「検事がマインドコントロール」と大久保被告
資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた小沢一郎民主党元代表(69)の第6回公判は1日午後も、東京地裁で元会計責任者・大久保隆規被告(50)(1審有罪、控訴)への証人尋問が続いた。
大久保被告は、小沢被告から会計事務について尋ねられたことは一度もなかったと証言。捜査段階で、虚偽記入への自らの関与を認めた理由については、取り調べを行った前田恒彦元検事(44)(証拠改ざん事件で実刑確定)に「マインドコントロールされていた」と述べた。
大久保被告は、問題となった2004年10月の土地取引について、小沢被告の自宅で毎朝行われていた打ち合わせで小沢被告に購入を打診し、了承を得たと説明。土地購入の登記を翌年1月に延期したことについては、石川知裕衆院議員(38)の「(民主党代表)選挙にプラスにならないからずらした方がいい」という意見に「納得していた」と述べた。
平塚浩司裁判官が、石川被告が証人尋問で「小沢被告に無断で登記を延期した」と述べたことを踏まえ、「4億円もの現金が動いているのに、小沢被告の承認があったかどうか石川被告に尋ねなかったのか」と確認すると、大久保被告は「そこまでは思いが至らず、聞かなかった」と答えた。
これに先立つ弁護側の反対尋問では、捜査段階で、「意に反する調書には署名しないように」とする自身の弁護人の助言に反し、虚偽記入を認める供述調書に署名したと説明。その理由を、「弁護士に比べて圧倒的に長い時間接していた前田元検事に、『検事総長から直々に取り調べ担当に指名された』などと言われ、マインドコントロールされた」と述べた。(2011年12月2日08時35分 読売新聞)
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小沢一郎氏裁判 第6回公判
2011.12.1 産経ニュース
(10:00~) 《弁護側反対尋問》証人:会計責任者だった、大久保隆規元秘書
〈前段 略〉
弁護人「その後、大久保さんは議員会館の責任者になっていますよね。いつですか」
証人「平成12年の6月とか7月だったと思います」
弁護人「小沢さんのところに来て半年ほどで、議員会館の事務所責任者になっていますね。どうしてですか」
証人「東京事務所の責任者の先輩と、サポートしていた先輩ら3人が選挙に出ましたので」
弁護人「残った人から大久保さんに決まったのはどうしてですか」
証人「私が年齢が上だったということと、事務所に入って浅かったですが、自身の地方政治の若干の経験を買われたと思います」
弁護人「秘書の取りまとめ役と議員会館の事務所責任者はイコールですか」
証人「(東京の事務所には議員会館の事務所のほかに)赤坂の個人事務所もありますが、(秘書は)どちらかに配属されます。(取りまとめ役の秘書は)議員会館はもちろん、赤坂の秘書を含めて、仕事上ではなく、人間関係をまとめているようなものです」
〈略〉
弁護人「この時期、本当に会計責任者だったのですか」
証人「いいえ。その調書のときは忘れていましたが、(別の秘書に)代わっていたことを後で思いだしました」
弁護人「(会計責任者では)なくなっているのに、会計責任者と答えたのはどうしてですか」
証人「(代わっていたことも)気にもとめていないほどの認識しか(会計責任者には)なかった。うっかり忘れて対応してしまいました」
弁護人「顔合わせには誰が出席していましたか」
証人「東京勤務の秘書です。集合して顔を合わせあいさつし、出かけていきます」
弁護人「時間はいかがですか」
証人「何もなければすぐに出ていきます。短ければ1、2分のことも。ミーティングというものでもないので、長くても5分から10分くらいです」
弁護人「大久保さんにとって、小沢さんと直接話をする機会はほかになかったんですか」
証人「何かあれば打ち合わせしますが、それ以外にもお諮りすることがあれば先生の随行の人に連絡をつないでもらったり、先生が赤坂の個人事務所に入るとき、空き時間に訪ねたり。朝だけでもありません」
証人「スケジュールの確認です。議員会館担当の女性秘書がスケジュール表を持って『今日はこう』と先生に確認していただいたり、後日の予定について出欠の確認をとったり、というのがメーンです」
