Action is my middle name ~かいなってぃーのMorrisseyブログ

かいなってぃーのMorrissey・The Smithsに関するよしなしごと。

Pretty Girls Make Graves

2024-10-25 18:13:58 | ザ・スミス全歌詞
Pretty Girls Make Graves
“The Smiths”(1984)収録
 
ファーストの4曲目。
かわいい女は墓を建てる。ザ・スミス初期の歌には、ガツガツ性的に関係を進めようとする女が出てくる。「欲望に負けるのよ!」なんて迫られたら、モリッシーでなくても怖くて萎えそうだが、それは性欲というよりは、男を捕まえてとっとと結婚したいという、20世紀的典型的捕獲女しぐさだ。それは日本でもあるあるだが英国でもあるあるだった。
 
この女がせっせと建てている墓は、ある愛の関係を葬るため。もしこの女の捕獲行動がうまくいっても「結婚」という墓が立つ?(「結婚は人生の墓場」という、出典があやふやな言い回しがあるが(ボードレールが言ったことが誤訳された説もあるがそれも嘘らしい)、まさにこの言葉にも通ずる)
 
モリッシーはこの歌で、「結婚のために捕まるなんてやだね、俺は自由でいたい」と言っているのではなく、ステレオタイプの性役割にモノを申している。性役割とは性別に基づいて社会的、文化的に適切または望ましいとみなされる役割や態度や属性、行動などを期待されることだ。
 
昨今はジェンダー平等コンシャスな社会になったが、20世紀は男女ともに、負わされた性的役割に過剰適応したり、そこから生まれる陳腐な関係性に疑問も持ったりしていなかった。だからこの歌の主人公も
 
僕は荒々しく自由になれたかもしれない
でも持ち前の性分が僕にこんな仕打ちをした
 
と、ちょっと積極的な女に申し訳な気なことを言っている。これは本当にモリッシーが「僕は繊細でナヨナヨしてるから、君と荒々しくセックスできなくてごめんね」と思っているわけではない。反語的な性役割批判である。
 
英国人は、パロディーとか皮肉、寓話好きであるがモリッシーが詩人としてすごいのは、ロックの歌詞でこれをやっているところである。世界的にも、世の中がジェンダー平等コンシャスになってきたのなんて、ここ20年弱のことだ。それを約40年も前の80年代、マチズモやお色気旋風がびゅんびゅん巻き起こってるロックの世界でやっているのである。
 
先日、この歌とは正反対で、マチズモ、男性優位ご都合主義あふれる、シブがき隊の歌詞を分析してXに書いた。2024年の社会で通用しないものである。現代に、そうやって過去の歌の歌詞を分析すると、ジェンダー認識のズレや違和を感じて、大変興味深い。
 
80年代は「授業中に手を挙げて俺を好きだってもし言えたら抱いてやるぜ~」と歌われて、テレビに向かって何の疑問もなく「ホントー!?」と合いの手掛け声を入れていた小学生であった。今書いてて気づいたけど、この"Pretty Girls Make Graves"("Suffer Little Children"にも参加)のゲストボーカルAnnalisa Jablonskaもこの歌の途中で「ホントー!?」(oh really?)と合いの手を入れている。
 
授業中に手を挙げてコクって抱かれるのはホントじゃないが、かわいい女がひとつの関係の死骸を埋める墓を建ててるのはホント。
 
 
かわいい女は墓を建てる

砂の上、湾の上
「速くて簡単な方法があるの」と君は言う
君が説明する前に
言った方がいいかな
僕は、君が思ってるような男じゃない
僕は、君が思ってるような男じゃない

悲しみの落とし子
誰にも笑顔を見せない奴だ
そしてかわいい女は墓を建てる

ああ、ああ…

桟橋の端、湾の端
君は僕の腕を引っ張って言う
欲望に負けるの、欲望に
ああ、私たちすぐに塵になっちゃうんだから
僕は、君が思ってるような男じゃない
僕は、君が思ってるような男じゃない

悲しみの落とし子
誰のためにも立ち上がらない
そしてかわいい女の子は墓を建てる(え、ホントー?)

僕は荒々しく自由になれたかもしれない
でも持ち前の性分が僕にこんな仕打ちをした
彼女は今、欲しいんだ、待ってはくれはしない
彼女は激し過ぎるし、僕は繊細過ぎる
そして、砂の上で、別の男が、彼女の手を取る
彼女の愚かな顔に笑顔が浮かぶけど、まあ当然だ
僕は女に対する信頼を失った、女に対する信頼を
信頼を失った

 

Pretty Girls Make Graves

Upon the sand, upon the bay
"There is a quick and easy way" you say
Before you illustrate
I'd rather state
I'm not the man you think I am
I'm not the man you think I am

And sorrow's native son
He will not smile for anyone
And pretty girls make graves

Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh
Oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh

End of the pier, end of the bay
You tug my arm, and say
"Give in to lust, give up to lust
Oh, heaven knows we'll soon be dust"
Oh, I'm not the man you think I am
I'm not the man you think I am

And sorrow's native son
He will not rise for anyone
And pretty girls make graves (oh really?)

