狭い沖縄に米軍基地の75%が集中するのは地勢的・戦略的要因からだ 「綸言 汗の如し」

2010-05-08 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
「二度と来るな」
中日新聞【編集局デスク】2010年5月8日
 何をするために沖縄へ行ったのか。鳩山由紀夫首相への批判が沸騰している。米軍普天間飛行場の移設問題で、首相は「最低でも県外」との公約を破り、県内と鹿児島県の徳之島への移設を表明した。
 その理由が聞いて恥ずかしくなるほど幼稚だ。「米海兵隊が持つ抑止力への理解が浅かった」。日米同盟の一方の当事国の長として米軍の役割は初めからわかっていなければいけない。あの狭い沖縄に米軍基地の75%が集中するのは地勢的・戦略的要因からである。
 批判されるもう一つは、言葉があまりに軽いことである。「綸言(りんげん)汗の如(ごと)し」という言葉がある。中国・前漢の歴史を記した「漢書」の挿話から生まれた。
 君主の言葉は、はじめに口から出たときには細くても、人民に届くころには、組み糸(綸)のように太くなる。だから君主の言葉は、いったん外に出れば取り消すことができない。汗を体の中に戻すことができないのと同じだ。
 安全保障政策と同様にこのことが首相にはよく理解できていなかったらしい。公約違反との批判には「公約は選挙の時の党の考え方だ。党としての発言ではなく私自身の代表としての発言ということだ」と言い訳する。党の考え方と代表の発言は違うのか。首相には「発言汗の如し」という言葉を贈らねばなるまい。
 あるアンケートで首相は愛読書として「西郷南洲遺訓」を挙げている。この中に有名な一節がある。
 「生命も要らぬ名声も要らぬ、官位も金も要らぬという人間はどうにも始末に困るものだ。この、始末に困るような人間でなければ、艱難(かんなん)を共にして国家の大問題を解決してゆくことはできるものではない」
 始末に困るような首相だったら沖縄の人たちに「二度と来るな」なんて言われなかったろうに。西郷南洲遺訓の熟読をお勧めする。(名古屋本社編集局長・志村清一)
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5月7日付 編集手帳
 “小”政治家ならば失言になる言葉も、大政治家が語れば名言で通る。ドゴールいわく、〈政治家は心にもないことを口にするのが常なので、それを真に受ける人がいるとびっくりする〉◆晴山陽一さんの『すごい言葉』(文春新書)によれば、フランス大統領に就任して5年目、1962年の発言という。懸案のアルジェリア危機を収めた年であり、気が緩んだのか、本音がつい口をついて出たのだろう◆政治家たる器の大小はともかくも、懸案いまだ道半ばの人がドゴールを下手にまねて、おのが言葉の信用度をみずから減じてはいけない◆普天間移設をめぐり、鳩山首相は昨年の衆院選に向けた遊説で「最低でも県外」と明言していた。今になって、あれは党の公約ではなかった、と釈明している。個人としての発言だった、と。県外移設が難しいのを承知で心にもないことを約束したのだとすれば、罪つくりである◆ドゴールの言葉に晴山さんは感想を添えている。〈口と心の間の距離がいちばん長いのが政治家という種族であるらしい〉と。基地ならぬ、口の移設を急がねばならない人がいる。心のそばへ。(2010年5月7日01時26分 読売新聞)
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天声人語2010年5月8日(土)付
 安心を与える大きな政府か、活力を生む小さなそれか。国家像を語るのに避けて通れぬ設問だが、有事に問われるのは大小より強弱、そしてリーダーシップらしい。そう教える出来事が続く▼国の破産を防ぐため、ギリシャのパパンドレウ首相は全人格をかけて国民に我慢を説く役回りだ。自国通貨が暴落して済んだ頃と違い、混乱はユーロを介して世界に飛び火する。火元責任は大きい▼ユーロ危機も追い風としたか、英国の総選挙で、一貫して欧州統合に冷ややかだった保守党が第1党に返り咲いた。ただ、2党間の交代は「前にダメだった党」に託すこと。有権者は過半数を与えなかった。43歳のキャメロン党首に首相への目算はあるか▼はるかに重苦しい決断を迫られそうなのは、韓国の李明博大統領だ。黄海で哨戒艦が沈んだ原因が、魚雷攻撃である疑いが出てきた。韓国の船を狙う国はいくつもない。46人の殉職は、熱い心と冷めた頭の両方を大統領に求めている▼イラクにアフガンと、米国は万年有事。中国との二極時代を意識しながらも、オバマ大統領は核軍縮の長い道のりに踏み出した。そこに、未曽有の海洋汚染とされるメキシコ湾の原油流出である。神は越えられる試練しか与えないはずだが……▼普天間は、米国にすれば数ある懸案の、小さめの一つだろう。自らの言動でそれを大ごとにしてしまったわが首相。どんな有事もリーダーの資質を試すが、「ひとり有事」とは情けない。地球大乱の気配がにわかに漂う中、この人物に国を任せる間の悪さを思う。

安全保障の現実〔在日米軍の役割〕をしっかり説明した上で沖縄などに負担を頼むべきだ 
日本の安保意識試す中国軍 〔基地問題〕=対米従属か対中隷属か・・・

2 コメント

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Unknown (rice_shower)
2010-05-09 00:35:27
google earthで上海を中心にして、日本が上になるように45度回転させて見ると、海洋展開を図る中国にとって、日本列島が正に海の長城の如く立ち塞がり、そのkeystoneが沖縄で有る事が実感できます。
元防衛省トップは、「在沖縄米海兵隊は何に対する抑止力か?」の問いに対し、台湾、北朝鮮有事などではなく(それも有ろうが)、「中国による南西諸島の離島占拠」であると明言しています。
政府にもメディアにも国民にも、これリアリズムが欠落しています。
(私の理想は、米軍が居なくなり、その能力を上回る屈強な自衛隊が海の長城を守護する、というイメージですが)
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Unknown (ゆうこ)
2010-05-10 22:56:00
rice_showerさん。
>日本列島が正に海の長城の如く立ち塞がり、そのkeystoneが沖縄で有る事が実感できます。
 そうなんですか! ありがとうございます。
>米軍が居なくなり
>自衛隊が
 岡本行夫さんが、全く同じことを言っていますね。
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