弁護人「陳情について、小沢さんに報告していましたか」
証人「いえ、私の裁量で判断していました。よほどのことであれば報告しなければならないが、例えば地元自治体の陳情であれば、『なるべく地元の要望に応えるように』と先生から言われていたので、それに基づいて自分なりに工夫していました」
弁護人「朝の集まりで、大久保さんが政治資金団体に関する事務的な事柄を報告することはありましたか」
証人「そのようなことは全くありませんでした」
弁護人「なぜですか」
証人「その担当ではないので。(会計)担当秘書の石川氏、池田氏が、先生が個人事務所に行った折にやれば済む、その程度の話です」
弁護人「当時、政治家の小沢先生は何に関心がありましたか」
証人「自由党と民主党の交流(合併問題)があり、“小泉劇場”も続いていて、何とか本当の改革を実現しなければと。大きな仕事に集中して取り組み、日本の時間の間に合ううちに大きな改革を成し遂げることを念じていた」
弁護人「収支報告書にはどの程度関心を払われるべきでしたか」
証人「私の認識では、担当(石川議員、池田元秘書)が間違えているわけがない、粛々と滞りなく作業が進んでいるんだろうな、と思っていました」
弁護人「4区画も取得した理由はなんですか」
証人「その広さがあれば、結婚した秘書だけでなく、独身用の寮もさらに建てられます。先々のことも考えました」
弁護人「秘書が増えるかもしれないという考えがあったんですか」
証人「個人的には、小沢先生を慕い政治を志してくる若者が、事務所を巣立って国会議員になれば、小沢先生を支えるようになる、と。“直系”が増えることが小沢先生の政治力を安定させる。さらに巣立っていく優秀な若者を増やしていければいい、と考えていました」
弁護人「小沢さんの秘書が自宅近くに住むメリットは?」
証人「『大きな家族』というか、バラバラに住むより、何かあればすぐ先生に会える、事務所全員が心をひとつにして、というのがいいな、と感じていました」
弁護人「(秘書らの)家族ぐるみということか」
証人「仕事のメリットではないが、私も夏休みなど、家族を小沢先生にご紹介、お会いしてもらい、記念写真を撮ったりしました。中堅どころ(の秘書)が結婚して子供が生まれ、先生に名前をつけてもらったり、記念写真を撮ってもらって、それを子供が宝物にするとか。とてもうれしいことですから」
弁護人「秘書寮について何か問題はありましたか」
証人「女性秘書2人で共同生活をしていましたので、プライバシーが確保されない。往々にして人間関係のあまりよくない者同士でも住まないといけないとなると生活しにくい」
〈略〉
弁護人「石川さんをどのように評価していますか」
証人「私は地方議員の経験はありますし、多少の知識もあります。石川は先に入門して小沢先生の薫陶を受けていましたし、国政を目指していて国政にかかわる知識は私が全く太刀打ちできない。本当に勉強になるなと思っていましたし、その一面を評価していました」
弁護人「昨日は石川さんに事務的仕事を任せていると言っていたが、上司と部下(の関係)とは違うのですか」
証人「上司、部下ではない。同志というか、お互いに事務所の仕事を頑張って、小沢先生に大きな仕事をしてもらいたいと思っていました」
弁護人「(平成16年の)収支報告書について、昨日は宣誓書に署名、捺印するのが『うっすらとわかっていた』と発言したのはどういうことか」
証人「明確に宣誓書があって、会計責任者が署名、捺印するというのが全くわからなかった。署名、捺印するところがあるんだろうなとは思っていました」
弁護人「西松事件の際に、平成21年3月6日の検察官調書では宣誓書について『自分で署名、押印したのは間違いない』とありますが、覚えていますか」
証人「はい」
弁護人「しかし21年3月15日の検察官調書では『代書してもらったこともあったかもしれない』となっています。なぜですか」
証人「3月に任意の事情聴取のために出頭したら、ほどなく逮捕されてしまった。この先いったいどんなことになるのだろうと考え、この事件を広げたくないと。自分のところだけで終わらせたいと。会計責任者らしく振る舞うようにした」
弁護人「最初の逮捕はいつですか」
