【人間が家畜化される? AIに「主」の座を明け渡す日】島田雅彦2016/8/20 【国内初 人工知能が救った癌患者の命】NHK

2016-08-21 | 社会

作家・島田雅彦さんに聞く 人間が家畜化される? AIに「主」の座を明け渡す日
  dot.  (更新 2016/8/20 11:30) 
 島田雅彦(しまだ・まさひこ)/作家。法政大学国際文化学部教授。『暗黒寓話集』『虚人の星』など著書多数(撮影/編集部・石臥薫子)
 今年一気に「バズワード」)と化した人工知能(AI)。AIは、もはや研究室に留まってはいない。私たちのすぐそばで、暮らしや職場を「最適化」し始めている。人間の趣味、嗜好や心の機微まで理解する新しい知能。私たちはAIと、どう付き合っていけばいいのか。作家の島田雅彦さんに話を伺った。
*  *  *
 人類は自ら作り出した道具によって、発想や生き方を変え続けてきました。物書きは、コンピューターの登場によって、手書きや煩雑な下調べ作業から解放され、情報収集や編集も新たな筆記具であるパソコンに依存するようになりました。創作や思考の方法を変えたわけです。
 ものづくりの世界でも3Dプリンターの登場で、作業の概念自体が変わりました。人力に頼っていた労働を機械に委託したのが産業革命で、創造や思考をも委託したのが情報革命なら、人工知能(AI)はその延長線上に位置します。
 地球ではこれまで大絶滅が5回も起きています。その中で人間は時代の環境にうまく適合し、はびこることに成功した。しかし今後も地球の主でいられる保証はどこにもない。AIにその地位を明け渡し、累々と積み上げられてきた屍の系譜に加わる──AIがこのまま発展を遂げれば、それも必然かと思います。
 近い将来、AIがナノテク技術を駆使し、DNAや生体組織を吹き付けて本物そっくりの臓器を作ることは十分考えられます。その臓器が組み合わさっていけば「生き物」ができる。地球上に今まで現れなかった生物を作ったり、絶滅した生物を復活させたりもできる。AIが創造主、つまり「神」となる瞬間です。これまで概念上にしか存在しなかった神が実体化することになります。
 そのようにAIが世界を支配する前に、我々が考えるべきことがあります。まず倫理問題。人間に有害なものを作ってはならないとか、自動運転車の右から子どもが、左から高齢者が来た時にどうすべきか、といったことです。最も優れたAIを開発した者が情報と技術を独占し、国家以上の力を持つことになる。それをどうコントロールするのかも課題です。
 さらにAIの発達で人間がやることがなくなった時に、退屈とどう向き合うのか。機械が代替できないとされていた哲学や芸術もAIの趣味になるかもしれない。実際、美術や音楽では、AIが偉大な画家や作曲家と遜色ない作品を作り始めました。文学においても、膨大なビッグデータから大ヒットの条件を学習したAIが、人々が熱狂するシナリオや小説を作るようになるのも時間の問題でしょう。
 人間が犬や猫を飼うように、AIが人間を家畜化することになるかもしれません。面白いエラーを連発する奇妙なペットとして可愛がられるのです。仕事を機械に委託する過程で、人間は潜在的に持っていた能力を退化させてしまいましたが、近年、人々が里山に惹かれるのは失われた能力を取り戻し、野性に返る準備なのかもしれません。朱鷺(とき)が暮らせる風土を人が用意してやるように、AIが地球を人が住みやすい環境に戻してくれることも期待できます。
 ※AERA 2016年8月22日号
 ◎上記事は[ dot. ]からの転載・引用です

