生方副幹事長解任劇~「小沢神話」による思考停止

2010-03-29 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

生方副幹事長解任という“誤報”で得をしたのは誰か?【週刊 上杉隆】
DIAMOND online 2010年03月25日
 3月23日、民主党とメディアによる壮大な空騒ぎが終わった。
 生方幸夫民主党副幹事長の「解任」騒動は、案の定、元の木阿弥のまま、何ひとつ変わらず、党に混乱の痕だけを残して収束した。
 騒動のきっかけは、3月17日付の産経新聞に掲載された次の「生方インタビュー」だった。

〈今の民主党は権限と財源をどなたか一人 が握っている。下に権限と財源が与えられていない状況はおかしいでしょ。党の代表である鳩山さんは、小沢さん(一郎幹事長)を呼んで党が中央集権になっていることをきちんと注意してほしい。1年生議員は民主党に入ったときから、強度の管理体制下に置かれているから、しゃべっていいものかどうかすら分からないんじゃないでしょうか。(中略)
 民主党への信頼が低下している要因には「政治とカネ」の問題もあります。小沢さんに関して、今までの説明に納得していない人が圧倒的に多数で、幹事長をお辞めになるべきだという意見が多い。小沢さんがしかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかないです。
 国民は小沢さんが不起訴になったから全部シロだとは思っていないんですよ。おそらく説明できないんでしょうね。小沢さんは前よりだいぶ権威づけられてきたというか、権力者になってきましたね。〉(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100317/stt1003170045000-n1.htm

 この発言を「小沢幹事長批判」と理解した高嶋良充筆頭副幹事長は即応した。任意の副幹事長会議を開き、生方氏に辞任を迫った上で、事実上の「解任」を突きつけたのだ。
高嶋氏が許せなかった生方氏の労組批判
 高嶋氏と生方氏は、どちらも民主党結党以来のメンバーだ。だが、労組を母体とする高嶋氏と、96年、「新党さきがけ」からの合流組である生方氏とはもとよりそりが合わない。
 二人は、同じ副幹事長というポストに就いたものの、当初からすでに「ギスギスした関係」(別の副幹事長)にあったという。同じ副幹事長がこう証言する。
 「高嶋筆頭が本気で怒ったのは、産経新聞の後段部分の『労組批判』の部分ですよ。それを、体よく小沢批判に結び付けただけです」
 労組出身議員の虎の尾とは何か。産経記事の続きを見てみよう。

 北海道教職員組合の問題は、これも一番上は(出身母体が日本教職員組合の)輿石さん(東・参院議員会長)ですからね…。(民主党議員は)組合からあまりお金をもらっちゃいけない。組織内候補といわれる方の献金額は常識的な額ではない。参院選への影響は、政治ですから何があるか分かりませんけど、要するに言い訳から入る選挙は勝てませんよ。〉(同産経新聞)