証人「平成21年3月3日のことでした」
弁護人「どのような事件で逮捕されましたか」
証人「いわゆる西松事件です」
弁護人「逮捕したのは東京地検特捜部ですか」
証人「はい」
弁護人「どんな事件ですか」
証人「西松建設から政治献金を受けたのに、記載をしなかったという罪に問われました」
弁護人「西松建設から受けたとされたものはどこから受けたものですか」
証人「新政治問題研究会と未来産業研究会という政治団体からいただいたご寄付でしたが、それが西松建設からの献金という疑いを受けました」
弁護人「大久保さんは、自分が捜査対象だと予測していましたか」
証人「何のものか分からないから行って聞いてみようという軽い気持ちでした」
弁護人「逮捕され、どう感じましたか」
証人「何のことか、どうして逮捕されるのか、憤りを感じました」
弁護人「否認しましたか」
証人「否認しました」
弁護人「当時の小沢さんの役職は何でしたか」
証人「民主党の代表でした」
弁護人「当時の政治情勢はいかがでしたか」
証人「民主党の代表として、いよいよ政権交代が現実となる期待感と、当時の政権への不信感が高まっていました。コツコツやっていけば、いずれ政権交代が実現し、小沢先生の政治改革が実現するのを楽しみにしておりました」
弁護人「このタイミングでの逮捕はどう思いましたか」
証人「謀略だと思いました」
証人「その時に、そういった罪で逮捕されたのは、あなただけでしたか」
弁護人「同じようなことをしている議員もいるということでしたが、私だけ逮捕されました」
《東京拘置所の独居房で》
弁護人「どういう様子でしたか」
証人「畳が3枚あって、奥に板の間1枚、トイレと簡単な洗面所コーナーがありました」
弁護人「入ってみてどうでしたか」
証人「トイレと手洗いが狭い空間にあって、息苦しい感じを覚えました。トイレと一緒に生活や就寝することは日常にはないことなので、気持ちの上で慣れるのがしんどかったです」
弁護人「食事は?」
証人「独居房の中でしました」
弁護人「どういう気持ちでしたか」
証人「情けない。外の景色も見えない。非常に抑圧された気持ちで、早く外に出たいと毎日思っていました」 《5月26日に保釈された》
弁護人「どんな気持ちでしたか」
証人「たぶん外に出たら出たで大変だろうと想像したが、それでも太陽の下で暮らせるのでホッとしました」
弁護人「陸山会事件について呼び出しを受けたのはいつですか」
証人「12月に裁判が始まって、裁判に集中していたときです。年の瀬も迫ってきたときに事情聴取の話が来ました。裁判で手いっぱいだったのですぐ応じなくて(翌年の)1月になってから応じました」
弁護人「この事件が、いずれこのような裁判になるとは思っていましたか」
証人「いわゆる期ずれの問題と報道でもあったので、最悪でも略式起訴、選挙管理委員会に訂正を求められるくらいで、まったく逮捕や事件になるとは思いませんでした」
弁護人「例えば、本件の土地について、あなたが見つけてきたなどの話を(検事に)したのですか」
証人「なぜ(土地が)必要だったのかなど、私がかかわった部分の話をしました」
弁護人「収支報告書の記載については、どうでしたか」
証人「(収支報告書の記載については)実はまったく分かっていませんでした」
弁護人「検事にその話はしましたか」
証人「何回もしました」
弁護人「それについて、検事はどんな様子でしたか」
証人「困ったような表情をしていました」
弁護人「あなたはそれをどう理解しました」
証人「整合性が取れない調書を作ることになるので困ったという印象です」
弁護人「調書はこの日は作られたのですか」
証人「何らかのものは作らねばならないというので作成されました」
弁護人「内容は?」
証人「『(収支報告書の記載について)見逃したとしか言いようがありません』という表現になっているかと思います」
弁護人「どうしてこういう内容の調書が作られたのですか」
証人「取り調べの最後の方になり、いよいよ調書を作成せねばならない段階になっておもむろに『見落としたとしか言いようがない』。これでどうだ、と話をされて…。そういう表現であれば、実際のところと(検察側の作成した調書との)間を取るような表現になると思い、それであれば何とか自分の裁判にもつじつまがあわせられるのではと思い提案に乗りました」
