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『閉じた本』 ギルバート・アデア (著),青木純子 (翻訳)

2018年04月23日 20時47分00秒 | ■読書
イギリスの作家「ギルバート・アデア」の長篇ミステリ作品『閉じた本(原題:A Closed Book)』を読みました。


「ディック・フランシス」「フェリックス・フランシス」との父子共著含む)、「ミネット・ウォルターズ」「サマンサ・ヘイズ」に続きイギリスのミステリ作品です。

-----story-------------
事故で眼球を失った大作家「ポール」は、世間と隔絶した生活を送っていた。
ある日彼は自伝執筆のため、口述筆記の助手として青年「ジョン」を雇い入れる。
執筆は順調に進むが、ささいなきっかけから「ポール」は恐怖を覚え始める。
「ジョン」の言葉を通して知る世界の姿は、果たして真実なのか? 
何かがおかしい……。
彼の正体は? 
そしてやって来る驚愕の結末。
ただの会話が、なぜこれほど怖いのか。
会話と独白のみで綴られた、緊迫の異色ミステリ。
訳者あとがき=「青木純子」/解説=「村上貴史」
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もっぱら声や音を頼りに日々を送る盲人「ポール」が主人公のサスペンス小説… 情景や登場人物の動作を描写する文章は一切なく、登場人物の会話と主人公の独白のみで物語が進行するという特異な叙述スタイルで描かれた作品、、、

昔懐かしいラジオドラマを聞いているような感じ… 読者も盲目の「ポール」と同じ状況下に置かれているので、「ポール」と同様に虚実入り乱れた事象に翻弄されながら、そして、もどかしさや猜疑心を感じながら読み進めるという、不思議な感覚を持った作品でしたね。


ブッカー賞も受賞した経歴を持つイギリス人作家の「ポール」は、旅先のスリランカで交通事故に遭い、失明し両方の眼球を摘出した… それから4年、「ポール」は、イギリスの田舎で隠遁生活を送っていたが、ついに沈黙を破り、新聞に自伝執筆のための口述筆記者募集の広告を出す、、、

ある日、通いの家政婦「ミセス・キルブライド」と二人きりの「ポール」の屋敷に、「ジョン・ライダー」と名乗る青年がやってくる… 広告を見て応募しにきたという「ジョン」は、「ポール」の辛らつな面接を飄々とかわして採用される。

「ジョン」「ポール」の二人は、協力して執筆を進めていく… 「ジョン」は、見るも無惨な「ポール」の顔にもひるまず、彼に尽くし、新しい世界を伝えてくれるが、些細なことから物語は一変、、、

「ポール」「ジョン」に対して恐怖を覚え始め、「ポール」に、ある疑惑が生まれます ――「ジョン」が伝える言葉は、果たして真実なのだろうか?

「ジョン」の口から出る言葉を文字通り受け取ることができなくなっていく「ポール」(と読者)… 信じたい気持ちと信じがたい気持ちに揺さぶられつつ、じんわりと忍び寄る恐怖、、、

「ポール」(と読者)の疑心暗鬼にかられた末の思いこみなのか? そもそも、「ジョン」が応募してきた理由は何だったのか? 「ジョン」の真意は? いったい「ジョン」とは何者なのか?

物語が進むにつれて、徐々に増していく疑念と緊迫感と、ラストに待ち受ける驚愕の真相… ある程度は、想定できる展開でしたが、結末そのものよりも、「ポール」の不安やもどかしさ、猜疑心や恐怖を、「ポール」と同じ立場で感じることを愉しめた作品でした、、、

好き/嫌いがはっきりする作品かもしれませんが、個人的には好きなジャンルに分類できる作品でした… 古書店で30円でしたからね、コスパもむっちゃ高かったですね。



以下、主な登場人物です。

「ポール」
 盲目の大作家

「ジョン・ライダー」
 ポールの助手

「ミセス・キルブライド」
 通いの家政婦



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