神田橋 條治 先生のことばより(抜粋)
クライエントとの対話、つまり主としてコトバをやりとりするかかわりに触発されて、ボクの内部で内省の過程が進んだのである。
同じ事情がクライエントの中でも起こっているのではないか。すなわち、心理療法のの実際は、クライエント自身の一人での内省によって生じる感知や洞察(と同時に進行している意識下の心身プロセス)を触発し庇護する役割を果たすにすぎない。「クライエント・センタード」の核心はここにあるのではないか。
対話の場の主役はコトバであるが、内省の場の主役はイメージである。そして、コトバやイメージは、一見したところ、ヒトのこころに対して強い支配力をもっているように見えるが、じつは、その力の源泉は実体験の情報の確かさである。実体験に裏打ちされていない言葉は空疎である。実体験が薄い時はイメージも淡い。人の生を支える力をもちえない。言いかえると、コトバは、実体験や実体験に由来するイメージの「目次」であるにすぎない。そして、フォーカシングという技法は、コトバと実体験をつなぐ工夫である。
クライアント中心療法/雑話より 「全訂 ロジャーズ クライアント中心療法の現在」
村瀬孝雄・村瀬嘉代子 2015 日本評論社
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