前々回でもリンクした東京新聞の記事。かなりよくまとめてあります。この記事の後半に「爪水虫」について書かれていますが、爪は白癬菌にとって、薬も届きにくいし組織に含まれる白癬菌の餌=ケラチンも多いし、爪の中に埋まってのんびり暮らせるってことで、確かに「安住の地」なんですよ。で、その結果何が起こるかというと、宿主である人間は
1)爪の見た目が悪くなる。
2)二次感染を起こして爪周囲のトラブルが甚大になる。
3)ひょうそ等々が生じて疼痛で歩けなくなったり、靴が履けなくなる、糖尿病を併発している場合には、脚の切断に至ってしまうケースも。
という末路になる。ちなみに、水虫の主症状である「痒み」は、これは白癬菌に対する自分の免疫反応の結果起こります。これだけなら、アトピーで痒い、というのとまったく同じメカニズムです。白癬菌の怖いところは、白癬菌が寄生した周囲に簡単に二次感染が起きてしまう点。特に足元は汚くなりやすいから、最初は白癬菌だけだったのに、白癬菌が食い荒らしたケラチンの隙間にすぐ別の細菌が感染を起こして話をややこしくする。糖尿病で症状が激烈になりやすいのは、細菌の餌になる糖分が血中や体液中に多いからどんどこ増える免疫も細菌の増殖ペースについていけない簡単に細菌が血液に乗ってしまって全身に回り、壊疽や敗血症を起こしやすくなるから。この時白癬菌はもうあまり関与していないのですが。
人間の爪はあんなに小さい、のにこれだもの。ちなみに、爪白癬は基本足の爪に起こります。しょっちゅう手洗いしている手の爪には白癬菌は、まず定着できないからです。
治療は?とにかく訳分らん民間療法では「奇跡」は起こりません。というか、いい薬が続々開発されているんだから、健康保険を使って皮膚科でサクッと治すのが正しい。爪水虫は、基本飲み薬を使います。現在の主流は3つ。
- テルビナフィンの長期連用
- イトラコナゾールのパルス治療
- ホスラブコナゾールの連用
このうち3)のホスラブコナゾールは2018年に認可されたばかりの新薬で、値段もスバラシイんですが、日本人には「健康保険」という凄いシステムがありますから、それを使えばそこそこの料金で行けるのではないでしょうか?実際のところは知らないんですが。
3)の治療は1)2)に比べるとかなり短期間で治療することが可能、だそうです。
そう、1)も2)もとにかく治療に時間がかかる。それが爪水虫を根治させない大きな原因らしい。おまけに、1)も2)も肝機能障害を起こす可能性があるとされてるので、毎月血液検査でチェックを入れることになっている。これがまた、患者の脱落を招くのだ。「めんどくさい」とうのは、本当に困った症状ですよね。心のね。でも、根性で半年~1年位頑張ると、爪水虫から解放される!!筈なんだから、がんばれよ~~。というか、大したことないじゃないですか、薬飲むだけなんだからさ。と思うんだけど。血液検査だって、保険使って健康チェックしてもらってるんだと考えれば、かなり「お得」な話、なんだけどなあ。人間ドックで血液検査、高いですから。
でも、「奇跡の民間療法」はなにかというと塗り薬で何とかしようとしますね。こっちの方がよほどめんどいと思うんだがな。多分「皮膚の病気に飲み薬って効かないような気がする」だの「副作用がありそうで不安」だの、こういう気分に付け込んでくるんでしょうけど。爪には白癬菌が埋まってる訳で、爪には薬なんかほぼ浸透しない、んだから、効きっこない。金の無駄です。
埋まってる白癬菌が更に爪に浸潤しないように飲み薬で抑え込む、のが飲み薬がやっていることです。爪自体はすでに死んでいる組織だから免疫もへったくれもない、一回白癬菌に侵入された爪が脱落するまで白癬菌はそのまま居ついてます。だから、爪が完全に生え変わるまで、飲み続けなくちゃならない、のが時間がかかる理由です。ホスラブコナゾールの優れた点は、爪組織への移行性が極めて高く、爪に居ついている白癬菌にアタックしてくれることです。従来の飲み薬にはそこまでのパワーはないから、のんびりやっていくしかない。
肝機能障害については、あらかじめ分かってる、というのがポイントで、だから、先手を打って血液検査しましょう、という事なんですね。分かっている副作用というのは非常に安全レベルが高い。予見できない副作用が一番怖いんだけど、特に日本で販売されている薬に、そういうのはまずない、と言っていい。だから、不安感って本当に「気分」に過ぎない、というのは押さえておくべきことだと思います。