弁護人「その時点で逮捕は予測していましたか」
証人「まったく。これで自分はこのことから解放されたと思っていました」
弁護人「なぜ?」
証人「土地を探すということから先は、本当に知らないと繰り返し述べていたので、まさか逮捕にまで至るとは夢にも思いませんでした」
《陸山会事件で大久保元秘書が逮捕された平成22年1月16日前後》
弁護人「この日は、どういうタイミングなのですか」
証人「私の(西松建設事件の)裁判が、1月13日か14日にありました。それで検察側の証人として西松建設の担当部長が出廷され、やりとりの中で本当のことを話してくれました。検察にとっては大きく不利な証言でした。部長の勇気、正義を感じ入り、小躍りしながら新幹線に乗って自宅のある釜石市に戻りました」
証人「ところが、家内が電話に出ないと思うと、裁判の後に私の自宅が家宅捜索されていたのです。何ということが起きているんだとびっくりしました。その日は家に戻れず、知人の家に泊まりました」
証人「14日だったか、15日夜だったか、電話で私の逮捕状が出て特捜部が私の身柄確保に向かったと。衝撃的なことが起きたと。裁判でいい話が出たと思ったら、今度はこうかよと。強い憤りを感じました」
〈略〉
《再逮捕後の取り調べ》
弁護人「否認しました?」
証人「はい。(取り調べた)検事には『私には分からない』と話しました」
弁護人「(逮捕直後の)検事の取り調べは1月21日午前までですが、取り調べの検事が変わるというような話はありましたか」
証人「(検事が変わる)前日か前々日あたりからほのめかされたと思います。特捜部の見立てがあり、それに沿った形で取り調べを受けます。石川氏も池田氏も逮捕されていたので、私は真実を話しました」
証人「検事の取り調べとは相いれないので、平行線のまま何日も過ごしました。すると、『もっと怖い検事がくるかもしれない』と話されました」
(13:30~)
弁護人「検事から『もっと怖い検事が来る』といわれ、どう思いましたか」
証人「『なぜ検事が交代しなくてはいけないのか』と思いました」
弁護人「なぜか検事に尋ねましたか」
証人「はい。調書が全くできあがっていないからと言われました。私は真実を話すと気持ちを切り替えていたので。どなたが来ても真実は変わらないので不思議な気持ちになりました」
弁護人「検事さんが交代したのはいつですか」
証人「(平成22年1月)21日の午前中です」
弁護人「新しく来た検事は誰ですか」
証人「前田検事さんでした」
弁護人「東京拘置所の取調室で初めて会いましたね」
証人「はい、そうです」
弁護人「前田元検事とどんなことを話しましたか」
証人「『あなた事件をどうしたい』と聞かれました」
弁護人「取り調べが前田元検事に変わったことをどう思いましたか」
証人「大阪から来たことで何かあると感じた。『何が何でも立件するぞ』という意識を感じた」
弁護人「色んな事件を担当している人をみてどう思いましたか」
証人「大阪のキャップがわざわざ担当しているので『何かやられる』というのを強く感じた。ホリエモンを逮捕したのは捜査に非協力的だったと話したり、逆らうと何をされるかわからない恐怖を感じた」
弁護人「取り調べで何か他にどんなことを言われましたか」
証人「『会計責任者のあなたが話を認めないと、小沢先生がどうなるか分からないよ』といわれた。指示に従って協力しないとと思った」
弁護人「大久保さんは身に覚えのないことで勾留されたのですね」
証人「はい」
弁護人「なのに小沢さんが大丈夫となぜ思わなかった」
証人「ホリエモンもこうできるという話もされたし検事総長の指示で(取り調べに)来ていると言っているので、(検察上層部と)繋がっているのではと思った。そのような危機感を強く感じた」
弁護人「(前田元検事は)弁護人について何か説明しましたか」
証人「ヤメ検なので弁護士としての交渉は一切できない。弁護士として信頼するとあなたに不利になっていくというような発言もありました」
弁護人「取り調べのときは検察事務官を同席してましたか」
証人「だいたい2人でした」
弁護人「事務官はいつ戻るのですか」
証人「調べが終わるとき、署名、捺印するときに呼ばれていました」
