図書館から予約してあった本の連絡が入ったので、
その本を借りに行くついでに、先日借りた『人を殺すとはどういうことか』を返そうと読み上げた。
著者の美達大和さんは殺人犯で服役中の人であるが、実によいことを書かれている。
備忘のために転記転載させていただくことにする。
美達さん、ご都合がお悪ければお知らせくださいませ。
(と断っても、こんな辺鄙なブログなど誰も読まないでしょうが)
少し長いですが、興味ある方はどうぞお読みください。
記
私は社会では、経済的にどんなに豊かであっても、どれだけ好き放題の生活をしていても、「幸福」などという感情がありませんでした。次から次に目標を定め、クリアすればまた次にという繰り返しでした。相当に贅沢な暮らしも経験し、毎日がシャンパン・ゴールドに輝くような暮らしをしていました。自分の目標に対しての欲望や野心はどんどん肥大して、「これで終わり」ということは進歩の停止や怠惰だと信じ込んでいました。
休みたい、サボりたいというのは罪と教えられてきたこともあります。今もこの感覚は私にしっかり沁みついていますし、死ぬまで変わることはありません。男が幸福を感じること、その言葉を口から出すことに女々しさを想起していましたから、想像したこともありませんでした。
それがここでは幸福を感じてしまったのです。
初めは良き本に当たった時なのですが、獄の暮らしに何の不満もなく快い感情に包まれ、ふと考えてみますと社会でも獄の内でも本を読むという行為は変わらないという、当たり前過ぎることに喜んだのです。例えば、ビーチサイトで冷たいドリンクを片手にジョージ・ウィストンか何かのピアノの音でも聴きながら本を読むのは、獄中で読むよりもはるかに快適ですが、読むことには違いありません。
そして、ここで一年に一度給与されるクリスマスケーキや何かの祝日の度に出される甘いものを食べた時の満足感や快さが、全て「幸福」という情動だったのに気が付いたのです。
社会の人からすれば、くだらないことでしょうし、取るに足らないことですが、ここではそれらが限定されていますから、欲求を満たした時のカタルシスが一際大きく、幸福感につながるのです。私の心がそれを感じられるようになったと言えます。
足るを知るという言葉がありますが、多くを望まなくなれば、ささやかなことでも快い気分が生まれることに、論理より先に身体や心が気づきました。
以上、転記終わり
誤字脱字は後程訂正します。
その本を借りに行くついでに、先日借りた『人を殺すとはどういうことか』を返そうと読み上げた。
著者の美達大和さんは殺人犯で服役中の人であるが、実によいことを書かれている。
備忘のために転記転載させていただくことにする。
美達さん、ご都合がお悪ければお知らせくださいませ。
(と断っても、こんな辺鄙なブログなど誰も読まないでしょうが)
少し長いですが、興味ある方はどうぞお読みください。
記
私は社会では、経済的にどんなに豊かであっても、どれだけ好き放題の生活をしていても、「幸福」などという感情がありませんでした。次から次に目標を定め、クリアすればまた次にという繰り返しでした。相当に贅沢な暮らしも経験し、毎日がシャンパン・ゴールドに輝くような暮らしをしていました。自分の目標に対しての欲望や野心はどんどん肥大して、「これで終わり」ということは進歩の停止や怠惰だと信じ込んでいました。
休みたい、サボりたいというのは罪と教えられてきたこともあります。今もこの感覚は私にしっかり沁みついていますし、死ぬまで変わることはありません。男が幸福を感じること、その言葉を口から出すことに女々しさを想起していましたから、想像したこともありませんでした。
それがここでは幸福を感じてしまったのです。
初めは良き本に当たった時なのですが、獄の暮らしに何の不満もなく快い感情に包まれ、ふと考えてみますと社会でも獄の内でも本を読むという行為は変わらないという、当たり前過ぎることに喜んだのです。例えば、ビーチサイトで冷たいドリンクを片手にジョージ・ウィストンか何かのピアノの音でも聴きながら本を読むのは、獄中で読むよりもはるかに快適ですが、読むことには違いありません。
そして、ここで一年に一度給与されるクリスマスケーキや何かの祝日の度に出される甘いものを食べた時の満足感や快さが、全て「幸福」という情動だったのに気が付いたのです。
社会の人からすれば、くだらないことでしょうし、取るに足らないことですが、ここではそれらが限定されていますから、欲求を満たした時のカタルシスが一際大きく、幸福感につながるのです。私の心がそれを感じられるようになったと言えます。
足るを知るという言葉がありますが、多くを望まなくなれば、ささやかなことでも快い気分が生まれることに、論理より先に身体や心が気づきました。
以上、転記終わり
誤字脱字は後程訂正します。
ええ、すごくいい本だと思います。
著者の方が特異な体験をなさった方だから、余計読み応えがあるような・・・。
ぜひ図書館で借りてお読みください。
”遺族に対する配慮を理由として、自分の犯罪については具体的な経緯を記載していないのはズルイ。過剰な才に恵まれるより、理性の歯止めがきく凡庸さの方が有り難いと思わせる本です。読んでると、思わず著者を尊敬しそうになるが。そこら辺で平々凡々と暮らしている普通のオヤジの方が、この人よりずっと立派なのです”
と、アマゾンのトップレビューにある。
全くの模範解答だと思う。自分もこの本を読んだらこんなコメントを残すと思う。人を殺した時点で、その人の才知も才能も全て剥奪される。理性の歯止めこそが本当の理性であり、衝動を抑える知性こそが真の知性であると思う。ましてや、故意に計画的に人を殺す連中に、理性も知能もない。あるのは狂気という名の凶器だけか。
それと話は変わるんですが。ビコさんの所では図書館も人気があるんですね。私の方はド田舎なので、新刊でも半年くらい平気で借りれます。多分10年ほど借りても予約は入らんでしょう(笑)。
こういう所にも都会と田舎の格差ってのは露骨に出るんですね。
が、そこらあたりのことも、この美達大和さんは自覚しておられて、だからこそ敢えて自分から無期を選んでおられます。被害者のことを考えたら一生出るべきではないと。
人を殺めたことについても、これは彼の父親の教育方針から、そういうやり方しかできなかったというのもあります。
美達さんはブログもされています。
http://blog.livedoor.jp/mitatsuyamato/
転象さんと同様に書評もされるようです。
御地の図書館では新刊が半年も手元においておけるのですか?それは羨ましい!!(笑)