■日本がいつのまにか「世界第4位の移民大国」になっていた件~安倍政権が認めない「不都合な現実」~
現代ビジネス(週刊現代)2018.06.29 芹澤健介
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56296
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「日本は世界第4位の移民受け入れ大国」というニュースが流れてきた。
これはOECDに加盟する35ヵ国の最新データだ。
上から順にドイツ、アメリカ、イギリス。
日本は韓国を抜いて第4位になった。
しかしこれはイギリスがEU脱退を表明する前の2015年のデータなので、ひょっとすると、すでに日本はイギリスも抜いて、世界第3位の移民受け入れ国になっているかもしれない。
そんな状況にもかかわらず、日本にはこれまで公式の「移民」の定義すらなかった。
いわゆる「移民」のイメージは、「貧しい国から働きに来た人」かもしれないが、たとえば国連などの国際機関では、個人の経済状況には関係なく「1年以上外国で暮らす人」を移民としている。
この定義に照らせば、イチローもYOSHIKIも移民だし、日本に一年以上住む外国人は全員移民である。
そしていま、日本には約247万人の在留外国人がいる。
これはつまり、名古屋市民とほぼ同じ数の「移民」がいるということになる。
ちなみに、自民党の労働力確保の特命委員会による定義では、「移民=入国時に永住権を持っている者」であり、「就労目的の者は移民ではない」としている。
そもそも移民の定義からして国際社会の認識とは完全にズレている。
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日本がいつのまにか「世界第4位の移民大国」になっていた件~安倍政権が認めない「不都合な現実」~
現代ビジネス(週刊現代)2018.06.29 芹澤健介
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56296
■「移民流入」世界4位の日本で、頑なに「移民」と言いたがらない安倍首相の頭の中
文春オンライン(文芸春秋)2018/11/03 大山くまお
https://bunshun.jp/articles/-/9561
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政府は11月2日、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理・難民認定法(入管法)改正案を閣議決定した。
経済界の要望に応えた形で、政府与党は今国会での成立を目指す。
入管法改正案は「移民政策」とはどう違うのか?
安倍首相らの発言をまとめてみた。
安倍晋三 首相「政府としては、いわゆる移民政策をとることは考えていない」産経ニュース 10月29日
安倍晋三首相は10月29日の衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表の質問に答え、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管法改正案について「移民政策」ではないことをあらためて強調。
「深刻な人手不足に対応するため、即戦力になる外国人材を期限付きで受け入れるものだ」と説明した(毎日新聞web版 10月29日)。
厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者は昨年10月の時点で過去最多の約127万9000人に上る。
経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の最新(2015年)の外国人移住者統計では、日本への移民流入者数は世界4位に上昇した。
政府はこれまで原則として就労目的の在留を認めておらず、高度な専門人材に限って受け入れてきたが、実態としては外国人技能実習生や留学生のアルバイトが多くを占めていた。
単純労働を含む外国人労働者の在留を認める今回の入管法改正は大転換となる。
・10年滞在すれば永住への道が開ける新在留資格
一方、安倍首相はこれまで再三、「移民政策」を否定してきた。
2014年10月1日の衆院本会議では「安倍政権は、いわゆる移民政策を取ることは考えていない」と発言(産経ニュース)。
今年2月20日に行われた経済財政諮問会議でも「安倍内閣として、いわゆる移民政策をとる考えはありません。この点は堅持します」と発言している(首相官邸ホームページ 2月20日)。
しかし、深刻な人手不足を解消するための外国人労働力の受け入れは必要不可欠となっていた。
入管法改正案は、新たな在留資格「特定技能」を2段階で設ける。
「特定技能1号」は特定の分野で「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に与えられる。
在留期間は最長で通算5年、家族の同伴は認めない。
「特定技能2号」は「1号」を上回る「熟練した技能」を持つと認められた外国人に与えられる。
在留期間に上限はなく、家族の同伴も認められる。
10年滞在すれば、永住権の取得要件の一つを満たすことになり、永住に道が開ける。
受け入れは人手不足が深刻化している分野に限定され、介護、造船、航空、農業、漁業、自動車整備、外食などの14業種が検討されているが、新たな外国人労働者の数は数十万人に上ると見込まれている。
おまけに……。
1日の衆院予算委員会で、受け入れを拡大する外国人労働者の人数について、「数値として上限を設けることは考えていない」と説明した。
改正案には受け入れ業種や人数について明記されていない。
どんな業種に、どれだけの人数の外国人労働者がやってくるのか、すべてはこれから考えるということらしい。
審議の前提が欠けていると野党が反発するのはもっともだ。
新たに数十万人、場合によっては数百万人の外国人労働者がやってくる。
彼らは「移民」ではないのだろうか?
