新しい店がオープンしても長く続かず、次々と店が入れ替わるテナントがあります。
長くて2年、短いと3ヶ月くらいで閉店して、再び新しいテナントが入ります。
そういう点では回転が良い物件ですが、どうして入居するテナントが長続きしないのか、そういう
要因を探ってみると面白いことが分ります。
Y字路の尖り物件で、両方の道から入店できる便利さが売りの物件なので小売店が入りますが、
どんな小売店が入っても、客の滞留時間が少なくて、実際には道の両側から客は入りません。
交差点の角にある飲食店向きの物件には、ラーメン屋が頻繁に入れ替わります。
味は良いですが、どんなラーメン屋が入っても長続きしません。
交差点を背にして、いつも人の視線を気にしながら食べるので、落ち着かないのでしょうか。
入居する経営者が、客の視点で物件を判別できない点に問題があるようにも思います。
休日に、居ぬきになった物件や閉店セールを打ち出した店を見て回るのは、よい勉強になります。
美味しい料理が食べられる店がありますが、ある日行ってみると、客で賑わっていて、いつも使っている部屋ではなく、厨房が見えるテーブル席に通されました。毎度の通り料理を注文しましたが、日頃は目にしない厨房が目に映り、予想外に(予想をはるかに超えて)厨房が汚かったので驚きました。焼き場のコンロには焦げた煮汁痕、床にはゴミ、包丁の柄元はサビ、食器が雑然と積み上げられていました。「もう来る店じゃないなぁ」と思って、最初に頼んだ料理以外には注文せずに店を後にしました。皿に盛られた料理は美味しくて、料理のレベルも程ほどで、値段も安かったから馴染みにしていましたが、店の裏方を見て、一挙に思いが冷めてしまいました。料理人の心構えや、料理を作る環境が整然としていて、その上に食材と料理人の腕があって、「美味しい」があるものと思っていましたが、なぜか足元を掬われたような感じがしました。