証人「それまでは検察官が話して、それを事務官が打つやり方でした。前田検事さんになってからは、自身のノートパソコンを持ち込み、自分で打ち込んでいきました」
弁護人「打ち込み画面は見えましたか」
証人「全く見えません」
弁護人「印象に残っていることはありますか」
証人「体も大きめの方で、ノートパソコンは比較的小さくて、窮屈そうな指先で打ち込んでいました。身ぶりをつけながら『ここで大久保さん登場!』とか言っていた。何かやっているな、と思いました」
弁護人「前田検事が自分を『作家みたい』とも話していたんですか」
証人「『まるで作家みたい』あるいは『作家の時間』と。うまく書けたときは、雑談で著作の話をしていたこともあって、『司馬遼太郎みたいなもんだ』と言っていました」
弁護人「その間、どう思っていましたか」
証人「調書がどうできあがるのかな、と。手持ちぶさたなので、深沢(寮)のレイアウトを書いてください、などといわれたり。前田検事は作成に没頭していて、こちらから話しかけたりできないようにするためだったのかな」
弁護人「23日、『私の報告・了承があったから収支報告書が作成された』という内容の調書に署名していますね」
証人「小沢先生への聴取が23日にありました。『その前に意思表示しないと家宅捜索、小沢先生自身への逮捕に広がっていく、あなたの決断一つだ』という話が(前田検事から)ありました」
弁護人「署名に応じたのは何時ころですか」
証人「朝に弁護士の接見があり、私は応じる、と弁護士に一方的に伝えた。先生の聴取は夕方、夜だったようなので、時間的に判断して午前中に応じました」
証人「前田検事は『(小沢さんが)われわれを欺こうとしている』『小沢さんはどうなるかわからんよ』と。せめて自分が聴取に応じていくことで事件の広がりを食い止めなければ、という気持ちを強めました」
弁護人「小沢さんは事件と関係ないから大丈夫、とは思わなかったんですか」
証人「何が事件なのか。西松建設事件でもうちだけ、私だけやられた。何かの陰謀なのか、立件された。検察に何をされるかわからない、どんなことをされてもおかしくない、という思いを強めました」
弁護人「23日、弁護士の接見はどのくらいの時間でしたか」
証人「20分とか30分とか、短い時間でした」
弁護人「やり取りは」
証人「先生方はよく考えて本当のことを言い続けなければ、とその時に限らず励ましてくれました。しかし、そうは言っても中(取り調べ)の状況は外の先生には分からないし、細かく説明もできない。検事とのやり取りが圧倒的に多く、私はすでに“マインドコントロール”されているところもありました。弁護士の先生方の話だけ聞いて立ち向かっていけるのか。(弁護士を)信用しないというか、そうなっていました」
弁護人「当時の精神状態はどうでしたか」
証人「1度目の逮捕でも約3カ月勾留(こうりゅう)生活を送りました。頑張ることで3回、4回と逮捕されるのも嫌だった。(検察が)やりたい放題やるんだから、やらせてやれ、という気持ち。弁護士がなんと言おうと調書に応じることが小沢先生を守り、日本政治を守ることになる、という気負った感情がありました」
弁護人「弁護士には落ち着いて話ができましたか」
証人「精神的なストレスもあり、『(石川・池田両元秘書への事情聴取について)中ではもっと話が進んでいる』と思わず興奮気味に話しました」
弁護人「調書に署名・押印することについては伝えましたか」
証人「これ以上、3人以上逮捕者を広げないため、会計責任者として認めるようにしたい、と言いました」
弁護人「弁護士からは、石川さん、池田さんの聴取の状況についても伝えられていたんですよね」
証人「石川氏、池田氏がこう言っているという先生方の話は、どうも遅れているな、と感じました。ほとんど状況を知らないんじゃないか。石川氏、池田氏は、実際には弁護士に聴取状況の本当のことを話していないんじゃないか、と。全く当てにならないと思うようになりました」
弁護人「なぜ石川さん、池田さんを信じられなくなったんですか」
証人「私も受けていた圧力を想像しました。何しろ2週間、ずっと検事と過ごしている。マインドコントロールの中に入るというか、検事の話を信用するようになりました」
弁護人「『潮目を変える』という言葉を使いましたか」
