2022.11.20
「ロック大陸漫遊記」
FM TOKYO
11月も第4週。
草野「心に余裕がある方も、意外とギリギリの方も、ちょっとした息抜きにしていただけたら幸いです」
今週は、ワンアーティスト特集、【アンジーで漫遊記】。
アンジーは、「ワタクシ草野が高校生のころ大きな影響を受けた、当時、地元福岡で大人気だったバンド」。
草野「草野マサムネのルーツです。ブルーハーツに出会う前は、正直言って、オレ、アンジーの真似をしていました」
(キッパリッ!!)
「ひと一言では言えないアンジーの独特の世界」を漫遊します。
オンエア曲
01 魔法のコトバ(スピッツ)
02 腹々時計(アンジー)
03 幸運<ラッキー>(アンジー)
04 ミミズ(アンジー)
05 おやすみ(アンジー)
06 掃き溜めの街で歌い始めたチンピラ達の新しいメルヘン(アンジー)
07 マグマの人よ(アンジー)
08 庄屋の蔵(アンジー)
09 交差点に立つ(少年B)
漫遊前の一曲は、スピッツで、「魔法のコトバ」(2006年、映画『ハチミツとクローバー』の主題歌として書き下ろし/2006年、31thシングル/2007年、12thアルバム『さざなみCD』)。
プロ野球のシーズンが終わり「野球中継見なくてもよくなって」、このクール、5本くらいドラマを見ている草野くん。シーズン中はドラマは1、2本しか見ていないらしい。
話題作のドラマ『silent』で「ちょこちょこスピッツの曲を入れていただいて」いるので、この曲だそうです。
(特に好き!というわけではない曲だけど、イントロも声もサウンドも言葉も、優しい曲だなあ、といつも思う)
最初の曲は、アンジーの「腹々時計」(1986年、自主製作の「衝撃のデビューアルバム」、『嘆きのばんび』)。
バンド、アンジーについて。
1980年、山口県長門市で結成。
1982年に活動拠点を福岡に移し、ローカルCMへの出演を通して知名度を高める。
草野くんの記憶では、ステーキ店レッドマンのCMで、「バットマンの歌をもじっていた記憶あるけど、どーかな」。
そして、80年代半ばには、「福岡を代表するバンド」になっていく。
12歳から洋楽ロックにはまっていった草野少年、高校生になってバンド活動をするようになってから、「まわりの影響で日本のバンドも聴くようになった」。
当時周辺で人気があったのは、ストリート・ライダーズ、ルースターズ、メタル系のアースシェイカー、ラウドネスなど。
福岡はロックバンドが多く、「独自のシーンが盛り上がっていた」。
情報は、口コミとローカルラジオ番組。当時、かなぶんやさんという影響力のあるDJの番組をよく聞いていたそうで、デビュー後その方の番組にゲストとして出演したこともあったとか。
また、友達にもらった、ダビングを重ねたカセットとか、「ただで見られる学園祭」の情報とか・・・。
その中で、とくにハートを鷲掴みされたのが、このアンジーというバンド。
「パンクっぽい攻撃性もあるし、サブカル要素も強いし、変わり者に見られたい思春期の心にマッチするような、今で言う陰キャの味方のようなバンド」だった、と。
サウンドもカッコいいし、ワクワクするような要素もたくさんあり、「すぐにファンになりました」。
次は、「幸運<ラッキー>」(1986年、デビューアルバム『嘆きのばんび』)。
先ほどの「腹々時計」のように「わりと攻めてる、尖がっている方向」の曲もありつつ、「弱さをさらけ出した優しい曲もあり、アンジーはツンデレのギャップ萌えのバンドでもある」。
「それで、全曲、『ちゃんと屈折している』」アンジーの優しい系の代表のような曲がこの曲。
「泣きながら家を出るのは 追い込まれたときじゃなくて 恵まれた今しかないんだ~♪」の部分を弾き語りできかせてくれて、「・・・というところを勝手に自分に重ね合わせて聴いていました」。
(キャッチーなメロディーと意外とタイトなサウンドが気持ちよかったな)
