日ロ両国に強い政権 北方領土電撃返還の可能性十分 2016.10.03

2016-10-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

日ロ両国に強い政権 北方領土電撃返還の可能性十分
 NEWSポストセブン 2016.10.03 07:00
 9月2日、安倍首相はウラジオストクでロシアのプーチン大統領と夕食会を含めて3時間以上にわたって首脳会談を行ない、途中、「1対1の時間を取って議論したい」と申し入れて通訳だけを交え、北方領土をめぐる膝詰め談判を行なった。12月のプーチン大統領の訪日を控え、北方領土交渉が大きく動き出そうとしている。
  戦争で奪われた領土を外交交渉で取り戻すのは極めて困難だ。1956年、日本は鳩山一郎内閣の「日ソ共同宣言」で平和条約締結後に旧ソ連が歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すことをいったんは合意したものの、その後、何度も公式・非公式の政府間交渉を重ねながら返還は実現していない。
  安倍首相は政権に返り咲いた直後の施政方針演説(2013年2月)で「最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結すべく、腰を据えて取り組む」と表明し、交渉を重ねてきた。
  大きな転機となったのは今年5月のソチ訪問だった。ロシアはウクライナからのクリミア併合(2014年)を批判されて国際的な経済制裁を受けている。伊勢志摩サミットを控えた5月、安倍首相はオバマ米大統領が電話で「行くな」と自粛を求めたのを振り切ってソチを訪問、プーチン大統領との首脳会談で8項目の経済協力と領土問題の「新たなアプローチ」を提案した。
 「プーチンは食いついてきた」──官邸筋はそう振り返る。
  プーチン大統領からもサインが送られてきた。ウラジオ会談前の今年8月、大統領府長官を交代させ、外交官出身のアントン・ワイノ氏を抜擢した人事である。ワイノ新長官は在日ロシア大使館勤務があり、日本語が堪能な人物だ。これを「プーチンのサイン」(官邸筋)と受け止めた安倍首相は急遽、「ロシア経済分野協力担当相」を新設してウラジオに同行する側近の世耕弘成・経産相に兼務させた。
  こうしてウラジオで14回目となる安倍―プーチン会談が行なわれ、「2人で政治決断をしよう」と呼び掛けたのである。
■祖父がやり残したこと
 官邸5階の総理執務室の机の上には、常に茶色い表紙の1冊の本が置かれている。『岸信介回顧録 保守合同と安保改定』──。安倍首相はこの回顧録をボロボロになるまで読み返し、祖父の岸氏がやり残した日ロ平和条約に決意を燃やしている。
  プーチン大統領も同じだ。「われわれはすべての隣国とのあらゆる係争問題を解決したい。日本も含めてだ」──10年以上前にそう語り、最初の大統領就任以来、周辺諸国との領土交渉に次々と成果を挙げてきた。
  とくに中国との間では、何度も武力紛争が起きた極東アルグン川の大ウスリー島など3つの川中島をめぐる総面積375平方キロの境界線の画定交渉を秘密裏に進め、面積ほぼ2分割という形で電撃的に決着。ロシアが実効支配していた係争地の半分を中国に引き渡した。この「引き分け(面積等分)」がプーチン方式であり、カザフスタンとの国境やノルウェーとの海上国境でも適用されている。外務省関係者が語る。
 「プーチン大統領はこれまでの日ロ首脳会談でも領土交渉について『引き分け』という言葉を何度も使っている。日ソ共同宣言に基づいて歯舞、色丹の2島は引き渡すから、それで決着させたいということ。しかし、2島では北方領土の面積の7%にすぎず、引き分けにはならない。飲めないというなら日本がアイデアを出してくれという姿勢だ。
  そこで水面下では、2島返還に加えて、国後、択捉の日本の主権を認めさせる代わりにロシアに租借する案や、国後、択捉については主権問題を継続協議にして共同で経済開発する案などが浮かんでいる。“2島プラスα”をどこで折り合うかは安倍総理の決断に懸かっている」
  領土交渉(国境画定)には両国の妥協が必要で、どんな決着であれ、双方の国内に不満や批判があがり、それを乗り越えるだけの強い政治基盤が必要になる。
  過去、日本と領土交渉を行なったゴルバチョフ大統領やエリツィン大統領は権力基盤が不安定だった。プーチン大統領が各国との国境画定を次々と決めていったのは、それだけの権力を握っているからだ。安倍政権も衆参で圧倒的な勢力を持つ。
  それだけに日ロ両国に強い政権が出現した今が大きなチャンスであり、12月の日ロ首脳会談で2人が決断すれば、「夢物語」と思われていた北方領土返還が電撃的に決まる可能性は十分にある。
 ※週刊ポスト2016年10月14・21日号

