核燃基地六ケ所村 核のごみ 行き先なし/ 高レベル=最終処分場決まらず/低レベル=管理に300年

2012-02-26 | 政治

核のごみ 行き先なし 核基地六ケ所村
「高レベル」=最終処分場決まらず  「低レベル」=管理に300年
中日新聞 《 特 報 》 2012/2/25日Sat.
 原子力政策を続けていく中で最も悩ましいのが、放射性廃棄物をどうやって処分するかという問題だ。放射能を無害化するのに要する時間は低レベル廃棄物で300年、高レベルになると数十万年ともいわれ、原発が“トイレのないマンション”に例えられる理由もここにある。青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地で、日本が向き合わなければならない放射性廃棄物の現実を見た。(上田千秋)
■ドラム缶300万本収容へ
 核燃基地の北部にある低レベル放射性廃棄物埋設センター。再処理工場から約2キロ離れ、雪に覆われた一角の地表を十数メートル掘り下げた場所に、12メートル四方の埋設設備がいくつも立ち並んでいた。
 標高30~60メートルの高台にあり、事業者の日本原燃の会社案内には「十分な強度を有する岩盤で透水性も小さく、埋設設備を設置する地盤としての条件を十分備えています」と書かれていた。
 放射性廃棄物は、使用済み核燃料を処理する際に出る廃液を指す「高レベル」と、それ以外の「低レベル」とに分けられる。同センターは、低レベル廃棄物の国内唯一の最終処分場として1992年12月に操業を始めた。現在、200リットルのドラム缶計24万本分が置かれている。
 低レベル廃棄物とは、原発で使われた水や金属、プラスチック、布、紙などだ。作業員が着た防護服やマスクも含まれる。これらは各原発で液体と固体に分別。液体は蒸発させて濃縮し、固体は焼却や切断、溶融などの工程を経てそれぞれセメントなどで固め、黄色いドラム缶に詰めて原発敷地内の施設で保管する。

                 

 ドラム缶は、放射性廃棄物の専用輸送船が各原発近くの港で回収して回る。そして月に1回程度、六ケ所村のむつ小川原港に帰港し、同センターに運搬。缶の中身によって1号地(濃縮廃液や焼却灰など)と2号地(金属類やプラスチック類など)に分けられる。
 ここでの処分の工程は細かく決められている。まず、埋設設備の中にドラム缶を横に並べて置き、すき間にセメントを注入。埋設設備がいっぱいになると、漏出対策のため設備全体をコンクリートや水を通しにくい粘土質の土などで覆い、さらに4~9メートルの厚さの土をかぶせて、さら地の状態にする。
 その時点から、放射線量の調査や周辺の巡視といった管理が約300年にわたって続く。日本原燃の赤坂猛広報部長(57)は「低レベル廃棄物の主要な核種は、半減期が5年のコバルト60。半減期の10倍の期間で放射能はほぼなくなり、300年たてば自然界と同じになる」と説明する。
 最終的にはドラム缶300万本を収容できるよう、核燃基地の敷地全体の4割に当たる300ヘクタールを確保している。1年間に全国の原発から出る低レベル廃棄物はドラム缶約3万本分なので、およそ100年はもつ計算だ。
 福島第一原発では、事故後に出た大量の放射性廃棄物の行き先が問題となるが、六ケ所村に持ち込まれることはないと言う。「通常運転の原発から出た廃棄物しか搬入できない規定になっている。福島の廃棄物をここで処分するという議論はまったく起きていない」
■英仏から返還
 低レベルに比べ、処分に圧倒的な手間と時間がかかるのが高レベル廃棄物だ。
 使用済み核燃料再処理工場に隣接する高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの中に入ると、整然と並んだ100個以上のオレンジ色の円いふたが目に飛び込んでくる。ふたの下に保管されているのは、高レベル廃液にガラスを混ぜた「ガラス固化体」が入った円筒形のステンレス製容器(キャニスター)。9本のキャニスターが縦に並んでおり、計約1400本が貯蔵されている。
 これらは、英国とフランスから返還されたものだ。電力各社は1990年以降、計約7100トンの使用済み核燃料の再処理を両国の工場に委託。ウランとプルトニウムを抽出してできる混合酸化物燃料(MOX燃料)は各原発に直接運ばれ、キャニスターだけが六ケ所村に持ち込まれている。
 別の部屋には、英国から到着して間もない長さ6・6メートル、直径2・4メートルの巨大な円筒形の輸送容器が置かれていた。1基に28本のキャニスターが入っており、到着するとまず、遠隔操作で中身が漏れていないかや放射線量などをチェック。問題がなければ貯蔵建屋の地下に収め、厚さ1・9メートルのコンクリートで覆ってふたをする。
 「本来なら厚さ1・2メートルで十分なところ、余裕を持って設計している。真上に立っても何の問題もないですよ」と赤坂部長。実際に何人もの社員が、マスクなど特別な装備なしで、ふたの上を歩き回っていた。
 フランスの分は、2007年3月に1310本すべての輸送が完了。英国からはすでに約100本が戻り、20年までに残りの800本弱を受け取る。同センターには両国からの輸送分用のほか、3千本を貯蔵できるスペースがあり、さらに5千本分を増設中。いずれ六ケ所の再処理工場が本格稼働し、多くのキャニスターが出ることを想定しての措置だ。
 キャニスターはここで30年から50年間、貯蔵。搬入当初は200度あるガラス固化体の表面温度を自然の空気で100度以下にまで冷やした上で、最終処分場へ搬出することになっている。
 だが、厄介なのはむしろこの後。高レベル廃棄物は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」により、地下300メートルより深い場所に埋めるよう決められている。事業を担うのは、経済産業省所管の認可法人「原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)」。全国の市町村に呼び掛け、公募を基本に処分場の設置場所を決める方針で、平成40年代後半の操業開始を目指している。
 ところが、基本的な調査を受けるだけでも6年間に最大90億円の電源三法交付金が支払われるにもかかわらず、これまでに応募したのは2007年の高知県東洋町が唯一。同町も住民の猛反対を受け、3カ月後に撤回している。
 NUMOは調査に20年、着工から完成まで10年かかると試算。「技術が進んで工期が縮まる可能性もある。操業開始の目標は変えない」(広報部)とはいうものの、スケジュール通りに事業を進めるのは困難な情勢になっている。
 このままいけば近い将来、沖縄の米軍基地のような出口の見えない状態に陥りかねない。青森県原子力立地対策課の担当者は「福島の事故の前も後も、青森を最終処分場にしないという方針に変わりはない。最終処分場の選定は、止まっていていい話ではない」と力を込めた。
<デスクメモ> 今から300年前、日本は江戸時代。江戸市中に大量の灰を降らせた富士山の「宝永噴火」から5年後、大岡裁きで知られる大岡忠相が南町奉行となる5年前だ。当時、低レベル廃棄物処理を始めたとして、ようやくそれが無害になる計算。私たちはそれほど根気のいる仕事を子孫に託そうとしている。(木)
===========================
核燃基地六ケ所村「核のごみ」封印 道遠く/ガラス固化 失敗続き/純国産技術進まず/核半島2012-02-22 | 地震/原発
===========================
原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 | 地震/原発
------------------------------------------
映画「100,000年後の安全」地下500㍍ 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発
=======================
高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。