2017.4.25 05:03更新
【産経抄】EUは断頭台に送られるのか 4月25日
225年前の今日、断頭台による死刑が、パリで初めて執行された。フランス革命にともない設置された国民議会で採用が決まったものだ。受刑者の苦痛を減らし、貴族と平民の区別もなくす。自由、平等、博愛という革命のスローガンに基づいていた。
▼提案したのは、医師のジョゼフ・ギヨタンである。その英語読みから、ギロチンが通称となった。国王ルイ16世をはじめ、おびただしい人々の血を吸ったギロチンは、「恐怖政治」の象徴にもなった。1981年にミッテラン大統領の下で死刑制度が廃止されて、ようやく歴史的使命を終えた。
▼ところが近年、イスラム過激組織による相次ぐテロ事件の影響で、死刑復活を求める声が高まりつつある。それと軌を一にするように、支持率を伸ばしてきたのが極右「国民戦線」である。
▼創立者の父親から党首の座を受け継いだマリーヌ・ルペン氏(48)が、大統領選の第1回投票で2位に入った。5月7日の決選投票で、中道のエマニュエル・マクロン前経済相(39)との一騎打ちとなる。
▼「フランス第一」を掲げるルペン氏は、移民受け入れの制限と、外国人を雇用する企業への課税を打ち出している。もちろん決選投票で最大の争点となるのは、欧州連合(EU)の是非である。統合推進を訴えるマクロン氏に対して、ルペン氏は離脱を問う国民投票の実施を約束している。
▼ルペン氏は、2012年の前回大統領選の公約にあった「死刑制度の復活」を今回あえてはずした。党内の一部にある反対の声に配慮したようだ。フランスが抜けたら、EUはもはや成り立たない。フランス史上初の女性大統領をめざすルペン氏は、ギロチンの復活よりも、EUを断頭台に送る決意を優先させた。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です