北方領土交渉大詰め 安倍氏がプーチン氏を名前で呼ぶ
 NEWSポストセブン 2016.10.03 07:00
 北方領土をめぐる日ロの“秘密交渉”が大詰めを迎えている。さる9月2日、安倍首相はウラジオストクの極東連邦大学でプーチン大統領と夕食会を含めて3時間以上にわたって首脳会談を行ない、途中、「1対1の時間を取って議論したい」と申し入れて通訳だけを交えた膝詰め談判を行なった。
  内容は一切、開示されていない。しかし、翌日に同地で開催された「東方経済フォーラム」の全体会合で秘密会談の核心を示唆する興味深い光景があった。
  スピーチに立った安倍首相は、米国はじめ各国の代表団が居並ぶ中、プーチン大統領に向かって「ウラジーミル」とファーストネームでこう呼び掛けた。
 「あなたと私には、この先、大きな、大きな課題が待ち受けています。重要な隣国同士であるロシアと日本が、今日に至るまで平和条約を締結していないのは、異常な事態だと言わざるを得ません。(中略)それを放置していては、私も、あなたも、未来の世代に対してより良い可能性を残すことができません」
  そのうえで、およそそうした場にはそぐわない「覚悟」という言葉を口にした。
 「私は、ウラジーミル、あなたと一緒に、力の限り、日本とロシアの関係を前進させる覚悟です」
  最初に大きな拍手を送ったのはプーチン大統領自身だった。最初は戸惑っていたロシアの要人たちが後に続き、やがて会場全体が拍手に包まれた。
  北方領土──日本がポツダム宣言を受諾して太平洋戦争が終結した直後の1945年8月28日、旧ソ連軍は突然、日本領の歯舞諸島、色丹、国後、択捉の北方4島に上陸し、以来、70年以上にわたって不法占拠状態が続いている。
 ※週刊ポスト2016年10月14・21日号

 ◎上記事は[NEWSポストセブン]からの転載・引用です
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プーチン露大統領「北方領土問題で妥協点見いだせる」安倍晋三首相との会談を翌日に控えインタビュー 2016/9/1 
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北方領土「2島先行返還」は日本にとって損か得か? 北野幸伯(Diamond online 2016/10/3)
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『知の武装 救国のインテリジェンス』手嶋龍一×佐藤優 新潮新書 2013年12月20日初版発行 
p16~
手嶋 今回の2020年東京オリンピックの開催地を決める最終局面では、プーチン大統領率いるロシアは、東京開催に好意的だったと言われます。その最大の理由は、安倍晋三総理が率いる日本が、アメリカと微妙に距離を置いていることを評価したからだと、オリンピックのオブザーバーは揃って指摘しています。
佐藤 東京、イスタンブール、マドリードが三つ巴で、最後の多数派工作を繰り広げていた2013年8月19日に、モスクワで行われた杉山晋輔外務審議官とロシアのモルグロフ外務次官による次官級協議から、重要な流れを読み取ることができます。この席で「9月5日を軸に日ロ首脳会談を行う」と決定したのですが、ロシア側はこれを日本側の極めて大胆な政治決断だと受け止めたんです。
 その背景には、同年6月に起きた「スノーデン事件」があります。米ロ関係を冷やし、米中関係にも影響を与えたこの事件は、後に詳しく説明しますが、スノーデンCIA元職員の送還をめぐって、アメリカと亡命先のロシアとの関係がにわかに悪くなっていたのです。その後、アメリカのオバマ政権が米ロ首脳会談をキャンセルしたことを、プーチン政権は「難癖」だと受け止めた。そもそもアメリカのインテリジェンスがスノーデン捕択・拘束作戦に失敗したのがこのトラブルの原因なのに、その失敗のツケをロシアに回し、挙句の果てに早く送還しろと文句を言ってくる。これはどういうことだ、というわけです。
p17~
手嶋 そんな状況下で、アメリカの緊密な同盟国である日本は日ロ首脳会談を決断していらい、安倍総理の決断は勇気がある、とロシア側はこう受け止めたわけですね。実態はともかく、オリンピックの開催でロシア側は側の3票が何としても必要だった日本にとって、そう受け取ってもらえたことは、まことに幸いなことでしたね(笑)。安倍総理は運が強い。
佐藤 もう一つ、日本ではほとんど報道されなかったことですが、ロシア側で「同性愛宣伝禁止法」が議会で成立し、これが西側諸国からは大変な顰蹙を買っていました。このロシア批判の流れが収まっていない中で、安倍総理はプーチン大統領と会う決断をしたことも、好意的に受け止められた一因です。西側世界と価値観を共有している国家のリーダーである安倍総理が、大きな政治的リスクを取って決断してくれたと、ロシア側は高く評価したわけです。
p29~
手嶋 東京オリンピックの開催は、たとえてみれば、尖閣諸島に国連の環境関連機関が設立されたようなものと言っていいでしょう。もし中国が本気で奪取しようと軍事攻勢でも仕掛けようなものなら、平和の祭典をぶち壊した張本人として国際社会の厳しい批判にさらされることは間違いありません。日本の実効支配は国際的に明らかですから、あまりに分が悪い。つまり、さしもの中国も、うかつに尖閣諸島に手を出せなくなったはずです。
 尖閣問題はもちろん、シリア問題も竹島問題も、いわば「オリンピックの人質」に取られてしまったわけです。ただし、ロシアが北海道の北半分を奪取しようと試みているわけではないし、韓国も対馬を奪い取ろうとはしていない。ここが中国との違いです。その点でも、開催決定を機にロシアや韓国との関係改善に動き、中国を平和の祭典に引きずり込む戦略を推し進めるべきなのです。
 歴史の中の東京オリンピック
手嶋 安倍総理は、日本の政治家には珍しく、スピーチ・ライターを抱えています。ジャーナリストから外務省の外務副報道官に政治任用され、その後、安倍官邸に内閣審議官として迎えられた谷口智彦氏です。
(p30~)私が教授を務めている慶應義塾大学の大学院では、彼に国際政治・経済システム論を講じてもらっているのですが、その講義はじつに秀逸なんです。
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海外メディア絶賛の「安倍スピーチ」 陰で支える人物 谷口智彦氏 
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