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『江戸川乱歩短篇集』 江戸川乱歩(著), 千葉俊二(編集)

2015年10月22日 23時10分00秒 | ■読書
「江戸川乱歩」の短篇集『江戸川乱歩短篇集』を読みました。


先日、NHKの番組で『二十の顔を持つ男~没後50年・知られざる江戸川乱歩~』を観て、久しぶりに「江戸川乱歩」作品を読みたくなったんですよね。


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大正末期、大震災直後の東京にひとりの異才が登場、卓抜な着想、緻密な構成、巧みな語り口で読者をひきこむ優れた短篇を次々と発表していった。
日本文学に探偵小説の分野を開拓し普及させた「江戸川乱歩」(1894‐1965)の、デビュー作『二銭銅貨』をはじめ『心理試験』 『押絵と旅する男』など代表作12篇を収録。
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「江戸川乱歩」作品は2008年に読んだ江戸川乱歩傑作選以来なので7年振り、、、

本書には以下の12篇が収録されています。

 ■二銭銅貨
 ■D坂の殺人事件
 ■心理試験
 ■白昼夢
 ■屋根裏の散歩者
 ■人間椅子
 ■火星の運河
 ■お勢登場
 ■鏡地獄
 ■木馬は廻る
 ■押絵と旅する男
 ■目羅博士の不思議な犯罪
 ■解説 乱歩登場 千葉俊二


『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』『心理試験』『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『鏡地獄』の6篇は江戸川乱歩傑作選にも収録されていましたが、、、

さすがに7年前に読んだ作品… 断片的にしか記憶に残っていなかったので、十分愉しめました。



『二銭銅貨』は、二銭銅貨の中に隠されていた「南無阿弥陀仏」の暗号を解くまでの展開も愉しめますが、、、

泥棒紳士が隠した大金が手に入ると期待させておいて、おもちゃの紙幣しか手に入らない… という、最後のどんでん返しが愉しめましたね。



『D坂の殺人事件』は、名探偵「明智小五郎」の初登場作品、、、

密室っぽい殺人の謎解きと「明智小五郎」が犯人と疑われる展開が面白かった… 殺された古本屋の細君の身体に残された傷跡が推理のヒントになっています。

真相は、ちょっと倒錯的な内容で「江戸川乱歩」っぽさを感じさせられますね。


『心理試験』は、心理試験により殺人犯を特定しようとする判事と容疑者の駆け引きが愉しめる作品、、、

心理試験の裏の裏を行こうとした真犯人… 「明智小五郎」は、更にその裏をかいて真相を暴きます。

殺害実行時についた屏風の傷が命取りになりましたね。



『白昼夢』は、見物人を前に自分は妻を愛していたが、妻が浮気者だったために、殺して死骸を5つに切り刻んだと証言する男の物語、、、

見物人は狂言だと思い笑いながら聞いているが、男の経営する薬屋には女の屍が… ゾクっとするエンディングでした。



『屋根裏の散歩者』は、犯罪に心惹かれる男「郷田三良」は、下宿の屋根裏を這い回って、隠された他人の生活を覗き見するうちに気に入らない下宿人の殺人を思い立ち、自殺にみせかけて殺人を犯す、、、

倒錯者による完全犯罪を狙った事件ですが… 自殺したと思われた下宿人が翌日の朝、目覚まし時計をセットしてことから「明智小五郎」は他殺ではないかとの疑いをもち、「郷田三良」の無意識な行動の変化から真相に気付きます。

相変わらず見事な推理でしたね。



『人間椅子』は、小説家「佳子」のもとに届いた謎の手紙にまつわる物語、、、

自身のことを世にも醜い容貌を持つ椅子職人と紹介する手紙の送り主は、自分の作った椅子の中に自分が入り込める空間を作ることを思い付き、それを実行に移したところ、自分の入り込んだ椅子の上に他人が座ることに倒錯的な喜びを感じていることが告白されていた… そして、その椅子は「佳子」の愛用している椅子だった。