草野くんが思い返すに、80年代の福岡のロックシーンの盛り上がりは、東京や大阪とも違った「ガラパゴス的なものだった」。
「本当にたくさんバンドがあったので、オレも頑張れば人気者になれるかな?と錯覚しちゃうような・・・」と。「そのお手本が、オレにとってはアンジーだった」
アンジーをはじめ、モダンドールズやザ・キッズなどはアマチュアのころから結構な集客力があったので、ライブを聴く一般の若者のほうにも「ライブを楽しむ文化」が定着していたのだろう。
この福岡時代のアンジーのアルバム『嘆きのばんび』は、ジュークレコードからリリースされていた。ジュークレコードは福岡のレコード屋さん。
草野くんが夜間に通っていた美大受験生のための予備校近くの親不孝通りにも、店舗があった。
当時アンジーのメンバーがそこでバントしていたそうで、「いつもドキドキしながら店をのぞいていたけど、お会いすることはなかったですね」。
次の曲は、「ミミズ」(1986年、デビューアルバム『嘆きのばんび』)。
(こういう曲に惹かれる人だからこそ、スピッツの今までがあるんだ、とどこかで不思議に納得できる。疾走感とメロディーが残る)
今日は「ちゃんとした音源がある曲」からセレクトしているそうだが、「実はカセットだけで持っている曲にも好きなのがある」。
「スカっぽい曲で、『ナ~ナ ナ~ナ ナナナナ~♪』とみんなで歌うだけで異様に盛り上がるナナという曲」があるそうだけど、カセットでしか持っていないそうだ。
次は、「おやすみ」(1988年、メジャーデビューアルバム『溢れる人々』)。
メジャーシングルの「天井裏から愛をこめて」も重要な曲だが、「これは前にかけたからね」。
(ホントだ、ココの「ちょっぴりタイムマシン」のコーナーで)
そして、「おやすみ」にまつわる草野くんの思い出。
スピッツのアマチュア時代、ライブ終わりに機材車で府中まで田村くんを送ったあと、小平の自分のアパートまでこの曲をカセットで聴きながら帰っていたそうだ。
(こういう思い出は心に残るなあ、わかるような気がする)
(初めて聴いたとき、この曲のイントロがカッコいいなあと思いました)
アンジーのライブには草野くんも何回か行ったそうで。
福岡 西新にあったJA-JAというライブハウス。
ここでみたアンジーがいちばん印象的で、「水戸さんがカリスマな感じで、オレ、見ながら目がウルウルしてたと思う」と。
このライブハウスJA-JAは、草野くんが高校2年のときに初めてライブイベントを仕切ったハコだそうだ。
チラシを作ったり会計をしたりしながらも、「ライブ慣れしてなかったから自分の出番では異様に緊張しちゃって、全然思うように歌えなかった」。今でも緊張するけど、その比ではなかったらしい。
終わったあと、もう歌は向いていないから「やめようかな」とうなだれていたら、当時の店長さんが「君は絶対に歌を続けるべき」と言ってくれた。
しょげているボーカルへの単なる励ましだったのかもしれないけど、「なんだかとてもうれしくて、それで今も歌い続けているんです」。
(その店長さんに、スピッツファンは足を向けては眠れませぬ。もう亡くなられたそうだけど。)
店長さんの言葉は正確には「キミの歌はバリもんよ」とだったそうで、これは福岡の言葉で、「すごくいいよ」という意味。
(はい、バリもんですよね~)
そして、次は「アンジーの曲の中でいちばん好きかもしれない」、「掃き溜めの街で歌い始めたチンピラ達の新しいメルヘン」(1988年、通算6thアルバム、2ndメジャーアルバム『新しいメルヘン』)。
Bメロの「フレ~ フレ~♪」は、スピッツの「けもの道」へ。
(素直に、気持ちよくて、いい曲だー。)
草野「チンピラという言葉をメルヘンをくっつけるセンスがすばらしい」
ちなみに、『ミュージックマガジン』では「0点をつけられた、すばらしいアルバム。オレの採点では100点ですけどね」と。