*バズワード 【 buzzword 】
 バズワードとは、主にIT関連業界に見られる流行語で、何か新しい重要な概念を表しているようだが、その実、明確な定義や範囲が定まっておらず、人によって思い浮かべる内容がバラバラであったり、あるいは宣伝文句的に都合よく引用されるような新語や造語、フレーズのこと。
 “buzz”は(蜂などが)ブンブンうなる、(群衆などが)ガヤガヤいう、ざわめき、騒音、などの意味で、はっきり聞き取れない、耳障りだ、といった含意がある。単なる流行語というだけでなく、使っている当人たちはかっこいい、あるいは、先進的な(またはそれに類する肯定的な)イメージを込めて使っているが、意味が曖昧で、何がそれに含まれるのか、含まれないのかが人によって大きく異なり、結局それが何なのか誰に聞いてもよくわからない、という状態を表している。
 (日本の)IT業界で流行したバズワードとしては「ニューメディア」(1980年代)「ネオダマ」(1990年代)「マルチメディア」(同)「ビジネスモデル」(2000年代前半)「ユビキタス」(同)「ロングテール」(2000年代後半)「Web 2.0」(同)「クラウド」(2010年代前半)「ビッグデータ」(同)「スマート」(同)などがある。
 もともと厳密な定義のあった語が商業上の思惑などから拡大解釈されて様々な文脈で使われバズワード化してしまう場合や、バズワードとして広まったものが業界団体などによって明確な定義を与えられる場合もある。「バズワード」という表現やその概念はIT業界以外ではあまり使われないが、それに該当するような現象自体は「女子力」「マイナスイオン」のように頻繁に起きている。
 ◎上記は[e-Words]からの転載・引用です
――――――――――――――――――
国内初 人工知能が救ったがん患者の命
 NHK NEWS WEB 8月8日 8時55分
 「死を覚悟しました」。白血病を患った60代の女性が入院当時を振り返った言葉です。
 抗がん剤を投与しても、思うように回復せず原因も不明。死の危険も迫る中、女性の命を救ったのは、なんと2000万件もの医学論文を学習した「人工知能」でした。
 わずか10分で、専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病であることを見抜き、治療法を変えるよう提案したのです。その結果、女性は回復して無事退院。専門家は「人工知能が人の命を救った国内初のケースではないか」と指摘します。
 さまざまな分野に可能性を広げる人工知能。医療の世界を今後どのように変えていこうとしているのでしょうか。
 科学文化部の出口拓実記者が解説します。
■人工知能 医学論文を学ぶ
 人工知能をがん治療に活用しようと研究を進めるのは、東京大学医科学研究所の附属病院やアメリカの大手IT企業IBMなどのグループです。
 導入したのは、IBMが手がける人工知能を備えたコンピューターシステム「ワトソン」。5年前にアメリカの人気クイズ番組「Jeopardy!」で、人間のクイズチャンピオンに勝利し、一躍注目を集めました。
 グループでは去年7月から共同研究を開始。2000万件もの研究論文や1500万件を超える薬などの特許情報、さらにすでにわかっているがんと関連する遺伝子の情報などを「ワトソン」に学習させ、診断が極めて難しく、治療法も多岐にわたる白血病などのがん患者の診断に役立てる臨床研究を進めています。
 しかし、研究を始めた当初はどこまで活用できるかわからず、現場の医師たちは半信半疑でした。
■人工知能が治療法の変更を提案
 ところが、ワトソンはそんな疑問を払拭する活躍を見せます。この研究に参加した患者の山下あや子さん(66)は、去年1月に附属病院に入院し、医師からは「急性骨髄性白血病」と告げられていました。
 2種類の抗がん剤を組み合わせる標準的な治療を受けましたが、体の免疫機能を担う白血球の数は思うように回復しませんでした。抗がん剤が効くはずなのに症状は悪化。40度近い高熱や意識障害、それに肺炎も発症しました。
 なぜ抗がん剤が効かないのか、その原因がはっきりしません。このままでは、免疫不全による敗血症などで死亡するおそれも出ていました。
 そこで病院は、人工知能にその原因を探らせることにしました。
 まず山下さんの遺伝情報を調べ、白血病の原因となっている可能性のある遺伝子の変化をピックアップ。1500ほどにまで絞り込んだ山下さんの遺伝子の変化を人工知能に読み込ませ、原因を分析させたのです。
 すると、わずか10分後。山下さんが苦しんでいる病気は、当初、医師が診断していた「急性骨髄性白血病」ではなく「STAG2」と呼ばれる遺伝子の変化が根本の原因を作り出している「二次性白血病」だという判断を示しました。
 病院はこの判断を参考に治療方針を変更。
