志保さん復活祭り その4

　全員サービスDVDが今日の夕方届いていました。まだ見ていないのですが、今年もまた素晴らしい出来らしいので見たら改めて感想を書きたいと思います。
　
　さて志保さん復活から六日目となりました。もうすぐ新展開のサンデーが出ますが、そんなことは気にしていません。志保さん復活祭りはまだまだ続きます。
　一緒に祭りを盛り上げてくださるサイト様がいらっしゃいまして、こうやって志保さんが復活した喜びを皆さんと共有できるというのは本当にうれしいしありがたいことだと思います。さあ、恥ずかしがらないで皆さんもLet's志保さん復活祭り！


　というわけで私も負けてはいられません。ということで志保さん復活祭り第四弾は前回に引き続きまして816話の哀ちゃんサイド後編です。816話最後までなので中途半端なところで終わっている上、一部原作にないとこまで踏み込んでますが、脳内補完ではこの後817話の志保さんサイドまであって整合性はとれているのですが、とりあえず今回はここまでです。

　まあ、とはいえこのあとの展開はもう皆さんご存じなので緊迫感はないですよね。



816話：side灰原（後編）

「み、みんなしっかり！！」
殺人犯に閉じ込められた小屋から上がり始めた煙は瞬く間に小屋の中にまで充ち始めた。古びた木造建築の今やすっかり炎に包まれどんどん上昇する温度に焦燥を感じながらも、哀は煙を吸い込まないように扉付近にうずくまらせた子供たちを励まし続けた。
今頃、自分たちを必死で探してくれているであろうコナンに一刻も早くこの煙を見つけてくれることを信じてはいたが、刻一刻と濃くなる煙に咳き込み始めた子供達にこの小屋がもうそれほど持たないこと分かっていた。
（どうする？）
何か脱出方法をと小屋の中に視線を彷徨わせれば奥に置かれたままの被害者の物らしいサブザックが目に入ったその時、ポケットに入れたままの解毒剤の試作品の存在を思い出しハッと頭をあげた。
（これを使って元の体に戻れば、子供たちは脱出できるかもしれない）
だが一方で工藤邸に住む沖矢昴と名のった男の顔が頭をよぎる。組織の気配を漂わせる怪しい男に身辺を嗅ぎまわられている今、もとの宮野志保に戻る危険を考えると簡単に解毒剤を服用する決断には踏み切れない。
「もうすぐ助けが来るから！！」
（そうよね？工藤君）
祈る様な言葉に何かを発見した光彦が声を上げた。
「む、向こうの方でも煙が上がってますよ…」
犯人が用心のために複数個所に放火したのか、それとも他の理由か、いずれにしてもこの小屋の場所の特定に煙が役に立たないことを悟って哀は最後の決断をした。
（こうなったら…もう…）
ゆらりと立ち上がって、被害者のサブザックが置いてある小屋の奥へと向かう。解毒剤を飲むことを決断したとたんに、さっきまで朦朧としていた頭が驚くほど冴えてくるのが我ながらおかしかった。
（あの斧で扉を破って、子供たちを脱出させて…そして）
子供たちを逃がした後にそのまま小屋に帰れば、後に残るのは若い女の死体のみ。組織は遠からずその焼死体の情報を警察から手に入れ、それが組織を裏切ったシェリーだということに気づくだろう。そうすれば今、自分の身辺を調べる者たちも今さら何も調べることはない。
（子供たちにとっても自分は初対面の女にすぎないから、組織に怪しまれることもないしね。フフ、最初からこうすれば良かったわ）
なぜこんないい考えに今まで気が付かなかったのかと自嘲の笑みがこぼれる。荷物の中を探るとちょうどサイズのあう服を見つけて拝借すると哀は小屋の奥へと向かった。
奥の部屋で借りた服を身に着け、自分の着ていた服を炎に投げ入れる。手に握りしめていたカプセルを一瞬見つめた後、口に含んで解毒剤一気に飲み込んだ。
ドクン！
何度経験しても慣れない痛みが全身をかけめぐる。
「っうう！！」
子供達にうめき声を聞かせるわけにはいかないと、急激に成長するのに悲鳴をあげる体に思わず漏れる声を口を手でふさぎ必死に耐える。
（みんなを頼んだわよ…工藤君…）
ギュッと閉じた目の奥に眼鏡の少年の姿が浮かんだ。
『灰原』
自分を呼ぶ時の少し低めの声と信頼を込めた眼差しが気に入っていたと告げられなかったのが心残りだったと、今さらながらにそんなことがひどく気になった。


心臓を破るような息苦しさから解放されて目を開くと、そこには見慣れたはずのすらりとした自分の手があった。立ち上がると先ほどよりも室内は煙で充満している。迷っている暇はすでに無かった。志保は傍らにあった斧を手に取ると子供たちが待つ扉へと走った。