証人「確かに私は港町出身ですが、船乗りではありません。前田検事が私の身上経歴について読み込むうちに思いついたのではないでしょうか」
弁護人「(事実が)ないにもかかわらず作られたんですか」
証人「前田検事さんがご自身で調書を作って、だいたいできたところで印刷をして、『これでどうだ』と聞いてきた」
証人「『(石川、池田両元秘書が取り調べで)本当にこんなこと言ってるんですか』と聞いても、『大久保さん、本当にこう言ってるんだから』といわれた」
証人「石川氏や池田氏が厳しい取り調べをされたらいやだなと思って、石川氏がそういっているならいいかと(調書に署名した)」
弁護人「疑いを持たなかったのですか」
証人「きっとそうなっているんだろうと、前田さんからのお話を受け入れました」
弁護人「どう思いましたか」
証人「さすが大物検事だと思いました。実力があるからこういうことも通るんだなと思いました」
〈後段 略〉 *強調(太字・着色)は来栖
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◆石川知裕議員ら、小沢一郎氏元秘書の「陸山会事件」26日判決 ①/ 関わった検事はみんな消えてしまった2011-09-21 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
【陸山会裁判26日判決】(上) 小沢秘書3人は無罪なのか有罪なのか 日刊ゲンダイ2011年9月20日
仰天 敗色濃厚の検察、関わった検事はみんな消えてしまった
<ポイントは不記載が「過失」か「故意」の判断>
来週26日、いよいよ陸山会事件の第1審判決が言い渡される。特捜検察の暴走捜査の末に、民主党の小沢一郎元代表の元秘書3人が政治資金規正法違反で起訴されたこの事件。証拠請求した調書の大半が却下され、検察側のストーリーは破綻し、すでに検察内部は敗戦処理ムードだ。いったい、この事件とは何だったのか。
先月22日の陸山会事件の最終弁論。前回までの公判で検察官席にドッカリと座っていたひとりの検事の姿が消えていた。
東京地検特捜部の斎藤隆博副部長(48)――。公判担当の主任検事として、7月の論告求刑公判では衆院議員の石川知裕被告に禁錮2年、後任の事務担当秘書だった池田光智被告に禁錮1年、元公設第1秘書の大久保隆規被告に禁錮3年6月を求刑した。公判の“最後の見せ場”を飾った主任検事が突然、表舞台から消えたのだ。
「長野県岡谷市生まれで、中大法学部卒。本来は株の不正操作事件のエキスパートで、05年末に出向先の証券取引等監視委員会から特捜部に戻ると、ライブドア事件を一から掘り起こして名を上げました。将来を嘱望されているエース検事です」(検察事情通)
改ざん検事の前田恒彦受刑者も、今回の事件で大久保被告を取り調べた際に「(検察内部で)これから偉くなるのは斎藤さんだ」と話したという。しかも斎藤副部長は、小沢を強制起訴した検察審査会にも深く関わっていた。
「昨年9月上旬に検察審が『起訴議決』を出す前に義務付けられた検察官の意見聴取に出席し、犯罪の謀議に加われば共犯に問われる『共謀共同正犯』の成立条件を説明。1958年の最高裁判例を持ち出して1時間以上、ド素人の審査員に“講義”を続け、強制起訴に導いた張本人でもあるのです」(司法関係者)
なぜ、エース検事は消えたのか。当時の東京地検次席検事で小沢捜査を主導した大鶴基成氏(56)は、8月1日付で定年まで7年を残して早期退職。同じく特捜部長だった佐久間達哉氏(54)も左遷され、現在は閑職の身である。
「斎藤氏も詰め腹を切らされた可能性はあります。ただ、これ以上、経歴に泥が付かないような配慮かもしれません。4人の公判担当のうち、有望株だった小長光健史検事(39)は論告求刑を待たずに6月2日付で法務総合研究所に出向し、本人は敗色濃厚の公判から抜け出せて小躍りしたそうです。いずれにしても検察側が負けを認めた措置には変わりありません」(検察事情通)
実際に検察が敗北を認める判決は言い渡されるのか。検察に詳しいジャーナリストの魚住昭氏が予測する。
