「北朝鮮とシリアの非道な独裁システム」黒井文太郎氏 / 「今日そこで起きているホロコースト」土井香苗氏

2014-03-31 | 国際

北朝鮮とシリアの非道な独裁システム
 ワールド&インテリジェンス ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ 2014/03/29(土) 10:34:47 
 3月28日、国連人権理事会で北朝鮮政権の人権侵害を告発する決議が採択されました。ヒューマンライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんがこの問題の本質を突く、非常にわかりやすい解説レポートを書かれています。
 ▽今日そこで起きているホロコースト:北朝鮮の驚くべき真実(ヤフーニュース 3月29日 土井香苗氏レポート)
 ぜひ皆様にも読んでいただきたい文章です。金正恩政権の何が最大の問題なのかが、ここにあります。
 北朝鮮でこうした国家犯罪がまかり通っているのは、かの国が独裁政権だからです。独裁とは、同国人を抑圧することでのみ存続できるシステムです。世界のどこにも「良い独裁」などはありません。
 こんなことは北朝鮮に行ったことのない人でも、ちょっと考えればわかると思うのですが、日本でもほんの15年前くらいまで、政治家にもジャーナリストにも学者にも、北朝鮮シンパのような人がいました。
 私が以前、北朝鮮に行った際、マスゲームやらモデル小学校やらを見てゲンナリしていたときも、本気で喜んでいた人もいました。良く言えば「素直な人」、悪く言えば「騙されやすい人」ということでしょうか。
 上記した元北朝鮮シンパの方々のなかにも、実際に北朝鮮に行ったことのある人や、北朝鮮側といろいろ接触のある人もいました。北朝鮮の人はサバイバルのために指導者崇拝を貫かなければならないわけですが、そういうことがわからないのですね。いわゆるリベラルとか進歩的文化人とかの系統に多かったですが、そういうのは反米バイアスとかいうよりも、インテリジェンスのリテラシーの欠如であり、もっと言えば人間としての洞察力の欠如といえるかと思います。
 シリアの問題もまったく同じです。今度の内戦前から、かの国でも、いたるところに独裁者の写真が掲げられ、テレビも新聞も独裁者賞賛プロパガンダばかりでした。
 小学生は1年生から指導者崇拝を強要され、大人は選挙で独裁者への投票を強要されます。独裁者の批判をした人は刑務所に入れられて拷問を受けます。そのために国じゅうに秘密警察の監視網が敷かれていました。
 北朝鮮では終身強制労働も広く行われていますが、シリアの場合は、面倒なのか簡単に処刑してしまいます。現在の内戦はそのメンタリティの延長の結果です。
 なぜそんなことが行われてきたかというと、理由は簡単な話で、独裁だからです。そんなことはちょっと考えればすぐわかると思うのですが、これも上記したちょっと前までの北朝鮮と同じで、シリアとアクセスがある人も含めて、そこを理解できていない言説を散見します。
 北朝鮮に関する情報は、北朝鮮政府側からのものと、そうでない側からのものがありますが、どちらをより参考にすべきかは明白です。シリアの場合もまったく同じです。
 北朝鮮では戦慄の人権侵害が続いていますが、シリアでも独裁者による直接的な国民の殺戮が今も進行中です。独裁とはそういうものです。
 上記レポートの最後には、こう書かれています。
「国際法廷による裁きがただちにもたらされると期待するのはナイーブすぎるのは言うまでもありません。ただし、現時点から法的責任を問うステップを踏み始めることは、それがICCへの付託であろうと特別法廷の設置であろうと、とても重要です。
 なぜなら、国際的訴追という強いシグナルは、北朝鮮指導者たちに対し、新たな人権侵害を行うのを思いとどまらせることにつながる可能性があるからです。そしてもちろん、将来的に法廷での審理が可能になる日に向けて証拠収集を続ける取り組みは、被害者たちにいつの日か正義がもたらされることにもつながるのです。
 横田めぐみさんが拉致されてからまもなく40年。そして政治犯収容所ができてからも半世紀以上。北朝鮮の人びとはもう待てないのです。日本政府が始めた今回の歴史的なステップ。安倍首相には、最後までやり遂げるべき道義的責任とチャンスがあるのです。
 試されているのは21世紀の私たち人類の良心なのではないでしょうか」
 とても深い、重い文章です。
 北朝鮮もシリアも、独裁権力がもたらしている想像を絶する悲惨な状況を、放置するわけにはいきません。
 ◎上記事の著作権は[ワールド&インテリジェンス]に帰属します 
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今日そこで起きているホロコースト:北朝鮮の驚くべき真実
 2014年3月29日 1時34分 土井 香苗 国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表
国連の人権理事会(スイス、ジュネーブ)で28日、画期的な決議が採択されました。
 この決議は、北朝鮮の人権問題を国連の安保理で取り上げ、「対象限定制裁」そして「適切な国際刑事司法機構」に付託することを求めるものです。ここでいう「機構」には、オランダ・ハーグにある国際刑事裁判所(ICC)や国際的な特別法廷が想定されています。
 北朝鮮は三代にわたり続く全体主義的統治です。国連が政権による大規模な人権侵害を認定し、その犯罪行為への対処が国連加盟国の義務であると述べたのは北朝鮮史上初めてのことです。 そして、ここにいたるまでの道筋を引いたのは、ほかでもない安倍首相。安倍首相のリーダーシップが、今世紀稀に見る大規模な悲劇に終止符を打つという壮大な国際社会の試みに火をつけつつあるのです。
