貴乃花親方の引退会見 前編「告発状の事実無根認めず、一門に所属できなかったら廃業と言われた」2018.9.25

2018-09-25 | 相撲・野球・・・など

貴乃花親方の引退会見 全文【前編】「告発状の事実無根認めず、一門に所属できなかったら廃業と言われた」
福井しほ 2018.9.25 20:20 週刊朝日
 貴乃花親方(46=元横綱)が25日夕方、日本相撲協会に退職届を出した後、東京都港区の弁護士事務所内で会見を開き、「貴乃花光司は、年寄を引退するという届けを提出いたしました」と語った。
 冒頭に代理人弁護士が状況を説明した。
「本日午後1時、公益財団法人日本相撲協会に対し、年寄貴乃花の代理人として、年寄を引退する旨の引退届を提出し、併せて貴乃花部屋に所属する力士、床山、世話人全員の代理人として全員が千賀ノ浦部屋に所属先変更願を提出いたしましたことをご報告させていただきます。本日のご案内は退職届と記載しましたが、正式に提出した書類は引退届でございます。分かりやすい表現で退職届とさせていただきました。以上ご報告とさせていただきます」
 続いて貴乃花親方が引退に至る経緯を報告した。以下はその全文。
*  *  *
 私、貴乃花光司は本日、公益財団法人日本相撲協会に年寄を引退する旨の届けを提出いたしました。引退の理由は次の通りです。
 本年、3月9日、私は貴ノ岩への傷害事件に対する日本相撲協会の対応について、真実を隠さず追求したいという気持ちで内閣府公益認定等委員会に告発状を提出いたしました。その後、私の弟子の不行き届きもあり、3月28日付けで告発状を取り下げましたが、告発状の内容には何ら真実に反する点はありませんでした。
 その後、私は先般、受けました、降格処分を真摯に受け止め、ゼロからスタートさせていただき、部屋に所属する力士に対する指導、監督及び審判としての業務に粛々と従事してまいりました。
 しかし、本年8月7日、日本相撲協会より協会が依頼された外部の弁護士の見解を踏まえたとされる書面が届きました。その書面では<告発状は事実無根な理由に基づいてなされたもの>と結論付けられておりました。それに対して、私は書面で<告発状の内容は事実無根ではないこと>をご説明してまいりましたが、その後告発状の内容が事実無根な理由に基づいてなされたものであることを認めないと親方を廃業せざるを得ないという有形無形の要請を受け続けてまいりました。
 さらに今般、日本相撲協会理事会において、すべての親方は一門のいずれかに所属しなければならず、一門に所属しない親方は部屋を持つことができないという決定がなされたとのことですが、同時に私はいずれかの一門に入るための条件として、告発の内容は事実無根な理由に基づいてなされたものであると認めるようにとの要請を受け続けておりました。しかしながら、内閣府公益認定等委員会に提出した告発状は事実無根な理由に基づくものではございません。真実を曲げて告発は事実無根であると認めることは私にはできません。
 一方で、このままでは私はどの一門にも属することはできません。これでは貴乃花部屋に属する力士は相撲を続けることが困難になり、安心して鍛錬・精進することができません。
 このような状況において、断腸の思いではありますが、貴乃花部屋に所属しております力士、床山、及び世話人は全員継承者であり、千賀ノ浦部屋に所属先を変更させていただき、私貴乃花光司は年寄を引退させていただくことが最善の道であると苦渋の決断をするに至った次第です。
 皆様方におかれましては、私の弟子たちに変わらぬご厚情、ご声援をいただきますよう、師匠として最後のお願いを申し上げるものでございます。
*  *  *
 続いて記者との質疑応答があり、一問一答は以下の通り。
――告発状の話は真実であるが、協会からは事実無根とのことですが、有形無形の様々な指摘を受けたということですが、具体的に圧力ととらえていいのか。また、どのようなことを言われたのか。
 正式な通達の書類はございません。名前は控えさせていただきますが、役員の方から今場所の後半戦に入り、初めてそのような話を聞きました。先ほど述べた内容の通りです。
――場所中の後半に説明を受けたとのことですが、8月7日付けの協会の文書とは。
 直接言われたのは後半のことです。
――8月7日付けで文書があるのでしょうか。
 はい。その通りです。
――8月7日、夏巡業中で、ちょうど東京に戻られたタイミングですよね。文書にはどのようなことが書かれていたのでしょうか。
 告発状の内容は全て事実無根であるという内容でした。
――理事の方の名前は記名されていましたか。
 理事長名でした。事実無根であると結論付けられていました。
――もう少し詳しく教えてください。
(代理人弁護士)よって本件傷害事件への対応が日本相撲業界による事業の適正な運営の確保に重大な異議を生じさせるものであるとして、公益認定等委員会に対して協会の立ち入り検査を求めた貴乃花親方は事実無根の理由に基づいてなされたものであると考えるという結論でございます。
――郵送で届いたのでしょうか。
 巡業中だったので、巡業部長から手渡しされました。
――どういうリアクションでしたか。
 中を見て、確認しました。一門に属さなければ親方はできないということは周りから聞かされていました。本当なのかな、と。そこに事実無根であることを認定するということが後にくっついて出てきましたので。
――認めることと一門に所属することはできなかったら廃業という話はいつ頃聞かれたのでしょうか。
 今場所中の後半です。
――実際、しかるべき方の口から直接?
