熊谷6人殺害事件 無期が確定 2020/9/15 〈来栖の独白〉刑務官の苦役に胸が痛む 死刑とは何か~刑場の周縁から

2020-09-16 | 死刑/重刑/生命犯

〈来栖の独白 2020.9.16 Wed〉
 死刑も想定される事件の判決に際して、必ず私の脳裡に浮かぶ情景がある。死刑執行の場面だ。執行される人(死刑囚)ではない。刑務官である。
 もはや過ぎて、遠い過去の記憶となったが、弟が死刑執行されたあと、拘置所所長と面接した。所長は弟の執行前後の様子を話してくださった。死刑囚は皆、毎朝、刑務官の足音が自分の房の前で止まるのではないか(死刑執行の呼び出し)と全身を耳にしているそうだが、その日、弟を呼びだした刑務官の声に、弟はじっと座ったままで動かなかったそうである。
 法廷で死刑宣告を受ける被告。己がしでかした罪の故とはいえ、苦しいだろう。それとともに、死刑判決を重い気持ちで受け止める刑務官がいることを、私はいつも想う。いずれ己が手で死刑執行しなければならない。
 人を殺める。その罪を、職責として遂行せねばならぬ。人をその手で殺さねばならぬ。世の中には、そういう職務もある。私が死刑判決に際し、必ず思うのはそのことである。
 私はとりたてて死刑制度を非としない。ただ、刑務官の苦役に胸が痛む。

死刑の刑場を初公開=東京拘置所、法相意向受け 2010/08/27  *死刑とは何か~刑場の周縁から
死刑とは何か~刑場の周縁から 新潮社刊『宣告』 中公新書『死刑囚の記録』 角川文庫『死刑執行人の苦悩』 
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2020年9月16日(水)
 <熊谷6人殺害>怒りどこにぶつければ…妻子殺害された男性「検察が裏切った」 検察の不戦敗、職務放棄だ
 熊谷市で2015年9月、小学生姉妹を含む男女6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(35)について、一審の死刑判決が破棄され無期懲役判決が確定することを受けて、妻子3人を亡くした遺族の男性(47)が15日、東京都内で記者会見した。
 検察側が上告を断念したことにより最高裁で争うことなく判決が確定することになり、「(検察に)裏切られた思いが強い。これで終わらせていいのか。心の中で揺れ動いている」と不満を語った。
 男性は事件で、妻の加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=いずれも当時=を失った。3人が殺害されてから16日で5年になる。男性は「毎年9月16日が近くなると、当時の記憶がよみがえってくる。長いようで短かった5年間だったが、悲しみは5年前と一緒」と打ち明ける。「判決への怒りや悲しみをどこにぶつけていいのか分からない」と、今も死刑が破棄されたことに納得していない。
 事件を巡って、裁判員裁判の一審さいたま地裁はナカダ被告の完全責任能力を認め、求刑通り死刑判決を下した。二審東京高裁は被告が心神耗弱状態で責任能力は限定的として無期懲役を言い渡した。被告側は判決を不服として上告したものの、東京高検は上告を断念。最高裁は9日付で被告側の上告を棄却した。
 同席した被害者代理人の高橋正人弁護士は、「検察の不戦敗であり、職務放棄。司法に裏切られた被害者は誰にすがればいいのか」と批判。その上で、控訴審の裁判員裁判制度導入や被害者への上訴権付与を主張している。
 男性は今後について、「自分のため、家族のため、何か手だてがないか考えていきたい」と複雑な心境を吐露。「諦めたくない。前例がなくてもいい。まだ戦いたい」と気持ちを奮い立たせるように話した。

 ◎上記事は[埼玉新聞]からの転載・引用です


 埼玉新聞 2020年9月11日(金)
<熊谷6人殺害>ばかばかしい…妻子殺害された男性、無期懲役確定に悔しさ「ああ、終わっちゃったんだな」
 最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、熊谷市で2015年、小学生2人を含む住民6人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われたペルー人、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(35)の上告を棄却する決定をした。9日付。一審の死刑判決を破棄し、心神耗弱を認めて無期懲役とした二審東京高裁判決が確定する。
 妻子3人を失った遺族の男性(47)が10日、埼玉新聞の取材に応じ、「悔しさしか残らない。今、聞いたばかりで整理できない。悔しい」と言葉を絞り出した。
 男性は事件で、妻の加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=いずれも当時=を亡くした。自分以外の家族を失い、3人に対しても「死刑判決まで持っていけなかった後悔がある」とこぼす。
 改めて一審さいたま地裁の死刑を破棄した二審東京高裁判決については、「信じられない。裁判官も、検察官も。まだ納得できない。ばかばかしい感情もある。検察官はなぜ上告してくれなかったのか。少しでも望みがあるなら裁判をやり直してほしかった」と訴える。
 日本の司法手続きについても、「上告の権利を被害者に与えてほしい。二審も書面中心の審理ではなく、一審と同じようにやってほしかった」と指摘。さらに、「もうちょっと被害者が意見できる場をつくってほしい。判決を見て、大事なことが書いていないと思った。そういうことを裁判官に質問できるようにしてほしい」と求める。
 二審判決は、事件当時のナカダ被告が心神耗弱だったと認定した。この点については、「少なからず殺人を犯す人はまともな状態ではない。そのときの精神状態は関係ないと思う」と主張。一審中には被告が「人を殺した」と口走る場面もあり、「殺人を犯した自覚はあると思う。どこがどう心神耗弱だったのか分からない。精神的な部分で争うことがおかしいのではないか」と考える。
 今月で事件からちょうど5年になる。16日は家族3人の命日だ。男性は「今は何も考えられない。ああ、終わっちゃったんだなというがくぜんとした気持ちと脱力感がある。今後のことはこれから考えたい」と無念の心境を語った。

 ◎上記事は[埼玉新聞]からの転載・引用です
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