I could have been wild and I could have been free
But nature played this trick on me
She wants it now
And she will not wait
But she's too rough and I'm too delicate
Then, on the sand, another man, he takes her hand
A smile lights up her stupid face, and well, it would
I lost my faith in womanhood, I lost my faith in womanhood
I lost my faith

Oh-oh-oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh
Oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh
Hand in glove
The sun shines out of our behinds
Oh-oh, oh-oh


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You've Got Everything Now

2024-10-25 15:08:15 | ザ・スミス全歌詞
You've Got Everything Now 
“The Smiths”(1984)収録
 
ファーストの2曲目。
1983年、モリッシーが初めて受けたBBCラジオ1のDJデヴィッド・ジェンセンのラジオのインタビュー。
 
Morrissey - David Jensen Interview - BBC Session 26th June 1983
 
このインタビュー(ジョニーとの出会いなんかも語ってて初々しい)でこの歌に関して(上記音声10:00くらい)、
 
「これは学生だった頃の思い出。学校にいた頃自分はかなり進んでいた。卒業後、同級生の本当にバカな奴らは皆、ものすごい進歩を遂げていて、驚くほど大きな車とたくさんの金を持っているように見えた。私は決して来ないバスを常に待っているようだった。自分には頭脳はあっても、他には何もない感じに思った」
 
と、語っている。モリッシーの学校への恨みはすさまじい、教師、アホな同級生、石のようにまずい給食、そして灰色の校舎、建造物にまで及んでいる。そんなところで、モリッシーは頭は良く物知り、足も速い長距離走選手だったため、いわゆるスクールカースト上組ではないが「イケている」方であった。上記インタビューでも、「自分はかなり進んでいた」という自負があるので驚いた。しかも、「自分には頭脳はあっても」って威張ってるし…。
 
しかし、卒業後に職につかなかったために、下に見ていた奴らにどんどん負けていく。みんな自分より金持ちで、なんでも手に入れているように見える。しかしこの歌は石川啄木的「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ…」という悲嘆ではない。

「君が笑うのを見たことがある でも笑い声は聞いたことはない」
「じゃあ誰が金持ちで誰が貧乏? 僕には言えない」

と、思いっきり「おまえらいい気になんなよ」ソングである。このザコいシャバぞうども、「今、すべてを手に入れた」という物質的裕福さが、人生の勝ち負けを決めないのだ!イキんじゃねえぞと宣戦布告している。

モリッシーの「成功」に対する執着はすごいものである。あれほど凄い人なのだから、わが道を行きそうじゃん?ところがどっこい、常に他者を相対評価の対象とし、こだわり、その成功をとことん呪う。学校時代のバカ連中なんて、自分は夢が叶ってミュージシャンになったんだから放っておけばいいのに。「君の車の後ろに繋がれてるところを見られたい」ってどんだけ嫌味やねん。

昔聞いた時は、ちょっと緊縛的な、セクシャルな表現なのかと思ったけど、この車って、おバカ同級生が成功して買った驚くほど大きな車のことを指し、ド級の「嫌がらせ」を意味しているのではないか?モリッシーが後ろに繋がれてたら高級車も台無し…。

自伝では、友達だったア・サーテン・レイシオのサイモン・トッピングがNMEの表紙になったのを見て「1000回悲嘆死して森の中に横たわり絶命しようと思った」と書いており、1992年には“We Hate It When Our Friends Become Successful”という歌にまでしている。

1000回悲嘆死(苦笑笑)。私もよく人に大げさといわれるが、モリッシーの「盛り」にはかなわない。

 
君は今、すべてを手に入れた

楽しかったあの頃
僕は正しくて、君は間違ってた

古い灰色の学校を振り返れば
僕が勝ってて、君は負けたんだろう

でも君は今、すべてを手に入れた
君は今、すべてを手に入れている
そして僕は、人生をめちゃくちゃにしてしまった
ああ、僕の人生はなんてめちゃくちゃになったんだ

仕事になんて就いたことがない
だって、欲しくなかったから
君が笑うのを見たことがある
でも笑い声は聞いたことはない

じゃあ誰が金持ちで誰が貧乏?
僕には言えない

お母さんのひとり息子で必死野郎
でも僕は恋人が欲しいわけじゃない
ただ、君の車の後ろに繋がれてるところを見られたい

悲しく失われた友情?
うーん、あってるけど間違ってる
とこところで、僕は言ったことあるかな
君の顔は好きじゃなかった
でも君は今、すべてを手に入れた
君は今、すべてを手に入れている
そして僕は、人生をめちゃくちゃにしてしまった
ああ、僕の人生はなんてめちゃくちゃになったんだ

仕事になんて就いたことがない
だって、シャイすぎるから
君が笑うのを見たことがある
でも笑い声は聞いたことはない

じゃあ誰が金持ちで誰が貧乏?
僕には言えない

お母さんのひとり息子で必死野郎
でも僕は恋人が欲しいわけじゃない
ただ、君の車の後ろに繋がれてるところを見られたい
君の車の後ろに…
君の車の後ろに…

 

You've Got Everything Now

As merry as the days were long
I was right and you were long
back at the old grey school
I would win and you would lose

But you've got everything now
you've got everything now
and what a terrible mess I've made of my life
oh what a mess I've made of my life

No, I've never had a job
because I've never wanted one
I've seen you smile
but I've never really heard you laugh
so who is rich and who is poor?
I cannot say...

You are your Mother's only son
and you're a desperate one
but I don't want a lover
I just want to be seen
in the back of your car

A friendship sadly lost?
well, this is true
and yet, it's false
but did I ever tell you, by the way
I never did like your face

But you've got everything now
you've got everything now
and what a terrible mess I've made of my life
oh what a mess I've made of my life

No, I've never had a job
because I'm too shy
I've seen you smile
but I've never really heard you laugh
so who is rich and who is poor?
I cannot say...

You are your Mother's only son
and you're a desperate one
but I don't want a lover
I just want to be tied
to the back of your car
to the back of your car
to the back of your car
to the back of your car


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