 はい。
――どなたですか。
 控えさせていただきます。
――8月7日に文書が渡され、口頭でお話されるまで1カ月くらいある。
 場所中に入りまして、相撲担当の各記者さんから質問を受けたり、取材されることが。親方間の交流で特定の親方からお電話いただいたりとか、そういう流れです。
――アドバイスなりがくると。
 心配してくださったりです。
――どのように返したのですか。
 正式な書類があるのでしょうか、と聞きました。
――今日の会見内容は協会のリアクションもあると思いますが、どのようなリアクションがあると思いますが。
 それは……。ただただ、私は今日引退届を出した身ですので、粛々と進めていきたいです……。
――横綱を引退した時「すがすがしい気持ち」とお話していましたが、今現在のお気持ちは。
 苦渋の決断ではありますが、何より弟子たちの将来を見据えて断腸の思いです。
――ご家族にはご相談しましたか。
 私自身で決断いたしました。報告は、私自身が決めたことは、そうともらっています。
――手塩にかけた弟子たちと別れるお気持ちはどういった心境ですか。
 無念と言いますか、悲しい思いですけども、弟子たちが土俵で活躍することが最優先するべきことだという思いです。
――弟子の反応は。
 力士間の噂話は出ているかと思いますが、今朝、全員で初めて向き合って話をしました。
――その時の様子は。
 涙する子たちも、ほとんどでしたが、ただ、側面からこれから弟子たちを見守るとしていきたいです。
――今後の相撲とのかかわり方は。
 土俵に育てられていますので、土俵には携わっていきたいという気持ちです。
――どういった形で。
 住まいでもある相撲部屋に土俵がありますので、できる限り土俵は存続のままでいきたいと思います。
――親方がどうしても譲れなかったことは。
 告発状の内容について事実無根であることを認めることができなかったことです。
――やめる以外の選択肢はなかったのでしょうか。
 相撲人生も15から始めて、まだ30年あまりですが、とにかくこういう状態の中で私の弟子たちが知らず知らずに委縮してケガをしてしまったりということは避けたいという思いで決断しました。
――まだ退職届は受理されていませんが、残る考えは。
 ございません。
――一番の理由はなんですか。
 相撲に携わっていきたいという気持ちはありますが、弟子たちが可愛いですので、これからも柔らかな気持ちで見守ってあげたいという思いがとても強くあります。
――7月の理事会で必ずどこかの一門に入るという取り決めがされた時、どのような受け止めをされましたか。
 今場所の後半に直接役員の親方から聞いたのが初めてでありました。それ以前は相撲担当の記者さんに聞かされたといったレベルでしたので、正式な通達があるのかなと思って審判に従事していたわけで、現在に至るという状態です。
――何らかの圧力であると感じられたりはしましたか。
 一門に入らなければいけないということが正式に決まっていたのであれば、一門の方の受け入れ先の承諾必要になりますが、そこは弟子と一緒に貴乃花部屋として存続できるという考え方がありました。しかし、それにまつわり告発状の内容を取り下げはしていますが、すべて事実無根であると認めろということ、これだけは認められません。
――実際どこかの一門に入ろうとはしていたんでしょうか。
 動いたと言いますか、もし入れるとしたならば、どこに入れるのかなというくらいしか考えておりませんで。
――相撲界を変えたいということで告発状を出された志半ばで辞めなければいけないという心境は。
 うちの弟子たちがこれから活躍してくれることを願って、それを正面から見て、喜びと素直な気持ちで感じたいなという思いがあります。
――協会を変えようとたった一人頑張ってきましたが、引退という形は戦いに負けた
 たくさんの味方があると思いますが、ただただ自分が育てた弟子が可愛いです。その子たちの栄光とその道をできるだけ作ってあげたい。これからは側面的にはなりますが、その道を作っていきたい。敗北であっても相撲に携わっていける道を念頭に置きたい。
