じゅうのblog

こちらでボチボチ更新していく予定です。

『北京から来た男〈上〉〈下〉』 ヘニング・マンケル(著), 柳沢由実子(翻訳)

2018年03月19日 21時47分00秒 | ■読書
スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『北京から来た男(原題:Kinesen)』を読みました。


目くらましの道背後の足音タンゴステップに続き「ヘニング・マンケル」作品です… 読み始めると北欧ミステリは続いちゃいますね。

-----story-------------
〈上〉
凍てつくような寒さの早朝、スウェーデンの中部の小さな谷間でその惨劇は起きた。
村のほぼ全ての家の住民が惨殺されていたのだ。
ほとんどが老人ばかりの過疎の村が、なぜ? 
女性裁判官「ビルギッタ」は、亡くなった母親がその村の出身であったことを知り、現場に向かう。
現場に落ちていた赤いリボン、ホテルの防犯ビデオに映っていた謎の人影。
事件は「ビルギッタ」を世界の反対側へと導く。
北欧ミステリの帝王「ヘニング・マンケル」渾身の大作。

〈下〉
殺人現場の家を訪れた「ビルギッタ」は、刑事の目を盗み数冊のノートを持ち出した。
ノートに記されたネヴァダの文字。
それはスウェーデンの寒村で起きたのと似た血塗られた事件が起きた土地だった。
手記は一八六〇年代、アメリカ大陸横断鉄道の建設の現場主任のものだった。
十九世紀の中国の寒村、鉄道建設に沸く開拓時代のアメリカ、そして発展著しい現代の中国、アフリカ。
現代の予言者「ヘニング・マンケル」による、ミステリを超えた金字塔的大作。
訳者あとがき=「柳沢由実子」

*第10位『このミステリーがすごい!2015年版』海外編
-----------------------

「ヘニング・マンケル」作品ですが、代表作の警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズではなく、タンゴステップに続きノンシリーズモノです… 時代が2006年(平成18年)から、1863年(江戸時代末期の文久3年)まで飛び、舞台はスウェーデンの片田舎から、デンマーク、イギリス、中国、アメリカ、ジンバブエ、モザンビークと世界各国に亘っており、とてもスケールの大きな作品に仕上がっていましたね。

 ■第一部 静寂(二〇〇六年)
  ・墓に刻まれた言葉
  ・裁判官
 ■第二部 "ニガー&チンク"
  ・広東への道
  ・羽根と石
 ■第三部 赤いリボン(二〇〇六年)
  ・反逆者たち
  ・中国将棋(ザ・チャイニーズ・ゲーム)
 ■第四部 入植者たち(二〇〇六年)
  ・象に剥かれた樹皮
  ・ロンドンのチャイナタウン
 ■エピローグ
 ■著者あとがき
 ■訳者あとがき 柳沢由実子


2006年スウェーデンの中部ヘルシングランド地方の小さな谷間の村に足を踏み入れた写真家「カルステン・フグリーン」は、信じられない光景を目撃した… 凍てつくような寒さ早朝、村のほぼ全ての家の住民が惨殺されていたのだ、、、

10軒の家に残された19の遺体… スウェーデン犯罪史上最悪の犯罪だったが、なぜ、ほとんどが老人ばかりの過疎の村で、このような惨たらしい事件が起きたのか?

体調を崩し休暇中だったヘルシングボリの女性裁判官「ビルギッタ・ロスリン」は、亡くなった自分の母親が事件の村の出身で、母親の養父母が被害者であったことを知り、ひとり現場に向かう、、、

亡くなった母が幼少時を過ごしていたという、殺人現場の家を訪れた「ビルギッタ」は、捜査を指揮する警察官「ヴィヴィ・スンドベリ」の目を盗みタンスの中から古い手記等を持ち出した… それには100年以上前に、「J・A(ヤン=アウグスト・アンドレン)」という男が、アメリカのネヴァダ州でアメリカ大陸横断鉄道の建設に現場監督として携わったこと等が記録されていた。

ネヴァダで、スウェーデンの寒村で起きた血塗られた事件と類似した事件が起きていたことに気付いた「ビルギッタ」は、その手記等や現場に落ちていた赤いリボンをもとに独自の捜査を行い、犯人は中国人であると推理する。

ここで、物語は1863年の中国・グァンシー自治区に飛ぶ… 「ワン・サン」は、広東で拉致された後、アメリカに送られてネヴァダ州でアメリカ大陸横断鉄道の仕事に従事させられた、、、

現場監督の「J・A」はスウェーデンから来た白人で、中国人や黒人たちを見下し、「チンク」「ニガー」と呼んで奴隷のようにこき使った… 虐待と過酷な労働と劣悪な生活環境に耐え兼ねて、多くの作業者が命を落としていっが「ワン」は生き残って、中国に舞い戻り、ネヴァダ州でのアメリカ大陸横断鉄道建設現場の過酷な日々を日記として書き遺していた。

