アメリカに奪われた尖閣諸島 『月刊日本』

2012-07-25 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

アメリカに奪われた尖閣諸島
7月24th,2012 by月刊日本編集部
■尖閣問題の背後に潜むアメリカの存在
  国力が低下すると、その国の周縁地域には遠心力が働く。ユーロ危機により財政再建が困難となっているPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)が、広域国家・EUの周縁に位置しているのは偶然ではない。
 これは日本においても同様である。普天間問題をめぐる沖縄の人々の反発は、もはや民主党政権に地方の遠心力を押えこむ力がないことを表している。民主党がマニフェストで掲げていた地域主権は、今日において実質的な実現をみたのである。
 この遠心力が領土問題へと発展したとき、それは国家分裂を招くことになる。
 4月16日、シンポジウムに参加するためアメリカのヘリテージ財団を訪れていた東京都知事・石原慎太郎氏は、都が尖閣諸島の一部を購入する方針を決めたことを明らかにした。購入の対象として魚釣島と北小島、南小島の3島を挙げ、後に久場島も含めると発表した。
 石原氏の発表は日本中にナショナリズムを巻き起こした。尖閣諸島の購入や活用のために都が募集した寄付金は、6月には10億円を突破するまでに至った。メディアや世論の多くも、石原氏の決断を支持しているように見える。
 中国の脅威に対抗するために尖閣諸島を購入するというのは、領土を守るための一つの選択肢としては理解しうるものである。尖閣諸島の行政区域である石垣市の中山義隆市長もそれを支持している。
  しかし、このナショナリズムの陰に隠されている問題がある。それは尖閣諸島におけるアメリカの存在だ。以下では、この点に注目しつつ尖閣諸島を含む沖縄問題について論じていく。なお、本稿は、関西学院大学教授・豊下楢彦氏の論文「安保条約と『脅威論』の展開」に多く依っている。
■日本人が行くことのできない島
 尖閣諸島は5つの島と岩礁からなっており、都が購入対象とした4島は現在個人の所有となっている。残り1島の大正島は国有地である。
 社民党の照屋寛徳議員の質問主意書に対する、2010年10月22日付の菅政権の答弁書によれば、久場島と大正島は1972(昭和47)年5月15日より米軍に射爆撃場として提供され、米軍がその水域を使用する場合は原則として15日前までに防衛省に通告することとなっているが、1978年6月以降は通告がなされていない、という。そのため、それらは30年以上にわたり使用されていないものと考えられる。
 また、これらの区域に地方公共団体の職員等が入るためには「米軍の許可を得ることが必要である」とされている。つまり、これらの島嶼は実質的に米軍の管理下に置かれており、日本人が行くことのできない領土なのである。
 2010年に日本中を騒がせた中国漁船衝突事件は、この久場島沖の日本領海内で起こったものである。
 日本人が行くことのできない米軍管理下の領域内で起こった事件なのだから、島の防衛は米軍が担当すべきであったはずだ。また、日米安保条約に「抑止力」があるならば、漁船衝突という事件を防ぐこともできたはずだ。
 しかし、中国に対して沸騰したナショナリズムに押し流されて、こうした問題が問われることはなかった。
 その後、当時の外務大臣・前原誠司氏がクリントン国務長官から、尖閣諸島が日米安保の適用対象であるという言質を得て、「勇気づけられた」と感謝の意を表明することとなった。
 日本国憲法を堅持している以上、日本は米軍の力に頼らざるを得ない。前原氏のとった行動は、領土を守るための一つの選択肢としては理解しうるものである。
 しかし、そこにあるアメリカの不作為、島嶼をめぐる日米関係に目を向けないのであれば、それはあまりにも不誠実である。中国の属国となることを避けるためにアメリカの属国となることを選択する人間に、国益を語る資格はない。
■なぜアメリカは尖閣諸島を欲したのか
 久場島と大正島の米軍への提供は、昭和47年5月15日に開催された日米合同委員会において、日米地位協定2条1(a)の規定に基づき決定されたものである。
 同時に、日米地位協定では2条3において、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない」とも定められている。
 30年以上も使用していないのだから、アメリカはもはや島を必要としていないはずである。それにも関わらずアメリカが返還しようとしないのはなぜか。
 ここで注目すべきは、それが決定された昭和47年5月15日という年月日である。すなわち、アメリカは沖縄返還と同時に尖閣諸島の提供を求めたのである。
 以下全文は本誌8月号をご覧ください。
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尖閣諸島購入問題の本質=「中立の立場」という無責任きわまりない米国の立ち位置を覆い隠す役割 2012-05-13 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 
 「尖閣諸島購入」問題の本質 米国の立ち位置隠し
 豊下楢彦
 中日新聞 文 化 2012/5/10 Thu.
 石原慎太郎東京都知事が、尖閣諸島のうち個人所有の3島を都として購入する方針を明らかにしたことで、その狙いや賛否をめぐり議論百出の状態である。しかし、問題の本質をえぐった議論は提起されていない。
 石原氏は購入の対象として魚釣島、北小島、南小島の3島を挙げている。しかし、同じく個人所有の久場島については全く触れていない。なぜ久場島を購入対象から外すのであろうか。その答えは同島が、国有地の大正島と同じく米軍の管理下にあるからである。海上保安本部の公式文書によれば、これら2島は「射爆撃場」として米軍に提供され「米軍の許可」なしには日本人が立ち入れない区域になっているのである。
 それでは、これら2島で米軍の訓練は実施されているのであろうか。実は1979年以来30年以上にわたり全く使用されていないのである。にもかかわらず歴代政権は、久場島の返還を要求するどころか、高い賃料で借り上げて米軍に提供するという「無駄な行為」を繰り返してきたのである。ちなみに、一昨年9月に中国漁船が「領海侵犯」したのが、この久場島であった。それでは事件当時、同島を管轄する米軍は如何に対応したのであろうか。果たして、米軍の「抑止力」は機能していたのであろうか。
 より本質的な問題は、他ならぬ米国が尖閣諸島の帰属のありかについて「中立の立場」をとっていることである。久場島と大正島の2島を訓練場として日本から提供されていながら、これほど無責任な話があるであろうか。なぜ日本政府は、かくも理不尽な米国の態度を黙認してきたのであろうか。
 言うまでもなく日本政府は一貫して「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題などは存在しない」と主張してきた。ところが米国は、1971年に中国が公式に領有権を主張して以来、尖閣諸島について事実上「領土問題は存在する」との立場をとり続けてきたのである。
 とすれば日本がなすべき喫緊の課題は明白であろう。尖閣5島のうち2島を提供している米国に、帰属のありかについて明確な立場をとらせ、尖閣諸島が「日本固有の領土である」と内外に公言させること。これこそが、中国の攻勢に対処する場合の最重要課題である。これに比するなら「3島購入」などは些末な問題にすぎない。
 しかし、仮に同盟国である米国さえ日本の主張を拒否するなら、尖閣問題が事実として「領土問題」となっていることを認めざるを得ないであろう。その場合には、日中国交正常化以来の両国間の「外交的智慧」である「問題の棚上げ」に立ち返り、漁業や資源問題などで交渉の場を設定し妥結をめざすべきである。
 いずれにせよ、石原氏が打ち上げた「尖閣諸島購入」という威勢の良い「領土ナショナリズム」は結局「中立の立場」という無責任きわまりない米国の立ち位置を覆い隠す役割を担っているのである。
(とよした ならひこ)=関西学院大教授、国際関係論・外交史
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