もしも口永良部島噴火の時が「私が陸海空自衛隊の最高指揮官だそうですね」と言う菅直人政権だったら

2015-05-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

≪もしも口永良部島が噴火した時が民主党政権だったら≫
『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』 福山隆著 幻冬舎新書 2013年5月30日第1刷発行 

    

 (抜粋)
p185~
 国家的なクライシスを迎えた場合、まず第1にやるべきことは情報の収集です。質・量ともに十分な情報がなければ、「次の一手」について正しい判断や決定はできません。尖閣諸島漁船衝突事件のような事態が起きた場合、国のトップは、外務省、防衛省、警察庁、内閣官房内閣情報調査室といった部署に「収集すべき情報は何か」を伝え、そこから上がってきた情報を総合的に分析した上で、意思決定を行うべきです。
 しかしあのとき、そういったことが迅速に行われた形跡は、少なくとも私の知る範囲ではありません。おそらく、日頃からそういった危機に備えた訓練もなされていないのでしょう。対外情報機関(日本版CIA)も、情報を一元的に集め処理する機関も存在しないので、いざというときに総合的なインテリジェンスをどのように機能させるかという準備ができていないのです。
 菅政権時代には、戦争にも匹敵する事態が起こりました。いうまでもなく、2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに続く福島原発の事故です。
 あのときに菅直人という政治家が首相の座に就いていたのは、国民にとって実に不幸なことだったといわざるを得ません。というのも、彼が総理大臣になってから初めて自衛隊幹部と面会した時の第1声は、こんなものでした。
p186~
 「私が陸海空自衛隊の最高指揮官だそうですね。初めて知りました」
 国家を預かる最高責任者の言葉とは到底思えません。国家の安全や国民の生命、財産を守るリーダーとしての自覚を全く持っていなかったのです。
 私は防衛駐在官としてソウルに赴任中、朝鮮戦争時の英雄として知られる白善(ペクソニヨプ)氏に親しくしていただき、いろいろなことを教わりました。韓国陸軍の創設に参加し、最初の陸軍大将に任じられた人物です。その白氏に、私はあるとき、「大軍の将はいかにあるべきでしょうか」と問いました。
 「大軍の将は、いま起きているありとあらゆることをすべてしらなければいけない」
 白氏は、そう答えました。つまり「インテリジェンスが大事」だということでしょう。
 戦場には、リーダーが知るべき情報が山のようにあります。例えば、現場の地形や気象、海軍なら、海の潮流や温度分布もそうです。潮流の具合によって音波の屈折も変わりますから、それがわからなければ敵を探知することもできません。
p187~
 独裁的な権力を発動しなければならないのが「危機」
 そういった細かい情報をすべて知らなければいけないのが、「大軍の将」です。(略)
 これは、口で言うのは簡単ですが、なかなか実行できることではありません。自衛隊でも、指導力に欠ける人ほど現場で気づいた「小さなこと」をワーワーと隊員に指図します。
 「それではいけない」と白氏は言いました。「現場で兵隊を激励するのはいいが、感情の起伏をあらわにして騒ぎ立てると、前線の兵隊は臆してしまう。じっくり見た上で、何か本質的な問題があれば、後で中央から電報で全軍に布告すればいい。それが大軍の将というものですよ、福山さん」
p188~
 ここで私が言いたいことは、もうおわかりでしょう。福島で原発事故が起きたときに菅総理が取った行動は、まさに「大軍の将」がもっともやってはいけないことでした。官邸に腰を据え、現場で起きていることをすべて把握するよう努めるべきところを、現場に乗り込んであれこれと口を出したのです。
 こうした失態は、もちろん総理の個人的な資質による部分も大きいでしょう。しかし、そこだけに原因を求めるわけにはいきません。どの政治家が総理のポジションにあったとしても、現在のインテリジェンスシステムでは同じようなことはいくらでも起こり得ます。日頃から危機に備えた準備や訓練を綿密に行い、さまざまな情報を統合的に管理するインテリジェンス機関がなければ、こうした事態に対応することはできません。
 日頃から実在するインテリジェンス機関を意のままに総合的に動かし、あらゆる情報を自分の下に集約できるシステムを構築し、タイムリーに適切な判断を下すのが、「大軍の将」としての総理大臣の役割です。その運営は、ある意味で全体主義国家に通じます。
p189~
 戦後日本において、これはもっとも忌み嫌われるスタイルです。もちろん私も、平時は民主主義的な意思決定が重要だと思います。
 しかし民主主義的な手続きは、意思決定までに時間がかかるのも事実。国家的なクライシスにおける意思決定は1分1秒を争うものですから、平時と同じ手続きを踏んでいる余裕はありません。一定の範囲で「大軍の将」である総理に決定権をゆだね、独裁的な権力を発動しなければ、国や国民を守ることはできないのです

 *強調(太字・着色)は来栖
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