――協会の中で戦う選択肢は。
 はい。追い込まれていたかもしれませんが、戦うということは、一遍、ゼロからスタートして弟子の育成に集中すると言っていましたし、戦う姿勢はございません。これ以上何か新しい道を見つけて、存続できる道を見つけたとしても、弟子たちが何らかの形で緊張やプレッシャーを受けてしまうことだけは避けたいです。
――弁護士の方を同席しての会見ですが、今後協会へアクションを起こしたりする予定は。
 現在はございません。
――今日この日をもって身を引くということのみの会見ということでしょうか。
 はい。
――告発状が事実であると改めて立証しようという気持ちは。
 特にございません。
――お弟子さんはどのように考えられているんでしょうか。
 皆、ほぼ全員が涙ながらに聞いておりました。納得したうえで本人たちの希望も聞きながら承諾を得た次第です。
――千賀ノ浦親方を受け入れることはご承諾しているのでしょうか。
 はい。
――今、改めて日本相撲協会に対して思うことは。
 若い力士、力ある力士が成長していく姿を作っていただきたいと。たくさん作っていただきたいと、そう願っています。
――残されていく弟子にどのような言葉をかけましたか。
 全ての指導の中で、もし師匠の私が今日明日、命を絶ったりすることがあっても、教えられていることは、そのまた弟子たちにつなげていくことが伝統であると。私が初代貴乃花の師匠から教えられたことですので、それだけは諦めずに伝えていくようにと。
――弟子たちに伝わったと思いますか。
 常々言ってきたことです。食事をしながらも稽古場でも言ってきたことなので、理解はしてくれていると思います。
――弟子たちからはどのような希望が上がりましたか。
 所属先、元々千賀ノ浦親方は貴乃花部屋に所属していた親方ですので、私と一緒に今いる弟子を育ててくれましたので、全員の要望で千賀ノ浦部屋に行きたいということでした。
――部屋に土俵を残すとおっしゃっていましたが、どのようにかかわりますか。
 今後、弟子ではなくなりますが、意思としては師匠と、お父さんと言うことになると思います。これは一生続くと思いますので、迷った時は私のところに来て、土俵の上で体の使い方、足腰の使い方を伝えていければなと思います。
――新たに部屋を作るなどの考えは。
 ございません。
――お弟子さんはいつから千賀ノ浦部屋に?
 今後協会の意向を含めて進めたいと思います。
――退職届が受理されなかった場合はどうしますか。
 引退届を出して、退職になったと思いますが、意思は変わりませんので、代理人を通じて伝えていきたいと思います。
――もったいないという思いがありますか。
 全然です。無念な気持ちはありますが、後悔と言うよりこの先弟子たちがすくすくと育って今まで以上に活躍してくれる地位を極めてほしいという心配が大きいですね。
――心配しながら相撲に関わると
 精神的に支えていきたいなと思います。相撲の技なり、心の持ちようなり、戦う姿勢なり、常日頃連絡を取りながらやっていきたいと。
――千賀ノ浦親方も承諾されているのでしょうか。
 はい。まだそこまでは、師匠になられていますけれど、私と一緒に部屋を長い期間やってきていますので、阿吽の呼吸で親方にもお願いして、いきたいなと思っています。
(構成/AERA dot.編集部.福井しほ) ※後編に続く

 ◎上記事は[dot.]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
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〈来栖の独白〉
>もし師匠の私が今日明日、命を絶ったりすることがあっても、
 潔癖、直情的な人格である故に、私の心に引っかかった言葉。
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貴乃花親方、日本相撲協会に退職届 年寄引退 2018.9.25
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