☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『ホース・マネー』(2014)

2016年06月23日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ホース・マネー』(2014)

監督:ペドロ・コスタ/出演:ヴェントゥーラ、ヴィタリナ・ヴァレラ
ポルトガル/2014年/DCP/104分/配給:シネマトリックス

【作品概要】
『ヴァンダの部屋』『コロッサル・ユース』に続き、リスボンのスラム、フォンタイーニャス地区にいた人々と創り上げ、主人公も『コロッサル・ユース』のヴェントゥーラ。ヴェントゥーラ自身のカーボ・ヴェルデからの移民の体験をもとに、ポルトガルのカーネーション革命やアフリカ諸国の植民地支配からの独立などの近代史を背景に展開する。そのポルトガルに暮らすアフリカからの移民の苦難の歴史と記憶を、ひとりの男の人生の終焉とともに虚実入り混じった斬新な手法で描いている。
マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセら巨匠と共にペドロ・コスタが参加したオムニバス作品『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』の一篇『スウィート・エクソシスト』の一部が大胆に組み込まれていることも見逃せない。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
ポルトガル映画は3年前に初めて観ました。
確か、ミゲル・ゴメス監督の『熱波』の公開に合わせて「ポルトガル映画の巨匠たち」の特集が組まれていて、映画館を移動して何本か観たのだったと思う。
それで、一見分かりにくかったり、すごくウエットな感じだったり、必要最低限の台詞や音楽だったり、難解だけど息を潜めて観入ってしまうような何かがあって、それが何なのかを知りたくて、ほぼミッションのような気持ちで機会があれば観に行くという感じになっています…

なので、『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』もその一つで観て、特にペドロ・コスタ監督の作品が強烈に印象に残っていたので、その監督の最新作ならばと、またそれが何なのか知りたくてわざわざ難解なミッションに出掛けるといった次第なのです…

そして『ホース・マネー』。
冒頭からもう衝撃的ですが。

古びた写真のストップモーション。
計算しつくされた照明の陰影。そこを人物が歩いたり、少し動いたりした時の当たり方とかもいちいち凄い。
もう畏怖すら覚える美しさです。

そもそも、地下深い穴ぐらのような病院のあの造りは一体…。

と思ったら、色んな人が出てきては話し込み始めたり、ひそひそと話し続けたりする。その内容は噛み合っている時と全然噛み合ってない時とその時々で違ったりするようだった(自信ないけど確か)。
ただ、誰かが話している時、それに耳を傾けている人達の表情が印象的で、何か共通の想いがあるのが伝わってくるのです。
痛み、哀しみ、閉塞感、故郷への想い…そういった何か共通の言語が伝わってくる。

ごつごつした土肌の地下道、エレベーターの閉塞感、地上に上がると現代的な建物の中。まるでエレベーターが時空を越える装置のよう。

ずっと観ているうちに、極端に暗くなる照明部分には、そこには映し出されていないが多くの人達の息づかいが感じられるようになってきて、そんな風に思わせる表現方法にも圧倒されました。

パンフレットはあえて読み込まないで行ったので、『スウィート・エクソシスト』の一部が拡大されて織り込まれているのにも驚愕しました。後で読んだら明記されていました

でも、あの短篇を過去に観ていたので、『ホース・マネー』が観やすかったし、理解の一助になっているなぁなどと思いながら観ていて、この洋服はあれ…?と思ったら突如出てきたので凄ーくテンション上がりました!!

あのシーンは脳裏にこびり付くほどの衝撃なので…

しかも、ちょっと笑える箇所があって、あれはきっと笑っていいところだったと思うけれど、それ以外に圧倒され過ぎちゃって固まってしまいました


また、歌が良くて、それまでの抑圧的な調子から少し開放されるけど、でも歌詞もそれを歌うシチュエーションも疲弊していて、また意気消沈してしまう。

ただ、少し希望が感じられる描写もあって、そこにすがりたくなりましたけども。。

何世代もの時空を越えた想いがリアルさをもって存在し、また映画のどこを切り取りストップモーションにしても絵画のような構図を保って成立するのだろうなというほど、恐ろしく隙のない作品でした。

『ヴァンダの部屋』と『コロッサル・ユース』も観に行けたら行こうっと





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