「大久保被告については、虚偽記載への関与を示す調書が却下されており、少なくとも陸山会事件は無罪の公算が大きい。石川被告は4億円の不記載が、本人が主張するように単なる過失か、それとも故意によるものか、裁判所の判断は微妙なところです。仮に故意と認定されても、不当な取り調べで『自白』を強いられた以上、重い量刑にはなりません。罰金刑の可能性もありますが、判決を下す登石郁朗裁判長の経歴を見ると、いわゆる予定調和的な判決が多く、執行猶予付きの禁錮刑もあり得ます。後任の池田氏の量刑も石川氏の量刑と連動する形になるでしょう。いずれにしても、大疑獄事件であるかのような捜査の行き着く先が、この程度の判決なのです。検察の尻馬に乗って大騒ぎしたマスコミも自問自答せざるを得ない判決になるはずです」
だが、検察以上に往生際が悪いのが大マスコミなのだ。
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◆石川知裕議員の事情聴取録音記録を東京地裁が証拠採用/東京地検・前田元検事の調書証拠申請取り下げ2011-01-21 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
<陸山会事件>石川議員聴取、録音記録を証拠採用 東京地裁
毎日新聞 1月21日(金)2時33分配信
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の公判前整理手続きで、石川議員が検察の事情聴取を録音した記録を東京地裁(登石郁朗裁判長)が証拠採用することが20日、分かった。地裁は3人の取り調べを担当した検事4人の証人尋問も決定。2月7日に始まる公判では検察の取り調べのあり方が激しく争われることになる。
石川議員は昨年5月、小沢元代表を「起訴相当」とした東京第5検察審査会の議決(昨年4月)を受けて東京地検特捜部から再聴取された際、取り調べの模様をICレコーダーで録音。「供述が変遷すると検察審査会に悪い影響を与える」などと検事に自白を誘導されたとして、弁護側が録音内容を書面化し、証拠請求していた。
また、石川議員が勾留中に拘置所から弁護人に宛てた手紙も証拠採用される。手紙には「『独断でやったと言っているといつまでも保釈されないぞ』と検事に言われた」などと記されているという。
一方、石川議員側が捜査段階に容疑を認めたとされる供述調書の任意性を争う姿勢を見せていることなどから、検察側は取り調べた東京地検特捜部副部長(当時)や、再聴取を担当した検事ら4人を証人申請し、地裁に認められた。
ただし、元秘書の大久保隆規被告(49)の取り調べ検事で、郵便不正事件を巡る証拠隠滅罪で起訴された元大阪地検特捜部主任検事の前田恒彦被告(43)は含まれないという。前田元検事がとった調書の採用は弁護側に不同意とされ、検察側が撤回した。大阪地検特捜部を巡る一連の事件が石川議員らの公判に影響を与えないよう考慮したとみられる。
他に検察側請求の証人として、「石川議員らに現金1億円を渡した」などと証言したとされる中堅ゼネコン「水谷建設」元幹部らの証人尋問も決めた。
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陸山会事件、前田元検事の調書証拠申請取り下げ
小沢一郎・民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、20日に開かれた小沢氏の元秘書3人の第13回公判前整理手続きで東京地検が、同会元会計責任者・大久保隆規被告(49)の捜査段階の供述調書の証拠申請を取り下げていたことがわかった。
大久保被告の取り調べは、郵便不正事件を巡る証拠隠滅事件で起訴された大阪地検特捜部元主任検事・前田恒彦被告(43)(懲戒免職)が担当。大久保被告は容疑を大筋で認めていたが、公判で否認する方針に転じたため、弁護側が調書の証拠採用に反対していた。東京地検は、証拠申請を撤回することで、公判で前田被告の取り調べの是非が争点となるのを避ける狙いがあるとみられる。(2011年1月21日07時11分 読売新聞)
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◆郵便不正事件証拠改ざん 死も考えた前田恒彦被告初公判 「ずっと支えたい」=妻の陳述書 2011-03-15 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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◆特捜部の是非を問わずに終わった「検察の在り方検討会議」/転落が運命づけられた小沢氏と堀江氏2011-04-14
