米、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館を移転する方針 2017/12/5

2017-12-09 | 国際

2017/12/7 中日新聞  核心 
米、中東和平の仲介放棄  エルサレム首都認定  公約固執 アラブの「自制」無視

        
          エルサレムを巡る経過 
 
 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館を移転する方針を決めた。中東和平交渉の中立的な調停役を放棄するような姿勢にパレスチナやアラブ諸国は激しく反発。交渉再開は極めて難しくなり、和平が遠のくばかりか、イスラム過激派のテロを誘発するなど中東情勢がさらに悪化する恐れもある。(ワシントン・後藤孝好、カイロ・奥田哲平)
 米政府高官は5日、トランプ氏の新方針について「エルサレムは歴史的にイスラエルの首都であり、首都機能があるという現実がある」と指摘。「米大使館の場所が和平交渉の障害にはならないことは明らかだ」と説明した。
 オバマ前大統領まで歴代の米政権が積み上げてきた政策の大転換に、外交・安全保障上、切迫した理由は見当たらない。トランプ氏は昨年の大統領選で、集票力のある親イスラエルのロビー団体やキリスト教右派の支持を得るため、大使館移転を公約に掲げた。政権発足1年を前に、公約実現をアピールし、低迷する支持率を回復する狙いがあるとみられる。
 「エルサレムの帰属は和平交渉で決める」という国際合意を度外視する背景には、トランプ氏の周囲にユダヤ系の人脈が多い事情もある。娘婿で中東政策を担うクシュナー大統領上級顧問は、イスラエルのネタニヤフ首相と家族ぐるみの付き合いがあるユダヤ教徒。ムニューシン財務長官やコーン国家経済会議(NEC)委員長らもユダヤ系だ。
 トランプ氏は、歴代米政権が中東和平の唯一の解決策として支持してきたパレスチナとイスラエルの「2国家共存」にもこだわらない考えを示し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)を「反イスラエル的」と批判し脱退を表明。過度な肩入れは、イスラム教徒の反米感情に火を付けかねない。米FOXニュースによると、米軍は中東の複数の大使館で安全強化を図るなど、早くも対応を迫られている。
 実際、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸などでは6日「怒りの日」と名付けた抗議活動が繰り広げられた。ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスの幹部ガジ・ハマッド氏は本紙に「米国は公平な仲介者ではなくなった。われわれにはインティファーダ(反イスラエル闘争)や何千人もの殉教の歴史がある」と警告。イスラエル側との衝突に発展する可能性もある。
 トランプ氏は「究極の取引(ディール)を掲げて中東和平問題の解決に意欲を示してきた。具体的な和平案は明らかでないが、アラブ諸国を交渉に巻き込むことを模索しているとされる。イスラエルのツィピ・ホトベリ外務副大臣も本紙の取材に、イランを「共通の敵」としてサウジアラビアなどとの関係改善に意欲を示していた。
 しかし、アラブ諸国の自制要求を無視した今回の決定で、協力を取り付けるのは難しくなった。イスラム教徒にとっては単なる政策転換ではなく、聖地への冒瀆になる。エルサレムの最高聖職者ムハンマド・フセイン師は本紙に「米国は、決定がもたらす悪影響の責任を取れるのか。世界中のイスラム教徒に聖地を守るよう呼びかける」と語った。

  

 3宗教の聖地  イスラエル、戦争で併合
 トランプ氏がエルサレムを首都と認めることは、米国がイスラエルの主張を一方的に認めることを意味する。エルサレムはユダヤ教やイスラム教、キリスト教それぞれの聖地が集まり、帰属問題は中東和平交渉の最大の争点だ。イスラエルは1948年の第1次中東戦争で西エルサレムを支配し、67年の第3次中東戦争でヨルダン領だった東エルサレムを占領、併合した。
 イスラエルは東西の全域を「不可分の永遠の首都」と主張し、西エルサレムに首相府や国会など政府機関を置くが、国際社会で首都と承認する国はなく、日本をはじめ各国は大使館をテルアビブに於く。一方、パレスチナは東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置づける。
 イスラエルは67年以降に東エルサレムに入植を拡大する「ユダヤ化」を勧め、現在は約二十万人が所従。占領地への移住は国際法違反と指摘される。1㌔四方の壁に囲まれた旧市街には、ユダヤ教の「嘆きの壁」、キリスト教の「聖墳墓教会」、イスラム教の「アルアクサ・モスク」や「岩のドーム」がある。(カイロ・奥田哲平)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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