 まったくの正論だろう。だからこそ参議院選を控える労組出身議員にしてみれば許しがたい発言であったのだ。
 その翌日(19日)の金曜昼、筆者は生方氏とともに「ワイドスクランブル」(テレビ朝日)に生出演した。
 その場では、生方氏にいくつかの疑問点を投げかけるとともに、直前まで取材して得た情報をぶつけて事実関係の確認作業を行なった。番組中に投げかけた質問は、次のようなものである。
〈小沢氏サイドを取材すると、今回の「解任」について、小沢幹事長は「そこまでする必要はない」と言っているようです。最終人事権のある小沢幹事長がそこまで言うのならば、最終的には「解任」ということにはならないのではないでしょうか〉
 また、筆者はこうも聞いた。
〈今回の副幹事長の「解任」についてはさすがに党内にも異論が多いようです。取材をしてみると、来週の火曜日の常任幹事会では、生方さんの「解任」は否決される見通しだそうです。小沢幹事長の「虎の威を借りて」、勝手に意思を忖度し、生方排除に向かった小沢側近議員の問題では?〉
 実は、この事実関係に関しては、筆者だけが特段に知る事柄ではなかった。取材をしている記者であるならば、ほどんどみな当然に知り得ていたことだ。
 なにしろ常任幹事会、正副幹事長会議の最高権限者は小沢一郎であり、党の「最高権力者」の意向が尊重されるのは記者クラブメディア自身が指摘しているではないか。
 であるならば、なぜ新聞やテレビは、週明けの火曜日に起こることを予測できなかったのか。なぜ新聞は、〈小沢氏の強権によって生方氏が「解任」される〉という結果としての「誤報」を書き続けてしまったのか。なぜテレビは、週末の番組で、副幹事長に復帰することが確定的な生方氏の側に立って繰り返し報じ、その点を追及しなかったのか。
 その理由は、これらすべてが、独裁的な小沢幹事長による仕業だという先入観によって陥ったミスに他ならない。いつもの「小沢神話」による思考停止が取材の際の謙虚さを忘れさせてしまったのだろうか。
 とはいえ、そこは記者クラブメディアである。こうしたマッチポンプの「空騒ぎ」への対処法も巧妙に用意していた。
鳩山首相が副幹事長人事で小沢氏に口出しできるか?
 生方副幹事長の留任を確認した火曜日、新聞やテレビは次のような報道で自らのミスを取り繕ったのである。
〈生方副幹事長は一度「解任」されたが、小沢幹事長が翻意して「留任」を求めることに決めた。その背景には週末の世論調査などで民主党の支持が落ち込んでいること、また鳩山首相から小沢幹事長への指示もあり、一転、、生方副幹事長の留任を決めた〉
 不思議なこともあるものだ。
 新聞・テレビによれば、民主党は一貫して、小沢氏の独裁体制下にあり、鳩山首相ですらその意向には逆らうことはできない、と報じて続けていた。
 ところが、テレビ新聞によると、たった一夜にして鳩山首相の権力は回復し、小沢幹事長の専任人事権の「副幹事長」人事に口出しできるようになったのだ。
 残念ながら、筆者の取材では、鳩山首相が副幹事長人事について小沢幹事長に命令した事実は確認できなかった。
 鈴木宗男新党大地代表は自身のブログの中で次のように語っている。
〈小沢幹事長は生方氏に対して副幹事長を辞めろと言っていないのに、一方的に小沢幹事長を批判する様な話は、子供じみている。小沢幹事長と生方副幹事長は、肩書、ポスト以上に人間的に大きな差がある。
 生方副幹事長は、小沢幹事長の広い心に救われたことを忘れず、これから仕事でしっかり返すべきであると思うのは、一人私だけではないだろう〉(「ムネオ日記」)
http://www.muneo.gr.jp/html/page001.html
 結局、この週末、新聞・テレビが盛んに報じたこのニュースはなんだったのか? 結果としてのこの「誤報」で得したのは誰か?
 今こそ「小沢独裁」を許さないために、記者クラブメディアは自己の検証報道が必要ではないだろうか。
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【単刀直言】生方幸夫民主副幹事長「党の“中央集権”、首相は小沢氏を呼び注意を」
産経ニュース2010.3.17 00:40
 与党に政策部門がないのは絶対におかしい。民主党に元気がなくなったのは、自由に議論する場がなくなったからです。政策調査会と、その下の部会を再び作って、みんなが自由な意見をいえるように戻さないといけません。
 衆院選マニフェスト(政権公約)の実行が思うようにできていません。それに対する十分な説明を民主党がしきれていないのは、党に政策責任者がいないからです。説明を一つ一つしていれば、民主党への信頼が今のように落ちることはなかった。
 鳩山さん(由紀夫首相)は約10年前に「1人1政策作ろう」と、仲間たちに呼びかけたはずです。政権交代で、それを実現しようと思ったら、議員立法も制限されてしまった。政治主導にはほど遠い。
 われわれは自民党政権がやってきた中央集権はダメだと言ってきた。地方分権にしようといってきたのに、民主党の運営はまさに中央集権です。今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている。下に権限と財源が与えられていない状況はおかしいでしょ。党の代表である鳩山さんは、小沢さん(一郎幹事長)を呼んで党が中央集権になっていることをきちんと注意してほしい。
 1年生議員は民主党に入ったときから、強度の管理体制下に置かれているから、しゃべっていいものかどうかすら分からないんじゃないでしょうか。
 民主党への信頼が低下している要因には「政治とカネ」の問題もあります。小沢さんに関して、今までの説明に納得していない人が圧倒的に多数で、幹事長をお辞めになるべきだという意見が多い。小沢さんがしかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかないです。
 国民は小沢さんが不起訴になったから全部シロだとは思っていないんですよ。おそらく説明できないんでしょうね。小沢さんは前よりだいぶ権威づけられてきたというか、権力者になってきましたね。
 北海道教職員組合の問題は、これも一番上は(出身母体が日本教職員組合の)輿石さん(東・参院議員会長)ですからね…。(民主党議員は)組合からあまりお金をもらっちゃいけない。組織内候補といわれる方の献金額は常識的な額ではない。参院選への影響は、政治ですから何があるか分かりませんけど、要するに言い訳から入る選挙は勝てませんよ。
 公明党とどうするかは党の方針の問題です。議員の意見を聞かないといけません。国会運営をうまくするためにとか、味方が一人でも多けりゃいいと思って連携するなら大間違い。誰かの思いつきでやっていいことではない。選挙で公明党がイヤだから応援してくれた人だっていっぱいいたわけですから。(坂井広志)
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 うぶかた・ゆきお 衆院千葉6区選出。当選4回。横路孝弘衆院議長のグループに所属。昭和22年、東京都生まれ。47年、早大卒。読売新聞記者を経て経済評論家に。平成8年の衆院選で初当選。今年3月、民主党有志でつくる「政策調査会の設置を目指す会」世話人に就任。 

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