kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

広島県立美術館特別展「ゴッホ展 空白のパリを追う」

2013年07月28日 | 展覧会
「ゴッホ展 空白のパリを追う」
会場:広島県立美術館
会期:2013年7月22日(月)~9月23日(月)

時は1977年。8歳だったワタシが毎週楽しみにしていたTVアニメシリーズが「まんが世界偉人物語」だった。おそらく人生でゴッホの名もゴーギャンの名も葛飾北斎の名もこの番組で知ったのだと思う。ワタシの歴史好きとノンフィクション好きはこの時から始まったといってもいいだろう。(なぜかDVD化やCATVでの放送がされない。)

今はワタシの中でゴッホといえば、映画「将軍たちの夜」。ピーター・オトゥール扮する優秀なナチの将軍にして猟奇的殺人者が占領下のパリでゴッホの自画像を見て、恐怖とも恍惚ともいえないめまいを起こす場面を思いだしてしまう。(よってBGMもモーリス・ジャール)

ゴッホのパリ時代の2年間を追った本展覧会、非常に充実した内容となっている。時系列に作風の変化を追い、ゴッホの内面に迫るのだが、解説が分かりやすく、頭に入って来やすい。(今回はオーディオガイドを借りたが、説明を読むだけでも充分だった。)ワタシ自身はゴッホ初心者なのだが、自分にふさわしい表現技法を求める過程を追体験できるかのようだ。

また、展示方法もよく出来ていて、全部の作品が展示ケースのガラス越しでなく見ることができる。というのも、いずれの作品にもひろしま美術館の「ドービニーの庭」のように低反射アクリルが設置されているので、本当に見やすくて、ありがたい。壁面も深い赤や緑で外国のギャラリーのようだ。(って、行ったことないけど。)

贅沢を言えばもっと作品数を見たかったのだが、今回の目玉の1つである自画像8点、特に「グレーのフェルト帽の自画像」などは目の離せない迫力に満ちている。

学術的な研究成果としての展示色が濃く(その辺がとても県立美術館らしい)、ひと月単位での作品の時系列調査はもちろん、画材の経年変化や赤外線調査、描いた場所の現地踏査、自画像モデルの特定まで、あらゆる調査がミステリー小説を読むかのようで知的興奮にあふれている。

のだが、もしゴッホが存命だったら、世界的な作家となり、作品が最高額で取引されたとしても、その代償として私生活から描き損じまで調べられることを望んだであろうかという思いが頭をよぎった。見られたくなかったであろうことまで知られてしまう(時として間違っているかも知れない解釈も含め)ことをゴッホはあの世でどう思っているのだろう。
美術史学は当然、そうしたものなのだが、都会の喧騒を嫌ったゴッホに対して、いくばくか申し訳ない気持ちで会場を後にした。

ところでワタシは普段から夏は帽子を着用している。意識してなかったが、ヒゲ面と相まってゴッホの自画像のようだったらしく、他の観覧者の方から「狙ってますね。」と声をかけられた。が、ゴッホに似ていると言われてもリアクションに困るよなあ。(笑)ゴッホノモドキって昆虫みたい。
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