次は、「バンド後期の楽曲」、「マグマの人よ」(1990年、メジャー5thアルバム『窓の口笛吹き』)。
草野くん自身はメジャー3rdアルバム以降は「それほど熱心なリスナーではなくなっていた」。
でも、メジャー5thのアルバム『窓の口笛吹き』は、「アルバム全体の統一感もあるし、それぞれの曲もキャッチーで、演奏もサウンドもよくて、タイミング次第ではもっともっと話題になっていたのではないか」と。
そのアルバムのオープニング曲「マグマの人よ」は、「今でもファンの多い、名曲だと思います」。
(アンジーの曲をすべて聴いているわけではないけれど、知っている限り、メロディーがはっきりをしていて、飽きずにずっと聴いていられる。この曲もその中の一つ。優しく力強い言葉選びもいいよね)
最後の曲は、再び初期の曲で、「庄屋の蔵」(1986年、デビューアルバム『嘆きのばんび』)。
ロックの曲で、タイトルが「庄屋の蔵」。「当時はすごいなって思ったんですよね」
草野「今だと、人間椅子や打首(獄門同好会)の曲でこういうタイトルの曲があってもおかしくないけれど、当時は『ff(フォルティシモ)』(HOUND DOG)とか『Scramblin' Rock'n'Roll』(尾崎豊)とか横文字のタイトルが普通だった日本のロック界で『庄屋の蔵』・・・って、最高ですね」
(こういうところで「最高ですね」とつぶやくところ・・・、最高ですよね)
アンジーは1992年の日比谷野音でのライブを最後に活動休止。その後何度か再結成もあった。
ボーカルの水戸華乃介さんは、今でも自身のプロジェクトで独自の活動をしている。
ギターの中谷さんは、福岡でマイペースの活動を。
ベースの岡本さんはWILD CHILLUNというバンドで活動中
(これは、1988年のライブ映像らしい)
アンジー 天井裏から愛を込めて (ライブ)
特集の最後に。
アンジーがメジャーデビューして上京したのと、草野少年が大学入学で上京したのは、ほぼ同時期。
東京の帝都無線というレコード屋のあるコーナーで「アンジーのレコードを目立つ位置に置きかえるという地道な普及活動をしていました」。
(わかる~。)
草野「その後、水戸さんとはラジオの番組でご一緒したことがあるんですが、そのときも、オレ、普通にファンとして舞いあがっていた記憶があります」
今回は、アンジーというバンドの紹介とともに、草野少年の福岡時代の思い出もちらほら垣間見れて、いつもとはまた違った意味で、おもしろいロック大陸でした。
そして、今回の「ちょっぴりタイムマシン」は、少年Bの「交差点に立つ」(1987年、3rdカセット『夜の動物園』)。
(イントロは、何? 何? 「青い車」?)
少年Bは、アンジーと同じ時期に福岡で人気だった女性のバンド。
「ポップなんだけど不思議な歌詞の世界で、一時期はまってレコードを聴いていた」という草野くん。
古いインディーズの音源なので権利関係などでオンエアしてもいいのかな、と思っていたら、番組のスタッフがメンバーに問い合わせて、OKをいただけたそうです。
「音はちょっと古いけれど、楽曲は古さを感じさせないし」、草野くん自身は高校のころを思い出して、「ちょっとせつないです」と。
(音の古さはむしろ、切なさを増幅させてすてきだ。私自身が持っているふる~い音源の曲たちを並べて聴いてみたくなるよ。)
来週は、「70年代、USパンクで漫遊記」。
パンクロックの代表バンドと言うと、まずセックス・ピストルズとかクラッシュなどのイギリスのバンドは思い浮かぶが、それ以前に、アメリカ・ニューヨークを中心に巻き起こっていたムーブメント。イギリスのパンクの元ネタでもある、70年代のアメリカのパンクを紹介してくれるそうだ。
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