2011年03月31日(木)現代ビジネス「ニュースの深層」 伊藤 博敏
「3月末までにとりあえずまとめてみた、といった感じの内容で、検察の在り方を問う内容にはなっていません。単なるガス抜き、検討会議の名が泣きます」
大阪地検特捜部の資料改ざん、犯人隠避事件を機に、法相の私的諮問機関としてスタートした「検察の在り方検討会議」の傍聴を続けてきた司法関係者が、3月31日にまとまった提言に対し、こう不満を漏らす。
当然だろう。
提言の柱は、特捜部のチェック体制の強化と取り調べの可視化(録音・録画)の範囲拡大。テクニカルな問題であって、「検察の在り方」、もっといえば「特捜捜査」に対する根源的問題に迫っていない。
*ピークだった「金丸事件」
権力は腐敗する。
この前提のもとで、中央政界の「永田町」と、官僚機構の「霞が関」のチェック役を担ってきたのが地検特捜部だった。
自民党長期政権のもとで、「政官業」のトライアングルが強固に出来上がり、放置すればとめどなく腐敗、利権癒着は度し難いものになっていった。
「ドン」と呼ばれた故・金丸信自民党元副総裁が、金融債や金の延べ棒で、70億円近くを蓄財していたのがいい例で、一度は見逃そうとした検察が、東京国税局の手を借りて、脱税事件に仕上げた時、国民は拍手喝さい、マスコミは検察と一体となって、その構造に切り込んでいった。
「小沢捜査」もそうである。金丸氏の薫陶を受けた小沢氏に、政治資金を不動産に変える計算高さはあったが、違法の認識はなかった。小沢氏を恐れたのは、その剛腕で「霞が関」を自在に操って、自分たちの権益を奪うのではないかと心配した官僚たちであり、そこには当然、「法務・検察」も含まれた。
つまり、堀江氏と小沢氏は、その存在を面白く思わない官僚やマスコミといった既得権益層が、同じ価値観を持つ検察と握ったことで、転落が運命づけられた。
日本の権力構造が、どこにあるかを示した事件であり、『日本権力構造の謎』の著者であるカレン・ヴァン・ウォルフレンは、その名もなきエリート集団による仕掛けを、「画策者なき陰謀」と呼んだ。
*「一部可視化」では何も変わらない
高学歴で共通の価値観を持つエリート集団が、官僚機構、検察・国税といった捜査当局、マスコミ界にいて、「異物」を取り除く。彼らこそ、本当の意味の権力者。彼らにとっては、孫正義、三木谷浩史といった大物ベンチャー経営者も、数年前までは、秩序の側のこちら側に来るか、向こうに落ちるかの要チェック対象だった。
「法」に基づいて捜査するハズの特捜部が、感情に流され、「堀江の錬金術」「小沢の蓄財術」を、正義や不文律の観点から捜査着手するから検察捜査は歪む。
そのポピュリズムに自己目的化という要素も加わって、捜査は暴走、厚労省元女性局長の冤罪事件を生んだ。
つまり特捜部は、国民の側に立っているのか、という根源的なところを問われている。堀江氏の逮捕で新興市場マーケットが大崩れとなり、小沢捜査で民主党の権力機構が大きく変化したことを思えば、特捜部の自己目的化した正義感による捜査には問題が多い。
検察の在り方を考えるなら、検討会議は「特捜部」の「検察捜査」の意義や意味を問い直すべきではなかったか。
一部可視化では、検察は何も変わらず、「試案」で「特捜部は廃止する必要はない」との文言が盛り込まれ、それはさすがに、「特捜部の組織の在り方を見直すための検討を行うべき」という言葉に代わったという。
大阪地検事件は、「国家と検察」の関係を問い直すいいチャンスだった。検察を通じて、日本の権力構造が停滞、活力ある組織や人物を検察が封じるという「負の側面」も見えている。検討会議が「ガス抜きの場」で、特捜部が以前と同じ形で存在するなら、その是非を再度、考える場が必要だろう。 *強調(太字・着色)リンクは、来栖
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◆小沢一郎氏裁判 第5回公判/「政治資金規正法を皆さん勘違い」=安田弁護士2011-11-30