『クロ』と、名付けた野良君です。
昨年の秋頃から、時々我が家の庭を通り過ぎる雄猫が現れるようになりました。
我が家では、『クロ』と、名付けましたが、我が家で最初にクロを見つけたのは、猫の「幸」でした。
クロは、我が家のリビングルームの前に、毎日午前11時頃、決まったように現れて、通り過ぎる時、窓の前で数秒間立ち止まり、部屋の中をジッと見て、また、何食わぬ顔で行ってしまうのです。幸は、そのクロの行動を見て、部屋の中から「フー」と、軽く威嚇をします。
こんな、毎日が続くようになってしばらくすると、外の景色は、すっかり冬の様相になりました。
そして、山に降り注ぐ雪が、空っ風に乗って飛んで来る日も出て来ました。
クロは、毎日、我が家のリビングルームの前に、ほとんど同じ時刻に現れて、チョコンと立ち止まり、また、歩いて行きます。
平成29年の12月25日の昼は、クロは現れませんでした。
私や私の妻も、そして私の家族は、クロの現れなかったこの日、とても心配をしました。
そして、次の日の昼もクロは、やって来ません。
私達は、なぜクロが来なくなってしまったのか、その日の夜、皆で話し合いました。「交通事故で……」「毒でも……」等々、悪い事ばかり考えてしまいます。
27日の昼、部屋の中にいた幸が騒ぎ始めました。クロです。クロが窓の外でこちらを向いてチョコンと立ち止まっています。
でも、その姿があまりにも可哀想な姿だったのです。
右目の上辺りの毛が剥がれ、そこからは血が出ています。耳も傷ついています。私は妻と二人で、クロを驚かせないように、ゆっくりと玄関から外に出て、クロの様子を見ようとしましたが、クロは、驚いたのか、逃げて行ってしまいました。きっと、傷ついた体で弱っているはずなのに、それでも全力で逃げたのだと思います。
その日は、クロの事が心配で仕方がありませんでした。
その日の家族の会話は、クロの話ばかりでした。
翌日は、クロが現れる時刻よりも早く、菊千代と幸の餌を、リビングルームの外に置いておきました。
案の定、クロが現れました。
クロは、餌に気が付き、周りを気にしながら、その餌を食べましたが、郵便配達の人の足音で、直ぐに逃げて行ってしまいました。私達は、私達が用意した餌をクロが半分近く食べられた事が確認出来て、ちょっと安心しました。
その翌日もクロは、現れました。もちろん、私達の用意した餌を食べてから、その場を立ち去って行きました。
平成30年になり、今では、私達には気を許す時もあり、私の手で、クロの体を撫でられるようになってきましたが、それでも、日によっては、近づくと逃げてしまう時もあります。
ごらんのように、クロのオデコの傷は、まだ完全には治ってはいません。
おそらくクロは、誰か心無い人間に傷つけられたのかも知れません。もしそうだとすれば、とても許しがたい行為です。
クロを自宅に招き入れ、菊千代と幸と一緒に暮らさせたいと言う気持ちもあるのですが、幸を拾い上げた時から、菊千代の様子がおかしくなってしまった現実を考えてると、3匹は無理だという結論に達し、これからも、クロに関しては、毎日、食事の用意をしてあげる、と、言う事にしたのです。