 抗がん剤の種類を変えたところ、山下さんは徐々に回復していったのです。入院から8か月後、山下さんは、無事退院できるまでに回復しました。
 山下さんは「あと1年ほどすれば、この世からいなくなると覚悟した時期もありました。ロボットやコンピューターの研究は成果を上げるのに年数を要するもので、こんなに急激に役に立つなんて思いもよらず、今こうして元気でいられるのは人工知能のおかげです」と話していました。
 これまでに人工知能は、山下さんだけでなく、専門の医師でも診断が難しかった患者2人についても特殊な白血病だと見抜くなど、合わせて41人について、治療や診断に役立つ情報を提供したということです。
 人工知能学会の会長で国立情報学研究所の山田誠二教授は「人工知能が人の命を救った国内初のケースと言ってもいい」と指摘しています。
■工知能はなぜ見抜けたのか?
 日本トップレベルの専門医師が行っても見抜くのが難しかった「二次性白血病」。なぜ人工知能は見抜くことができたのでしょうか。
 実は現在、二次性白血病のような遺伝子の変化が複雑に絡み合って起きる特殊な血液のがんの診断は、複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら行っています。
 しかし、がんの発症に関係する遺伝子の変化は数も多く、一方でその変化がもたらす影響について調べた医学論文も膨大な数あります。高度な専門性を持つ複数の医師がこれらを読み込んで、論文どうしの関連性なども考慮しながら、がんの原因にたどり着くには、うまくいっても数週間。結果的に正しい診断にたどり着けないこともあるのが実態です。
 東京大学医科学研究所の宮野悟教授は「がん研究論文は、毎年20万という数が投稿されていて、1人の医師がそれを読んで調べていくということは不可能な世界になっているのが現状だ」と指摘しています。
 これに対し、人工知能は、人間の使う言葉を理解できるよう、その能力は、飛躍的な向上を遂げており、2000万件という論文情報などを知識として蓄積しています。患者の遺伝子の変化の情報があれば、がんとの関連が指摘されている数多くの論文の中から関係するものを選び出してきます。さらに論文に書かれた内容を理解し、複数ある患者の遺伝子の変化が互いにどのように影響し合っているのか評価。そして、どの変化が病気を引き起こす根本となった重要なものかを突き止め、効果が期待できる抗がん剤などを提案するのです。
 宮野教授は「ワトソンが行っていることは、医師が診断で行う知的活動と同じだが、その規模が人間の能力を超えたところに広がっていて、人知を超えた医療の世界に変わっていくための技術と言える」と指摘しています。
■人工知能が切り開く医療の未来は?そしてその課題は
 これまで救えなかった数多くの命を救えるようになる。そんな期待を抱かせる人工知能ですが、医療の世界をどのように変えていこうとしているのでしょうか。
 山田教授によりますと、実は1980年代にも人工知能の医療現場での活躍が期待されたことがあったと言います。当時は「Aという症状が出たらBという病気」というように、パソコンに教え込む技術が主に使われていましたが、やはり病気の要因は複雑で、研究としては表舞台から姿を消してしまったということです。
 ところが、それから30年以上がたち、コンピューターは、人が話す自然言語を理解し始め、みずから推論・学習ができるようになりました。また必要な情報を取り出す検索技術の進歩、さらに医療に必要な遺伝子解析などの周辺技術も発展しました。
 山田教授は「医師と患者のやり取りを横で聞いて、人工知能がその場で助言するような、医師と人工知能が協調する時代は10年単位でなく、数年という近い将来にやってくる可能性がある」と話しています。
 そうした期待の一方で、課題もあります。
 人工知能の能力が今後さらに伸びていった場合、医療現場での患者の診断・治療はどこまで人工知能に任せるのか。医師との役割分担はどのようなものになるのか。そして、もし人工知能が誤診したらその場合の責任は誰が取るのか。さまざまな議論が今後出てくることも予想されます。
 すでに人工知能に患者の遺伝情報を入力した結果、調べようとしていなかった別の病気まで将来患者が発症するおそれがあるということがわかってしまった、ということも起きています。人工知能と共存していくために、私たち人間の側も、責任の所在に関するルール作りや倫理指針の策定など、医療現場、ひいては社会として受け入れていくための環境整備を進めていかなければいけない段階にさしかかっているように思います。
  科学文化部出口拓実 記者

 ◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です
.........


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。