・外国人労働者を受け入れで「国家を維持」する政策は採らないと答弁
安倍晋三 首相「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人やその家族を期限を設けることなく受け入れ、国家を維持する政策は考えていない」毎日新聞web版 10月29日
これも衆院本会議での発言。安倍首相はこのようなロジックで入管法改正が「移民政策」ではないと主張した。
国民民主党の奥野総一郎衆院議員は、今年2月に「わが国における政府の『移民』及び『移民政策』の定義を示されたい」という質問主意書を提出している。
政府の答弁は、「移民」及び「移民政策」の定義については「一概にお答えすることは困難である」とした上で、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、(中略)これを採ることは考えていない」というものだった。
安倍首相の今回の発言は、このときの答弁をそのままなぞったものである。
1日の衆院予算委員会では、山下法相もこの答弁を読み上げた。
しかし、今回の入管法改正は、どう見ても「一定程度の規模の外国人労働者」を受け入れることで「国家を維持」しようとしている政策だと思うのだが……。
・移民じゃないんだから、多文化共生も同化政策も関係ない?
「混同されたら困る。永住する人がどんどん増える移民政策はとらないと、今まで再三言っている通りだ。混同しないでほしい」西日本新聞 11月2日
これは1日の衆院予算委員会での発言。
立憲民主党の長妻昭代表代行が「多文化共生を軸に国を開くのか、『日本人になってもらう』という同化政策をとるのか」とただしたところ、安倍首相は語気を強めて反論した。
移民政策ではないのだから、多文化共生も同化政策も関係ないということだろう。
長妻氏は「それは詭弁(きべん)だ。永住に結びつく門戸が開かれているではないか」と反論している。
和田政宗 自民党・参院議員「一定期間外国人労働者の力を借りるのであって『移民』ではない」オフィシャルブログ 10月30日
安倍政権の外国人労働者に対する考え方を非常にわかりやすく示しているのが和田正宗参院議員によるこの表現だ。
人手不足は困るが、移民も困る。だから、「一定期間外国人労働者の力を借りる」だけ。
「移民につながらないよう様々な防止策を打って」いるという。
和田氏のブログの内容で目を惹くのが、自民党の「労働力確保に関する特命委員会」が2016年に定めた「移民」の定義だ。
そこにはこう記されていた。
・日本にしか存在しない、摩訶不思議な「移民」の定義
自民党政務調査会・労働力確保に関する特命委員会 「『移民』とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受入れは『移民』には当たらない」自民党オフィシャルサイト 2016年5月24日
「入国の時点でいわゆる永住権を有する者」という定義は耳にしたことがない。
IOM(国際移住機関)は「移民」を「当人の (1) 法的地位、(2) 移動が自発的か非自発的か、(3) 移動の理由、(4) 滞在期間に関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定義している(オフィシャルサイト)。
また、「多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、本来の居住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています」とも記されている。
一方、先の定義が記されていた自民党の特命委員会による「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」というレポートには、「移民政策と誤解されないような仕組み」「移民政策と誤解されないように配慮しつつ」と書かれていた。
そしてとどめは「『移民』には当たらない」。
IOMの定義に沿って考えれば、新たに日本にやってくる外国人労働者は「移民」であり、安倍政権が主導する入管法改正は「移民政策」である。
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「移民流入」世界4位の日本で、頑なに「移民」と言いたがらない安倍首相の頭の中
文春オンライン(文芸春秋)2018/11/03 大山くまお
https://bunshun.jp/articles/-/9561