 今回の国連人権理の決議は、北朝鮮に関する国連調査委員会(COI)による報告書の発表を受けたものです。この報告書の結果国際社会の関心が一気に高まり、異例の強い内容の決議が採択されるに至りました。COIは人権理事会によって昨年設置され、北朝鮮でおきている人権侵害が「人道に対する罪」に当たるかどうかを調査し、責任の所在を明らかにするための勧告を行うことを任務としています。委員長は、オーストラリアの元最高裁判事マイケル・カービー氏。数百人に及ぶ脱北者や関係者などの聞き取り調査などを経て、北朝鮮政府による大規模な過去と現在の人権侵害のショッキングな実態を詳述する400頁近くにも及ぶ最終報告書を3月17日に人権理事会に提出しました。
 COI報告書は日本人などの拉致事件の被害者はもちろん、いわゆる「地上の楽園」運動により北朝鮮に「帰国」させられ二度と日本に戻ることができなくなった約9万3千人の帰国運動の被害者たちも「人道に対する罪」の被害者であると認定しました。
 拉致以外にも、超法規的処刑、奴隷労働、強かん、強制堕胎、強制失踪、意図的な飢餓などの実態を明らかにしたこの報告書は、現在も8万人から12万人に及ぶ人々が連座制により親子三世代にわたり政治犯収容所に送られ時に処刑もされている実態を「政治体制や指導部の脅威と見なされた、あらゆるグループへの組織的かつ広範な攻撃」であると認定しています。死ぬまで人々を強制労働させるこの政治犯収容所を柱とする北朝鮮のこのシステムによる人権侵害は、全体として人道に対する罪の一つである「せん滅」に該当すると、報告書は指摘します。
 報告書はまた、1990年代に北朝鮮全土で発生し、一部地域ではその後にも発生している広範な飢餓は、北朝鮮政府の意図的な作為と不作為の結果であり、人道に対する罪の一つに該当すると認定。これは国際法の大きな前進と言えるでしょう。
 多くの日本人もこの報告書に収められた証言には戦慄を覚えるに違いありません。元看守はCOIに対し、収容所の囚人は「人間扱いされませんでした。釈放は想定していません[…]。個人記録は完全に抹消されていました。収容所での強制労働で死ぬことになっていたのです。われわれは囚人を敵と思うよう訓練されていました。だから我々も囚人を人間だとは思っていませんでした」と告白しています。
 政治犯収容所の元囚人は、収容所にいた10年間で300体以上もの遺体の埋葬を命じられた、と証言しています。また、遺体を埋めていた丘をトウモロコシ畑に変えるためブルドーザーをかけるよう命じられた時のことを思い出してこう語っています。「重機が土を掘り返すので、遺体の一部が埋葬地から地面に出てくる。腕、脚、足など、なかにはストッキングが残っているものもありました。ブルドーザーで次々に出てくるのです。身の毛がよだちました。思わず嘔吐した人もいました。看守は穴を掘り、囚人数人に命じて地上に出ている遺体を全部投げ込ませたんです。」
 報告書には、子どもや新生児までもが政治犯収容所に拘束されている実態も明らかにしています。囚人たちは「昆虫やはつかねずみを獲って食べ、野草を摘み、看守の食糧や家畜のえさをかすめとることで」ようやく生き延びることができた、と言います。ある元囚人はCOIに対し、こう証言しました。「赤ん坊たちはおなかがガスでふくれているんです。蛇やねずみを調理して赤ん坊に食べさせるんですから。ねずみを食べられる日があれば、それはごちそうでした。動物であればなんでも食べなければならなかったんです。肉であればなんでも手当たり次第。飛んでいる動物、地を這う動物もすべて。ありとあらゆる野草もとにかく口にしました。」
 カービー委員長は、今月17日にCOI最終報告書を国連人権理に提出した際、「人権侵害の重大さ、規模、性質において、こんにちの世界で類を見ない」と強調しました。そしてカービー委員長は、ナチスやポル・ポト政権によるジェノサイドなどと同様、北朝鮮で現在進行中の人権侵害も人類史上まれに見る残虐行為であると強調し、ナチス・ホロコーストに対する反省などから生まれた「もう二度と過ちを繰り返してはならない(NEVER AGAIN )」と呼びかけました。
 今週初め、安倍首相はアムステルダムで米国のオバマ大統領及び韓国の朴槿恵大統領と会談しました。しかし残念ながら、北朝鮮における「人道に対する罪」の実態は議題にされませんでした。しかし4月下旬にはオバマ大統領の訪日も予定されています。安倍首相には今度こそ、北朝鮮における「人道に対する罪」の問題をオバマ大統領に提起し、この問題を今年の安保理で議題化するための日米の共通戦略を生み出してほしいと思います。
 中国やロシアなどが安保理の行動を妨害する場合には、別の戦略を考えることも重要になるでしょう。
 国際法廷による裁きがただちにもたらされると期待するのはナイーブすぎるのは言うまでもありません。ただし、現時点から法的責任を問うステップを踏み始めることは、それがICCへの付託であろうと特別法廷の設置であろうと、とても重要です。
 なぜなら、国際的訴追という強いシグナルは、北朝鮮指導者たちに対し、新たな人権侵害を行うのを思いとどまらせることにつながる可能性があるからです。そしてもちろん、将来的に法廷での審理が可能になる日に向けて証拠収集を続ける取り組みは、被害者たちにいつの日か正義がもたらされることにもつながるのです。
 横田めぐみさんが拉致されてからまもなく40年。そして政治犯収容所ができてからも半世紀以上。北朝鮮の人びとはもう待てないのです。日本政府が始めた今回の歴史的なステップ。安倍首相には、最後までやり遂げるべき道義的責任とチャンスがあるのです。
 試されているのは21世紀の私たち人類の良心なのではないでしょうか。
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【またも茶番に終わったシリア和平会議 アサド政権による「虐殺」の放置を黙認しただけ】 黒井 文太郎 2014-02-19 | 国際 
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