連合赤軍事件 坂口死刑囚が短歌投稿 獄中で心の動き詠む
東京新聞 2016年7月7日 夕刊
あさま山荘事件など一連の連合赤軍事件で死刑が確定した坂口弘死刑囚(69)が歌誌「心の花」への短歌の投稿を始めた。外部との手紙などのやりとりが制限されている死刑囚の投稿は異例だ。7月号に掲載された最初の投稿は<見栄(みえ)ならむと苦笑をしつつ記しをり職業欄に文筆業と>など4首。同誌を主宰する佐佐木幸綱さん(77)は「人生の3分の2獄中にあるという中で、独特の視点で歌の世界を作っていってほしい」と期待を寄せる。 (加古陽治)
坂口死刑囚は、逮捕後に獄中で短歌を始め、死刑が確定する前は朝日歌壇(朝日新聞)に投稿していた。
しかし、一九九三年に判決が確定すると外部との通信が制限され、発表の手段を失った。その中で、例外的に手紙のやりとりを許された佐佐木さんの指導を受けながら、事件への反省や回想、東京・小菅拘置所の日々を歌にしてきた。以後、二〇〇七年の「常しへの道」と一五年の「暗黒世紀」の二冊の歌集がある。
佐佐木さんによると、坂口死刑囚が入会を申し込んできたのは今年三月。手紙で「『暗黒世紀』の印税が入ったので(会費を納入し)、投稿活動を始めたい」という趣旨の希望がつづられていた。
坂口死刑囚の才能を高く評価する佐佐木さんは「一般会員と全く同じ扱い」で入会を受け入れた。
<わが次の日に生れしも先に逝きし女優の映画をみつつ悲しむ><入牢(じゅらう)して酒、煙草断つくらしして寿老(じゅらう)の人にならむとしをり><囚(とら)はれぬ人間(ひと)にこそならめ階(かい)くだりの右足着地はけふにて止めむ>
情報が制限され、決まった景色のほかは見られない塀の中で、わずかな発見や老いへと向かう心の動きを丁寧に詠んでいる。
死刑囚による短歌・俳句誌への発表は、最近では東京・杉並の高齢女性殺害事件の岡下香元死刑囚(〇八年執行)が歌誌「未来山脈」に執行直前まで投稿していた例があるほか、オウム真理教事件の中川智正死刑囚(53)が一二年に俳人と二人で俳句の同人誌を出した例などがある。
<連合赤軍事件と坂口弘死刑囚> 連合赤軍事件は、1971~72年に新左翼組織・連合赤軍がメンバーへのリンチ(山岳ベース事件)で12人を、長野県軽井沢町のあさま山荘に立てこもった際に警官ら3人を殺害するなどした事件。坂口死刑囚は森恒夫元被告(公判中に自殺)、永田洋子元死刑囚(2011年に拘置所で病死)に次ぐナンバー3。拘置中に『あさま山荘1972』(上・下)などを出し、反省を込めて事件を総括している。
◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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◇ 正義のかたち:死刑・日米家族の選択/6 連合赤軍死刑囚支えた母
◇ 元連合赤軍死刑囚坂口弘氏の歌 “後ろ手に手錠をされて執行をされる屈辱がたまらなく嫌だ”
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