に100店舗体制を整える。
日本や中国では浸透しているユニクロブランドだが、欧米では知名度が低いことも弱点だ。米インターブランド社による2013年の世界ブランド番付によると、21位H&M、36位ZARA、88位ラルフローレン、100位ギャップとライバル各社がランクインする中、ユニクロはトップ100に入れなかった。
同社は「高品質とファッション性を兼ね備えたベーシックな普段着」というコンセプトで、ブランド力向上を図る考え。従来65歳までの社長引退を表明していた柳井社長は「グローバル化の真っ最中なので、社長を継続しないといけない」と、来年2月に65歳になったあとも陣頭指揮にあたる考えを示した。「真のグローバルブランド」へ向け、いよいよ真価が問われそうだ。