余命を諦めた「木嶋佳苗」の東京拘置所から愛をこめて(5)早期の死刑執行を要請 『週刊新潮』2017/4/20号

2017-04-21 | 死刑/重刑/生命犯

木嶋佳苗「遺言手記」全文(5) 〈自殺願望ではなく、生きてゆく自信がない〉早期の死刑執行を要請
〈裁判所が真実を認める期待は皆無だから一毫の望みも持っていないということになります――〉4月14日に上告が棄却され、死刑が確定する木嶋佳苗被告(42)。刑の早期執行を請願するという、その思惑とは。
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 一審判決からの5年間、私を支えてくれたのは血縁以外の人達で、みな獄中者のサポート経験がない人ばかり。それでもいわば鵺(ぬえ)のような死刑制度と向き合い、葛藤や苦悩をしながら安らぎを与えてくれました。
 現在、130人程の死刑確定者のうち約7割が再審請求をしている。その多くは、再審請求中は執行を回避できると信じて形だけの請求を続けている人だと断じてもよいでしょう。
 私は無実でありながら死刑囚と呼ばれることに早晩なり(※4月14日に上告棄却)、それは不運だけれど、幾つもの「もしも」が幸いしない限り素晴らしい支援者に恵まれることなどなかったのも事実で、これは本当に幸せでした。しかしながら、そういう方々に背を向け続け、私の死を誰よりも強く望んでいる母を思うと、今生の別れを再審請求により引き延ばすべきではないと考えるのです。
■生きてゆく自信がない
 私の父は妻である母に心を蝕まれた結果、還暦で自死を選びました。私が30歳のときです。4人の子ども達に残された遺言状を見るまで父の懊悩や2人の不仲など知る由もなかったし、限界まで追い詰められていたことに気付けなかった4人は遺骸の前で慟哭するほかなかった。母は父の親族から葬儀の喪主になることを許されなかったほどです。
 そう言えば事件後、父の遺書を家宅捜索で押収した刑事は、取調室で何度もこれを読み上げ私の両親を侮辱しました。苛酷な取調べや母に対する想いは弟妹に伝えてあります。
 生みの母が私の生命を否定している以上、確定後に私は法相に対し、早期執行の請願をします。これこそ「ある決意」に他なりません。通常、全面否認事件での女子の執行は優先順位が極めて低いものですが、本人からの請願は何よりも強い“キラーカード”になる。
 まったくもって自殺願望ではなく、生きてゆく自信がない、それだけです。
 最後に、先ほど書いた信書の発受と面会を希望する人について。確定者になると、この人物についてあらかじめ「外部交通許可申請書」により届け出ることになっています。胸臆を開き、安心して付き合える人はそう多くいないもの。私は裁量枠での許可申請をする相手は一人と決めました。この「もう一つの決意」を拘置所が理解し、申請を諒として頂くためにも手記執筆の依頼を受けたのです。私がいつ霊界にゆくのか冥々としたものですが、この世にいる限り文筆による表現活動は続けていたい。決意の詳細を綴る機会を切に願い筆を擱(お)くことにします。
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 週刊新潮 2017年4月20日号 掲載  ※この記事の内容は掲載当時のものです

 ◎上記事は[デイリー新潮]からの転載・引用です

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