いやぁ… このオチには巧く騙されましたね。



『火星の運河』は、幻想的な世界(音もなく暗い森、油のようにトロリとした液体で満たされた沼)を彷徨う男を描いた物語、、、

うーん… ちょっと理解できませんでしたね。

最後に著者から「片々たる拙文、何とも申訳ありません。一言読者の寛恕を乞う次第です。」とのお詫び文付きでした。



『お勢登場』は、悪女「おせい」が偶然を利用して夫「恪太郎」を殺める物語、、、

「恪太郎」は、子どもたちとかくれんぼをしていて、自らが隠れた押入れの中の長持に閉じ込められ窒息死寸前… そこに不倫相手との密会から戻ってきた「おせい」は、助けを求め大声をあげる「恪太郎」に気付き、一度は長持を開けたものの、咄嗟に悪事を思い付き、再度、長持を閉じてしまう。

いやぁ… 怖いなぁ、、、

一瞬助かったと思った後に、再度、閉じ込められて窒息死した「恪太郎」の無念さは想像できないですね。

そして、犯罪は暴かれないままエンディングを迎えます… 最後に(附記)として、

「他日明智小五郎対北村お勢の、世にも奇妙なる争闘譚をお目にかけることが出来るかもしれない」

と続篇を期待させるひと言が記述されていました。

続篇は存在するのかなぁ… 気になります。



『鏡地獄』は、物の姿の映る物(ガラスやレンズ、鏡 等)に異常な執着を見せる男の物語、、、

両親が亡くなり、莫大な遺産を相続した彼は、自分の趣味の研究に財産をつぎ込み、望遠鏡で他人の家を覗いたり、顕微鏡で微生物を観察したり、上下左右すべて鏡でできた鏡の部屋を建設して中に閉じ籠り、小間使いの娘を連れ込んで遊んだりという生活を続ける… うーん、何度読んでも好きになれない作品ですね。

登場人物に感情移入できないからだろうなぁ。



『木馬は廻る』は、メリーゴーランドのある木馬館で働く50歳を越えたラッパ吹きの「格二郎」と、「格二郎」が淡い恋心を抱いているメリーゴーランドの女車掌(切符切り)の18歳の少女「お冬」の物語、、、

メリーゴーランドに乗っていた若者が「お冬」のポケットに封筒を入れたのを目撃した「格二郎」は、恋文だと思い、「お冬」が気付かないうちに、その封筒を「お冬」のポケットから奪います… なんと、その中には現金が。

ここまでの展開は、今後、どうなるんだろう… と期待させるのですが、、、

その現金を使って、「格二郎」が仲間に奢ってやるところでエンディング… 中途半端感だけが残る作品でした。



『押絵と旅する男』は、ある男が、たまたま汽車で乗り合わせた西洋の魔術師のような風采の男から、彼の持つ押絵細工にまつわる不思議な逸話を聞くという物語、、、

押絵の少女に憧れる兄が、自ら押絵となってしまう… という、世にも奇妙な物語系の展開でしたね。

ぞくっ… とさせられる作品でした。



『目羅博士の不思議な犯罪』は、探偵小説の筋を考えるために、浅草や上野あたりを散策していた私(「乱歩」のようです…)の前に、髪を長く延ばした、青白い顔の青年が現れ、月夜に住人が首吊自殺してしまう、あるビルの部屋の話を聞くという物語、、、

その原因は… 裏側に隣接する全く同じ形のビルから、「目羅博士」という医学博士が行っていたある行動だった。

幻想的な殺人ですが… うーん、そんなに都合良く行くもんですかね、、、

ブラックなファンタジーという感じかな。



読み終えて感じたのは「江戸川乱歩」作品って、好みの作品とそうじゃない作品に大きく分かれるってことですねぇ、、、

執筆された当時、奇抜な発想や斬新な発想で作品を創造し、探偵小説の地位を築いたという意味では尊敬できる作家だし、本作品に収録された短篇も興味深い作品ばかりなのですが、リアリティを感じられない作品には、どうも入り込めないんですよね。





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