これからの時代は、プログラミング
新世代リーダー予備軍とも言える10代の優秀な若者は、どんな未来を描いているのか。「スーパーIT中学生」「スーパーIT高校生」として早くから独自の道を切り拓いてきたデジタルクリエー ターの灘高生が、未来予測を発信。ITや政治、経済、教育、ときにはアイドルや女の子ネタまで、感度の高い移り気なアンテナがキャッチするまま書き連ねる。
Tehuの言葉 「プログラミングはスキル“だった”が、もはや違う」
■「デジタルネイティブ」という言葉に違和感
本連載で9月に取り上げた、中高生向けのITキャンプ「Life is Tech!」。9月末に開催された「アプリ甲子園」という中高生のアプリクリエイターの大会が大盛況だったそうです。10月からは通年型のプログラミングスクールも始まりました。
「プログラミング」が、子どもたちの創造力育成において現行教育課程の「図工」に取って代わる日も近いかもしれません。
今週は、そのプログラミングについて考えてみます。プログラミングとはいったい何なのか?
ボクがプログラミングを始めたのは2009年、中学1年生のときでした。中2でつくったiPhoneアプリ「健康計算機」のダウンロード数が当時、世界で第3位となったのをきっかけに、ボク自身がメディアで紹介される機会が増えて、「早咲き」のように言われたりしましたが、周りには小学校時代からプログラムをバリバリ書いている人もたくさんいます。
現在、40歳、50歳のベテランエンジニアの方々のなかにも、小学校時代からマイコンや基盤を自分でカスタマイズしてモノ作りをしていた人はいるでしょう。「デジタルネイティブ」などという言葉がもてはやされて数年経ちますが、実は数十年前から、数が少ないとはいえ、いらっしゃったわけです。
最近、「デジタルネイティブ」の人が増え出して、メディアがフィーチャーしていますが、それにボクは違和感を覚えます。「デジタルネイティブ」がフツーだからです。日本で「日本語ネイティブ」と言わないと同じ。
だから今、「自分はデジタルネイティブじゃないなあ」と思われている方は、これからの時代の流れに置いていかれる可能性が高いので、危機感を持つべきでしょう。
では、どうすれば「デジタルネイティブ」になれるか?
■プログラミングを学べ
厳密には、今さら「デジタルネイティブ」にはなれないので、「デジタル強者」を目指しましょうか。今さらエクセルを使ってドヤ顔するなら、プログラミングを学びましょう。なぜか?
プログラミングは楽しいからです。エクセルは仕事の生産性を上げますが、プログラミングは、仕事の生産性を上げるだけでなく、仕事や日常生活をもっと楽しくしてくれます。プログラミングを知っているだけで作業を効率化できたり、自分がコンピューターでつくるモノをもっと魅力的にできることが数えきれないほどあります。そして、創造欲を思い切り発揮することができる。
退職したおじいさんが、持て余した創造欲を陶芸や盆栽にぶつけることはよくありますが、あなたも創造欲をおさえ込まずにプログラミングにぶつけて、毎日をより楽しくしましょう。プログラミングは根本的に楽しいもの。これをつねにココロに置いておかないと、学んでも身につくことはありません。
■お手軽レベルで十分
学び方には2つのやり方があります。1つは、プログラミングの歴史を振り返り、手順をきちんと踏みながら、コンピューターの基礎から学ぶこと。もう1つは、手軽にアプリを作ることができる環境に行って、とりあえずつくってみること。
こう書くと、基礎重視の前者をオススメしているように思われるかもしれませんが、ボクは全力でお手軽な後者をオススメします。
そもそも将来、ガチのプログラマーになるわけでもない人は、お手軽レベルで十分です。ありがたいことに、お手軽レベルの知識と技術力でも、センスと発想さえあれば、なかなか見栄えのするアプリを作れるような環境が、ここ数年で驚異的に整備されてきました。
本当に興味があれば、あとから低レイヤーの事柄を学んでもまったく遅くありません。プロフェッショナルと呼ばれる方のなかには、お手軽にプログラムを書く人が増えるのを快く思っていない方もいらっしゃいますが、そもそも土俵が違います。プログラムを書くことを仕事にしている人たちと同じ土俵に立つ必要はありません。まさにボクがそうであったように、娯楽目的で知識や技術に触れればよいのです。
■オンライン講座も充実
ユビキタスエンターテインメントの清水亮社長のブログに、実際に文系の大学生にプログラミングを教えられたときに再確認された楽しさと学び方について書かれています。
ここにもある通り、もうC言語の分厚い本を買って、1ページ目から舐めるように読んでいき、ポインタの概念が理解できずに挫折するというのは現実に合った学び方ではありません。
無料のオンライン講座「ドットインストール」や、海外の大学による大規模公開オンライン授業「MOOKs(Massive Open Online Courses )」で視聴できるプログラミング基礎の授業など、かなり手軽に、そして細切れの時間で、毎度楽しい発見ができるように設計された教材がたくさんあります。まずはチャレンジしてみてください。
さて、プログラミングとはスキルなのでしょうか? 学び方について話してきたので、まるで「ユーキャン」の資格の1つであるかのような雰囲気がしてきてしまうわけですが、ボクのなかでは、もはやスキルではありません。「プログラミングはできて当たり前」という状況がもうすぐやってくるでしょう。
それに対応できる人材は、専業プログラマーではなく、「プログラムの書ける営業職の人」であり、「プログラムの書ける企画職の人」であり、「プログラムの書ける経理職の人」なのです。どんな職種の人でもプログラミングを使って創造性を発揮していく。そうして、もはやプログラミングがスキルとも思われなくなる時代を生き抜いていきましょう。
■先月、「プログラマー」を引退した
ボクは先月、「プログラマー引退宣言」を発表しました。いろいろな理由や思いはありますが、もう2年前に専業プログラマーの道を断念して、現在はプログラムを本気で書くことはなくなっていたし、本気で書いたとしても、素晴らしい才能を持つガチのプログラマーに勝てるとは思えなかったから。それと、これまで肩書きの1つとして「プログラマー」を名乗っていましたが、スキルとしてのプログラマーの時代が終わるという実感があったからです。
プログラミングとはスキルではなく、問題解決のツールにすぎません。それは要不要にかかわらず、人類全員が持つべきものなのです。今、あなたが仕事で悩んでいることも、実はプログラミングを使えば簡単に解決できるかもしれませんよ。
さあ、先陣を切って、当たり前のツールを獲得しましょう。