そして、物語は、2006年の北京に戻る… 「ワン」の子孫で企業経営者の「ヤ・ルー」は、日記に綴られた「ワン」の怨念を晴らすため「J・A」の子孫等への復讐を誓っていた、、、

中国は貧富の格差が急速に広がりつつあり、かつての「毛沢東」革命のような革命がいつ起きても不思議ではない状況に置かれていた… 「ルー」は中国政府の政策に影響を及ぼすほどの影の実力者となっており、膨大な人口を減らし頻発する人民暴動を鎮静させる奇策としてアフリカへの移民を政府に提案していた。

そして、ルーが同行する調査団は、アフリカのジンバブエ、モザンビークへ向かう… その頃、「ビルギッタ」は学生時代からの友人で中国研究科の「カーリン・ヴィーマン」に誘われ北京に向かっていた、、、

二人は、大学生の頃、革命を信じ「毛沢東」に心酔していたのだ… こうして、「ビルギッタ」は事件の渦中に自ら飛び込んで行くことになる。

「ルー」は、意見が合わない姉の「ホンクィ」が、計画の実行の障害になると考え、モザンビークで交通事故に見せかけて殺害… さらに「ルー」は、北京で「ホンクィ」との交流があった「ビルギッタ」が事件の真相に気付き始めたことを知り、「ビルギッタ」を抹殺するためにスウェーデンに向かう、、、

「ビルギッタ」は、「ルー」が自分の命を狙っていることを知り、ロンドンへ逃亡… 「ホンクィ」の死を伝えてくれた、「ホンクィ」のいとこ「ホー」に助けを求める。

しかし、「ルー」「ビルギッタ」の動きを察知し、ロンドンに移動してチャンスを待っていた… いやぁ、終盤はドキドキハラハラの展開で、「ビルギッタ」は助からないと思っちゃいましたね、、、

「ホー」や、b>「ホンクィ」の息子「サン」の存在がなければ助からなかったでしょうねぇ… 面白かったのですが、事件の遠因となる100年以上前のエピソードや、現代中国の発展における歴史や思想が語られる部分のボリュームが大きくて、ちょっと、もたつきながら読んだ感じでした。

もう少し、シンプルでも良かったかなぁ… という印象が残りました、、、

あと、アメリカにおける過去のエピソードが事件の遠因となっている展開は、「コナン・ドイル」「シャーロック・ホームズ」シリーズの処女作『緋色の研究(原題:A Study in Scarlet)』を思い起こさせる作品でしたね。

そして、主人公の「ビルギッタ」って、、、

体調を崩して休暇を取得した際に事件に巻き込まれたり、そのきっかけは自分の知人が被害者となった僻地での事件だったり、夫婦(恋人)の仲に何か問題を抱えていたり… と、性別は違うもののタンゴステップの主人公「ヘルベルト・モリーン」と似たような印象を受けました。



以下、主な登場人物です。

「ビルギッタ・ロスリン」
 ヘルシングボリの裁判官

「スタファン」
 ビルギッタの夫

「ハンス・マッツソン」
 ビルギッタの上司

「カーリン・ヴィーマン」
 ビルギッタの友人

「ビューゴ・マルムベリ」
 ヘルシングボリ警察の警視

「カルステン・フグリーン」
 写真家

「ヴィヴィ・スンドベリ」
 ビューディクスヴァル警察署の警察官

「エリック・ヒュッデン」
 ビューディクスヴァル警察署の警察官

「レイフ・イッテルストルム」
 ビューディクスヴァル警察署の警察官

「トビアス・ルドヴィグ」
 ビューディクスヴァル警察署の署長

「ステン・ロベルトソン」
 検事

「トム・ハンソン」
 ヘッシュヴァーレンの村人

「ニンニ」
 トムの妻

「ユリア・ホルムグレン」
 ヘッシュヴァーレンの村人

「ラーシュ・エマニュエルソン」
 レポーター

「スツーレ・ヘルマンソン」
 ホテル・エデンのオーナー

「ラーシュ=エリック・バルフリンドソン」
 爆発掘削会社の従業員

「ワン・サン」
 グァンシー自治区出身の男

「グオシー」
 サンの兄

「ウー」
 サンの弟

「ワン」
 ネヴァダ州の鉄道敷設工事現場の監督

「J・A(ヤン=アウグスト・アンドレン)」
 ネヴァダ州の鉄道敷設工事現場の監督

「エリィストランド」
 キリスト教宣教師

「ロディーン」
 キリスト教宣教師

「ルオ・キー」
 キリスト教布教所の使用人

「ヤ・ルー」
 企業経営者

「ホンクィ」
 ヤ・ルーの姉

「シェン夫人」
 ヤ・ルーの秘書

「リュー・シン」
 ヤ・ルーのボディガード

「シェン・ウェイシエン」
 請負業者

「マ・リー」
 ホンクィの友人

「ホー」
 ホンクィのいとこ

「サン」
 ホンクィの息子



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新デザイン… カープチューハ... | トップ | 『ラグビー日本代表ヘッドコ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

■読書」カテゴリの最新記事