2018.04.06(金)大阪・十三にある「シアターセブン」に行った。[国民投票の制度と諸外国での実施事例]徹底解説セミナーに参加した。レクチャー:今井一(ジャーナリスト、市民グループ「国民投票/住民投票」情報室事務局長)。
テキストは『国民投票の総て(¥2,500)』(既存の流通システムでは購入出来ない)。
嘉田由紀子氏(前滋賀県知事)、村西俊雄氏(日本で最初に永住外国人の投票権を"住民投票"で認めた元米原町長)、ロバート・エルドリッヂ氏(元阪大准教授、在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長)等が聴講者として、参加全14名。18:30〜21:00までの2時間半。
私が特に関心を持った話の概要は以下の箇所です。
世界で2,500以上の国民投票があったが(スイスが1番多い)、日本ではゼロ。住民投票は日本では1,798回(423回住民??、18回憲法29??、33回市町村分離、1314回市町村廃止)でアメリカに次いで2位。
国民投票という制度を「衆愚をもたらす悪しきもの」として否定している人たちの多くは、その根拠としてヒトラー独裁の時代に彼が実施した「国民投票」を引き合いに出し、国民投票こそがナチの政権を生み、ヒトラーを「総統」と称する絶対権力者に就かせたと主張する(228頁)。しかし実際にはヒトラー時代のすべての国民投票は、ヒトラーが決定し実行した後で実施されたもので、重大な案件の決定を国民に委ねるという本来の国民投票ではなかった。ヒトラーとその政権が暴力と謀略とによって進めたことを、形だけの「国民投票」をして「独裁ではない」という体裁を整えただけのことだった(257頁)。
国民投票は衆愚をもたらす悪しきものではなく、人を選ぶ選挙と違って、事柄を直接決定する。抽象的な議論が具体性を増していき、国民は自分たちに問われている案件の本質を正確につかむようになる(267頁)。
国民投票日の14日前から禁止されている「国民投票運動のための広告放送」(国民投票投票法第105条)であるが、「賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する」ような内容でなければ流せる(281頁)。公平にする為にはルール改善(例えば、賛否各派のCM放送は、同じ時間帯に同じ量を流す等。)が必要であり、立法府に働きかける(286〜287頁)。
日本会議(右翼・改悪派)は嘆願署名活動を行う場合、必ず住所・署名に加えて連絡先(電話番号)を 記入させている。投票時に電話をして推薦する候補・事柄に投票するよう依頼をしている。しかし護憲派の多くは住所・署名だけの場合が多い。
出口調査で日本女性の多くが侵略戦争にも自衛戦争にも反対だったこと(私も同様)。具体的な数字をメモ出来なかった(翌日、E-mailで問い合わせをしたが、返答は残念ながら来なかった)。自衛戦争に反対ならば、戦力としての自衛隊(災害救助としてではなく)は武装解除を主張することになるが、実際に武装解除を主張する人は少ないのは何故か。
核戦争でも自衛戦争に賛成するのか否か。非核戦争なら自衛戦争に賛成するのか否かで、また結論も変わる可能性があるかもしれないので、こう言った質問も必要だと感じた。
それにしても、安倍自民党政権の提案している改悪案は、9条2項をそのままにし、3項に戦力としての自衛隊を追加するのは、解釈改憲をより一層深くし、矛盾を深める論外案だ。
【(参考)日本国憲法 http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM 】
第2章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
※『国民投票の総て(¥2,500)』(編著:今井一+『国民投票の総て』制作普及委員会)
(既存の流通システムでは購入出来ません。)
『国民投票の総て』について
諸外国では国民投票で様々な重要なことが決められています。たとえばイギリスやフランス、オランダなどでは「EU」に関することで、スイス、イタリア、スウェーデンでは「原発」など。スイスは他にも「軍隊・徴兵制」や「移民政策」「体外受精」など多岐にわたるテーマで実施しており、イタリアやアイルランドでは「離婚」、「人工妊娠中絶」の合法化などについて国民投票が行われています。しかし、そのことについて詳しく知っている日本人はほとんどいません。国民投票を未だ経験したことがない私たちが、この制度を深く理解し賢く活用するためには、まず諸外国の事例についてつぶさに知る必要があります。
第1章では、国民投票とは何か、選挙とはどう違うのか。この制度にはどんな種類があるのか。日本でも、憲法以外のテーマを国民投票にかけることができるのかといったことについて解説しています。
第2章では、過去220 年余の間に世界中で行われた2500 件を超す国民投票の中から738 件の事例を[国名・年月日・テーマ・投票率・賛成率・反対率]を記した一覧表にし、短い解説を60 本ほど添えました。
第3章では、「国歌・国旗」「離婚の合法化」「軍隊廃止」など、諸外国で実施された興味深い13 の事例を詳しく紹介しています。
第4章では、執筆を担った今井一氏、大芝健太郎氏が、バルト3 国の独立、ソ連解体から英国のEU 離脱まで、国民投票の現場を生々しくリポートしています(実際の投票用紙や現地で撮影した写真を多数掲載)。
第5章では、国民投票制度を否定する人たちがよく引き合いに出す、ナチス・ドイツ、ヒトラー時代の国民投票を詳細に紹介し、それが国民投票と呼ぶには値しない紛いものであったことを明らかにしています。
第6章では、近い将来実施される可能性が高まっている憲法9 条に関する国民投票について、私たちはこれにどう向き合うべきなのか、どうすれば公平で水準の高い国民投票ができるのかについて解説しています。
本の目次(A5版×317ページ)
巻頭グラビア
「国民投票の現場から」(27点のカラー写真)
第1章 国民投票って何?
多くの人が国民投票の活用を求めている
国民投票って何?
日本で国民投票が行われない理由
第2章 実施一覧・解説と統計グラフ
世界中で行われた2500 件を超す国民投票の中から738 件の事例に関し
て[国名・年月日・テーマ・投票率・賛成率・反対率]を記した一覧表
第3 章 さまざまなテーマ、歴史的背景
国歌(オーストラリア)
国旗(ニュージーランド)
動物保護(スイス)
アルコール政策(ニュージーランド)
離婚の合法化(イタリア)
離婚の合法化(アイルランド)
人工妊娠中絶の合法化(アイルランド)
原発・エネルギー政策(スウェーデン)
原発・エネルギー政策(イタリア)
アフリカの人々の民族自決(フランス領の諸国)
アルジェリアの民族自決
独裁政権の承認(チリ)
「 共和制」か「君主制」か(イタリア王国)
軍隊廃止(スイス)
第4章 ルポルタージュ 国民投票
リトアニア、ラトヴィア、エストニアがソ連邦からの離脱・独立の是非を問う
ソ連邦存続の是非を問う国民投票
エリツィンが仕掛けたロシアの国民投票
スイス ─ 性犯罪者に関わる刑法の改正
リトアニア ─ 日立製の原発建設
スコットランド ─ イギリスからの独立
イギリス ─ EU に残留するか、離脱するか
第5章 ヒトラーが仕掛けた「国民投票」
前皇帝の私有財産の没収に関する国民投票
賠償金支払い案に関する国民投票
国際連盟脱退に関する「国民投票」
ヒトラーへの大統領権限の移譲に関する「国民投票」
ドイツ軍のラインラント進駐に関する「国民投票」
ドイツ・オーストリア合邦の是非を問う「国民投票」
第6章 「9条」国民投票にどう向き合うのか
解釈改憲に終止符を
国民投票の実態と効用
諮問型の3択国民投票を
国民投票のルール改善を
資料
あとがき
執筆者紹介、支援者、制作・普及委員会のメンバー