当時このころ、ことのほかに疫癘(えきれい)とてひと死去す。これさらに疫癘によりて初めて死するにあらず。 蓮如上人『御文』
今週のことば
中日新聞 2020.5.19 火曜日 朝刊
中村 薫
蓮如は、人は疫病で死ぬのではないという。生まれた時から死は定まっており、驚くことではないと。それは道理としては納得できるが、現実に自分たちに係わってくるとそうはいかない。それが情の世界である。
そんな中、疫病は何度も人類に襲いかかってくる。有史以来手を替え品を替え襲ってきた。蓮如はその都度、静かに受け容れていった。今日のように医学の治療はなかったので、ただ念仏して耐えることしかなかった。しかし耐えながら辛抱することは、とても大変なことであった。ご承知のように、念仏は決して祈禱ではない。さりとて、諦めて生き方を放棄するものではない。むしろ、どうすることも出来ない身の事実を引き受けていったのである。
阿弥陀如来は、無自覚な罪深い人間でも必ず救うといわれる。生かされてあることに感謝し念仏することである。
(同朋大名誉教授) ※中村薫さんは8日に死去されました。
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
* この地球上に住むすべてのものが、大空という一つ屋根の下の、大地という床の上に住む兄弟仲間じゃないか 「今週のことば」2020.5.12